19世紀に起きた実際の海難事故と、そこから生還を果たした男たちの奇跡のドラマ。そしてその影に200年に渡って隠され続けてきた衝撃の真実を描きだす『白鯨との闘い』が1月16日(土)に全国で公開される。この度、本作の公開を記念して日本を代表するニュースキャスターで、日本人で本作を最も語れる男:辛坊治郎氏によるトークショーが行われた。映画と同じく、マッコウクジラによる体当たりで船を沈められ、大海を漂流した過去を持つ同氏は“今だからこそ語れる事実”と“映画で描かれるリアリティ”を力強い言葉で語った。

本作の試写会に訪れた観客は、サプライズで登場した辛坊氏の姿に大きく盛り上り、大歓迎ムードの会場に挨拶。「ここで誰も知らない話を一つ。」と前置きし、「実は私は2年半前に、船を沈めたんですよ。」と明かし、続けて「今日の映画をみなさんに見てもらえるのはうれしい。なぜなら、あの時私が味わった恐怖を皆さんにも同じように体験してもらえるからです。」と、自身の体験と照らし合わせたうえで本作の見所を語るにふさわしい貫録を見せつけた。

そして、話はいよいよ当時直面した[マッコウクジラによって船が座礁した]時の真実に移っていく。「夜中に熟睡していたら大きな音が聞こえて、続いて乗組員の“浸水!”の声が聞こえました。気が付けば床は水浸しで、排水ポンプをフル稼働しても水位が上がってくる。もう15分と船は持たないということがすぐにわかりました。」と当時の様子を振り返った。そして、「想像してみてください。自分がもしその場にいたら」と語りかける同氏は、「私はまだ宮城県沖1200キロでしたが、しかし周囲に陸はもちろん、船の姿もないんですよ。本当に恐ろしかった。映画はさらに絶望的な太平洋のど真ん中5000キロですからね。」と、自身が体験した恐怖を経験した当事者として、大海の恐ろしさと荘厳さを力強く語った。 

そして、今だからこそ明かせる当時のストーリーとして、「乗組員を見捨てれば、お前は助かるぞ、という悪魔の声がはっきりと聞こえたんですよ。正直、あの極限状態ではその通りだと思いました。」と記憶を語るが、「その後の人生を考えたら、全盲の彼を見捨てて生き残るより、二人で死んだほうがましだ、という損得勘定が働きまして、最後には二人で協力して何とか脱出することができたんです」とぎりぎりの状況を協力して乗りきったことを明らかにした。また、自衛隊に救助されたときのことを振り返り、「こうして自分が生きていられるのは、皆さんの税金で存続している自衛隊のおかげ。みなさんのおかげで“生かされている”ことを実感しました。」と感謝の気持ちも明らかにした。

本作で描かるような状況でありつつも、辛坊氏は現代のテクノロジーを駆使して無事生還することができた。しかし、映画の舞台は19世紀。通信機すら持たぬまま船を沈められた当時の乗組員たちの絶望が如何に大きなものであったか、辛坊氏は思いをはせる。「今日みなさんが見る映画は、まぎれもない実話です。GPSも通信手段もないあの時代、私よりもはるかに絶望的な状況にあって、船乗りたちはどんな決断を下したのか?ぜひとも映画館の迫力あるスクリーンで鑑賞してください。」と語った。

最後に、太平洋横断への“再挑戦”について尋ねられると、「マッコウクジラは怖い。でも前回、出向前に鯨ベーコンを食べたんですよ。」とマッコウクジラの怒りを買ったのではないかというエピソードを披露。「今回は一切鯨を絶っていますからね。恨みを買うことはありません。準備は万端ですよ」と強気に語り、張り詰めた会場を和ませていた。

1819年に出港した捕鯨船“エセックス号”の乗組員達は、太平洋のど真ん中で体長30メートルの巨大な鯨と遭遇し、船を沈められてしまう。家族のために必ず帰ると誓った船乗り達が、絶望の漂流生活の中で下す、生き延びるための究極の決断とは? その答えを是非劇場で目撃して欲しい。『白鯨との闘い』は、2016年、1月16日(土)より全国ロードショー。