1月23日(土)公開『サウルの息子』が、この度、ナチスによるユダヤ人大虐殺、ホロコーストを実際に体験された、ヤーノシュ・ツェグレディ氏をゲストに迎え、トークイベントを開催致しました。1月27日は、国連が定めた「ホロコースト記憶の国際デー」です。ナチス最大の絶滅収容所アウシュヴィッツが解放された日にあたります。

■日程:1/14(木) トーク:18:00〜18:20
■場所:早稲田大学 大隈タワー 多目的講義室(新宿区西早稲田1-6-1)
■ゲスト:ヤーノシュ・ツェグレディ氏 ホロコーストの生還者(ホロコーストサバイバー)

《ホロコーストサバイバーであるヤーノシュ・ツェグレディ氏 トークイベント》 ※敬称略
Q、幼少期のお話を聞かせてください。

ヤーノシュ: 私はハンガリーのブダペスト生まれで当時 7 歳でした。両親は収容所へ強制輸送されてしまいました。ホロコーストが行われている間、私は、ブダペストのゲットー(ユダヤ人が強制的に住まわされた居住地区)で過ごしました。ほんの数か月間の出来事でしたが、幼い私にとってはとても長い期間に感じられました。ホロコーストの時代を生きたことは、私の人生を根本から変えてしまいました。あの頃の迫害の経験ははっきりと記憶に刻まれています。両親は収容所に送られましたが、奇跡的に生還することができました。しかし、私の親戚の多くは収容所で虐殺されてしまいました。

Q、ホロコーストの辛い記憶とは、どのように向き合ってきましたか?

ヤーノシュ:ホロコーストの記憶について私は普段なるべく考えないように過ごしてきました。性格は前向きな方だと思いますが、私は常に未来を見据えて、過去の苦しみにとらわれてしまわないように常に幸せな事、良いことを考えるようにして過ごしてきました。

Q、『サウルの息子』をご覧になっていかがでしたか?

ヤーノシュ:この作品は‘ホロコーストの映画’というわけではありません。『サウルの息子』はホロコーストという長い期間の 2 日間だけの出来事を扱っているからです。例えばシェイクスピアのハムレットを理解しようとしたとき劇の中の一文だけを抜き出してハムレットを全て理解することが出来ないのと同じです。この映画自体はホロコーストの全体を伝えるもではないと思います。だからこそ、ご覧になった皆さんは、その 2 日間の極限状況に置かれた人間がどんなことを考え、どんな行動をするのかという普遍的なメッセージを感じるのではないかと思います。
私自身の経験は、ホロコーストを大きく捉えた時にそんなに重要な事ではありません。ホロコーストについては『ショア』というドキュメンタリー映画の存在やスティーヴン・スピルバーグ監督の設立した財団により多くの証言が記録されてきています。

Q、会場の学生の皆さんへメッセージをお願い致します。

私は人間は歴史から全く何も学んでないと思います。皆さん一人一人にぜひお願いしたいことは、全てを当然のこととしてそのまま受け止めるのではなく常に批判的に問いを立て、自分の中でそれが正しい事なのかどうか考えて下さい。‘キャッチフレーズ’や‘心地よい言葉’はまず疑うという心構えも持ってほしいと思います。