直木賞受賞作家・小池真理子の半自叙伝的同名小説を『三月のライオン』『ストロベリーショートケイクス』の矢崎仁司監督が成海璃子×池松壮亮×斎藤工で完全映画化し、韓国・全州(チョンジュ)で開催される第17回全州国際映画祭(4月28日から5月7日まで)とドイツ・フランクフルトで開催される第16回ニッポン・コネクション(5月24日から29日まで)への正式出品も発表された映画『無伴奏』が、4月23日(土)、監督の出身地であり、ロケ地の一つでもある山梨でも上映が開始され、主演の成海璃子と矢崎仁司監督が、舞台挨拶を行った。

「映画『神童』の中学1年の時の成海さんに恋をして、この少女がいつか大人の女性に変わるところに立ち会いたいなとずっと思っていた。中学1年の素晴らしい俳優が誕生したなと思っていて、いつかこの少女の制服を私が脱がすぞと思っていました。(笑)すごく幸せでした」という本作。「撮影後は、誰かと会う度に『辛かった〜』と泣いていたというインタビューを読んだのですが?」という質問に成海は、「毎日現場にいて、撮影が終わった後も響子の役をひきずっていましたし、急に終わったら、ぼーっとしちゃって、なんとも言えない気持ちでしたけれど、それだけ集中して作品に取り込めたというのは、よかったんじゃないかと思っています。」と答えた。

矢崎監督は、「1969年から1971年という時代設定があったが、仙台の街ではほとんどその面影がなく、風景を求めて、全国津々浦々で撮影した。それなのに集中力を高めていたのはすごいなと思う」と役者陣に賛辞を送り、成海は、「今どこにいるのかわからなくなりませんでした?」と司会に聞かれると、「そうですね。でもそんなことは重要ではなかったです」と女優魂を見せつけ、会場にいる観客は感銘を受けた様子だった。

山梨について、矢崎監督は「いい風景を残してくれている街だなと思っている」と話した。

バロック喫茶「無伴奏」の表のシーンは、本日舞台挨拶があった甲府のシアターセントラルBe館を出たところで撮ったという話も。

デモで怪我をして、実際に血を流すことになるとは思っていなく自分の甘さを痛感した響子が渉に恋をし、学生運動から離れることになる重要なシーンを撮った石和市の笛吹川での撮影について成海は、「私が演じた響子と渉が会話をして、そこから響子が変化し始めるというシーンなので、とても印象に残っています。」と話した。

矢崎監督は、学園闘争の時代についての映画を観ると、皆走っているけれど、当時の映像を見ると、実際は走っていなかったので、『安保、粉砕!沖縄、解放!』と言って前を通るデモ隊は走らず、逆に、渉と、学園闘争をやめた響子が連れ込み旅館に走る、としたが、そのシーンも甲府市のオリンピック通りで撮影された。

成海は、「響子の周りで色んなことが起きて、すごい経験をたくさんして、最終的に生きていくぞというストーリーなので、響子の成長を見届けてほしいです」と語り、矢崎監督は「1回目の鑑賞では、成海さんの美しさに圧倒されて頂き、2回目以降の鑑賞で、池松さんや斎藤さんの目線一つでまた違った印象を持つのではないかと思うので、何度も観て頂きたい」と語った。

なお、山梨での舞台挨拶に合わせ、甲府市の遊亀(ゆうき)公園付属動物園で撮影した、響子(成海璃子)と渉(池松壮亮)と勢津子(松本若菜)のシーンと、石和市の笛吹川で撮影をした、デモで怪我をして、実際に血を流すことになるとは思っていなく自分の甘さを痛感した響子が渉に恋をし、学生運動から離れることになる重要なシーンのスチールが解禁された。