MC:竹内さんが演じられた「私」は淡々とした役どころだとお見受けしました。

竹内さん:「私」はホラー小説家でありながら、霊的な現象を信じていないので、ものすごいリアリストなんですね。
そこで橋本さん演じる「久保さん」から起きた物事に対して教えられ、調査していくんですが、恐怖するよりもネタを見つけた、ような感覚で淡々と聞いてるんで、ものすごく冷静なんですね。
私自身はすごく怖がりなんですよ。ゾンビのようなスプラッタ、おなかがパカッと開いたりとかは大丈夫なんですけど(笑)。
じわじわくる日本人ならではという怖い話はからっきしダメで、台本読むのに一か月かかりました。怖くて。
中村監督からオファーがあると聞きまして、お受けしまして、その後で「こういうお話です」と言われて、順番間違えたな、と思いました(笑)。だけどお受けした以上読まなきゃ、ということで台本を読んだんです。
監督にもお待ちいただきながら(笑)

中村監督:橋本愛ちゃんの役のことを男の子だと思ってたよね。

竹内さん:弁解させてください!はじめは読んだんですけれど、自分の絡んであるところだけチラッと読んで…(笑)。
だから「久保さん」というキャラクターは男性の相棒だと思っていました(笑)。なので「橋本さんはどこに出るんだろうなぁ」と(笑)

MC:「久保さん」を演じられた橋本さんは、怖い思いをする当事者なんですが、強い人ですよね。

橋本さん:そうですね。そういう物事への好奇心が強い人なので、そういった意味ではタフに映ると思います。
だけど、まずは好きだからのめりこむ、タイプの人だと思います。

MC:橋本さんご自身は怖い、ということは大丈夫ですか?

橋本さん:そうですね。私はリアルに根付いていないと娯楽として楽しめないので、大丈夫です。
ただ自分の半径5メートル以内で起こる怖いことはダメですね。

MC:そうなんですね(笑)。監督はそんなお二人と一緒に仕事をされて、どんな女優さんという風に映りましたでしょうか?

中村監督:こういうイベントだといつも笑顔で「可愛い!」という感じを皆さん受けられると思います。
ただ本作はミステリーなので現場でシリアスな状況にもなるんですが、そこをモニターで見ているのは、本当に幸せでしたよ(笑)。はじめは二人が手紙でやり取りする場面なので、一週間くらいはお二人が別々で、会わずに撮影が進んだんですね。ただそれぞれがあまりに綺麗なので、二人がそろったらどうなっちゃうんだろう、って思いましたね。ツーショットのシーンなんかは男性スタッフみんなでモニターの前に集まって、みんなでため息をついていましたね。その辺の美しさも見ていただきたいですね。

MC:竹内さんは監督から初めにお話をいただいたとき、どんな感じだったか覚えてらっしゃいますか?

竹内さん:作品に関して初めに言われたことは「いい加減読みましょうよ、仕事なんだから…」という台本に関してのことなんですが(笑)、
実際に撮影が始まるときに「とにかくテンション低く淡々とやってください」と演出の指示をいただきました。
私はいつも現場が楽しい監督だと思いました。何作か出させてもらっているので、中村義洋監督の現場にいるのが楽しいと感じています。
また呼んでほしいな、と思っています(笑)。また次の作品5月に『殿!利息でござる』に出させてもらってはいるんですけどね。

MC:橋本さんは中村監督とご一緒されていかがでしたでしょうか。

橋本さん:こういう作風だからなのかもしれないですが、やはり先ほどもおっしゃっていた「間」への指示がすごかったですね。
振り返るという動作にしてみても「ビックリマークを5つくらいの間で」と仰ってくださいまして(笑)。
一度やってみたら「あと2つつけて」とさらに仰っていただきました。細かな演出が端的で非常にわかりやすく、演じやすかったです。

MC:竹内さんと橋本さんは現場でお話されましたか?

竹内さん:愛ちゃんと初めてお会いした時は、近寄りがたい雰囲気の人なのかなと思っていたのですが、違いましたね。
いい意味でのクールビューティで、きちんと温かい人で。つついてみるとどんどん面白いお話が出てくるという意味では今後、楽しみで気になる女優さんだなと思います。一緒にいて無理しなくていいな、という印象があります。
(作中で)仲よしの設定だったりすると、無理をして仲良く、言葉を交わして何かを得ようとするんですけれど、そういうことをしなくても普通に現場にいられたような気がします。

橋本さん:竹内さんは自然体なまま現場にいらっしゃるので、監督の隣でモニターを見て何かお二人でお話されている、という光景を何度も見ました。そういう光景って、私の中では珍しく感じたので、竹内さんのこういうところが現場の雰囲気に大きく影響していて、そのおかげで私も肩の力を抜いたまま過ごすことができました。

MC:共演者の方も、佐々木蔵之介さんや滝藤賢一さんという、普段は個性豊かな方々がいらっしゃいましたよね。
滝藤さんとはご夫妻役でしたよね。

竹内さん:そうですね。今までは(滝藤さんと)共演したのは3作なのですが、距離感のある役柄だったんです。
それがようやく夫婦までたどり着いたな、と。滝藤さんも佐々木蔵之介さんも、にやりとするだけですごくあやしい雰囲気を出せるのがうらやましかったです。

MC:今回は本当に豪華なキャストで、監督の思い通りのキャスティングになりましたね。

中村監督:そうですね。蔵之介さんも滝藤さんも、坂口健太郎君も、気持ち悪いですよ(笑)

MC:どういう意味ですか(笑)

中村監督:わかるよね?結構気持ち悪いですよ(笑)

橋本さん:ちょっとずつ違和感があってダダ漏れしてるんですよ皆さん(笑)

中村監督:坂口君がやった役は、九州の心霊現象ならなんでも知ってるという役なんですね。
そうするともっとおじさんをキャスティングしようと思ったのですが、ハマる人がなかなかいないんです。
「心霊現象を何でも知ってる!」という説得力がある20代後半の役者なんて。
坂口君か…森山未來さんくらいですね(笑)。
そういう得体のしれないものを感じる部分、魅力があるのが坂口君ですね。

MC:ありがとうございます。みなさんから「ここに注目してほしい!」という部分ありますでしょうか。

竹内さん:私は一度目の試写の時怖くて途中から見れませんでした。目を瞑って音だけで過ごしていました。
そしたら監督が『時計仕掛けのオレンジ』みたいに目を無理やり開けてみせるぞ、と仰ったのでもう一度見たんですが(笑)。
注目すべき点は、個々の登場人物が交わす何気ない会話の一言を後々まで覚えておくと、後半の怒涛の展開がより深く楽しめる、という伏線の張られたつくりになっている、という点ですね。

橋本さん:普通の人間ドラマだけでは成立しない違和感や、いびつな雰囲気ががずっと続くんですね。
私と竹内さんが出会って取材してから出会う人、みんな気持ち悪いんですよ(笑)

竹内さん:演じた役が”人としてバランスを欠いている、ということだよね!(笑)

橋本さん:そうです(笑)。いい意味でバランスを欠いていて、普通の人間ドラマだと省いてしまうような「違和感」を、成立させてしまっているというあたりがこの作品の魅力だと思います。

MC:ありがとうございました。皆様に一言ずつ最後にお願いいたします。

中村監督:試写でみた人の感想ですと「2、3日は引きずる」怖さらしいんですね(笑)。
ですので、2、3日をこえて「自分が安全なところに住んでいるんだな」と安心感を持ってもらえればいいかな、と思います。
とにかく、怖がるのを楽しみに見ていただけたら、と思います。

橋本さん:私が見た感想ですが、ホラーでもあるんですが、ミステリー要素が濃厚で、人間の狂気だとかも描かれていて、ある種の人間性の悲劇なのかもしれない、と思うのです。そういう意味で、ホラーが苦手な方も、人間ドラマとして楽しんでいただけると思いますので是非、来てください。

竹内さん:監督も仰っていたと思うのですが、怖さを楽しんで「いやぁ怖かったね」とお友達と話していただくという楽しみ方も、ホラーが得意な人はありだと思います。愛ちゃんが言ったみたいに人間ドラマとして、ドキュメンタリとして物語を追っていただくこともできます。怖いのが苦手だという人も、私は二回目の試写では泣きましたので。こんなに泣ける話なんだ、と思いまして。本当に泣ける怖さです(笑)。見終えてすぐに「怖かった」と言うよりも、一晩おいて、家の中の話なので、家の中で本当の恐怖を味わってもらってから、つぶやいてやってください(笑)。そして一人で見るのが怖いという人は、「一人で見るのが怖いの」ということで誘う口実にしていただけたら、と思います(笑)。ある種のデートムービーとしてお勧めします!