映画『ディーン、君がいた瞬間(とき)』BL視点の辛酸なめ子、写真家視点のシトウレイ 独自の視点で映画分析!映画公開記念トークショー
この度、24歳でこの世を去った20世紀最大のスター、ジェームズ・ディーンと、「LIFE誌」の天才写真家デニス・ストックとの知られざる旅路を描いた、『ディーン、君がいた瞬間(とき)』が、12月19日(土)よりシネスイッチ銀座他全国順次公開いたします。
この度、本作の公開を記念して、主演俳優のデイン・デハーンが大好きで『GINZA』にも映画コラム連載をもつコラムニストの辛酸なめ子さん、ファッションフォトグラファーとして人気のシトウレイ さん、 本作のアントン・コービン監督の熱烈なファンである、 元『CUT』副編集長であるライター門間雄介さんをお迎えして、 本作の魅力について存分に語っていただきました!
『ディーン、君がいた瞬間(とき)』公開記念トークショーイベント
◆日程:12月14日(月)
◆ゲスト: 辛酸なめ子、シトウレイ
◆場所:本屋B&B(東京都世田谷区北沢2-12-4第2マツヤビル2F)
本作の公開を記念して行われた本イベント。辛酸さん、シトウさん登壇前には
ライターの門間さんが本作の監督であるアントン・コービンについて
写真家として、ミュージックディレクターとして、そして映画監督としての切り口で解説。
音楽になんとかして関わる仕事がしたいと写真家を目指したというアントン。
U2をはじめ、ニルヴァーナなど世界的に有名なアーティストたちに支持されたアントンについて
「被写体にクローズアップしたギミックのない写真で、その人の本質を撮ろうとする写真家。
アントンの同世代の写真家の中では鮮烈な存在だった」と解説。
81年にMTVが開局してからミュージックビデオが盛んになった頃、
映像の世界にも足を踏み入れたアントンは、ひとつのジャンルを確立し、
大きな功績を残したといいます。
同世代として、スパイク・ジョーンズ、ミシェル・ゴンドリーなどがいるといい、
スパイクやミシェルはポップな要素の多い作品が多い中、
アントンは渋く、シンプルな作品を撮り続けたことをあげ、
「アントンは一環してこういうのしか撮りたくなかったという思いを感じた」と
当時に感じた印象を振り返りました。
『コントロール』(07)で、映画監督としての名を一気に広めたアントン。
「他作品に比べ、『コントロール』はクオリティとして抜けていたと思ったけど、
本作は彼の良さがすごく詰まっている作品だと思う。」と評す門間さん。
その理由として、アントン自身が写真家であることをあげ、「本作で描かれる
写真家として名をはせようとするデニス・ストックの姿や、人と人が触れ合い
化学反応のようなものが起こるといった、人と人との関係性においての本質的な部分が
彼のキャリアで培ったものとして存分に出ていると思う」と解説、絶賛しました。
門間さんの作品解説後は、辛酸さんとシトウさんが登場。
映画について、辛酸さんは「2人の友情が恋愛ともつかない関係性に目が離せませんでした。」
とまさかのBL目線で作品を観てしまったことを激白。
その理由として「一緒に旅にでるあたりが恋愛っぽい。はじめ二人が出会った頃、
ディーンから”試写をみにきて”とか”俺のバイクの後ろにのらないか”とか誘うんですけど
完全にナンパですよね、あれは。」と指摘。
一方のシトウさんは写真家としての視点で作品を観たといい、
「私はストリートスナップを撮っているので、出会いから別れまであっさりしているけど、
2週間という時間を被写体とみっちり過ごしたことはないので、そういったところにも面白さを感じました。」と
写真家としてならではの感想を述べました。
ジェームズ・ディーンについては「自分の話をするだけして、相手の話はあまり聞かない。
急に太鼓を叩き出したり、インタビュー中にヨーヨーをしたりとかなり自由できまぐれな方ですよね。」(辛酸さん)
「ふにゃふにゃとした捕らえどころの無いしゃべり方をする方ですよね」(シトウさん)とそれぞれ冷静に分析するも
すかさず門間さんが「あの時代はマーロン・ブラントのようなマッチョイズムな俳優が多い中で、
映画の中で涙を流すなど、男性の弱さを体現した第一人者だったんですよ!」とすかさずフォローすると、
ディーンの役者としての凄さについて納得した様子をみせました。
主演のデイン・デハーンについては、「独特なアンニュイさがありますよね。顔のほとんどがクマでできているようですし・・・
彼のSNSを覗いたら”日曜にスウェットパンツでいられて嬉しい””ハンバーガーを食べ続けたい”といったスターらしからぬ
ゆるい発言ばかりで、そういったところが母性本能をくすぐるのかもしれませんね。」(辛酸さん)
「ベットシーンがあるんですけど、引きずりこまれるような魅力がある。鋼のカラダを持っていなければ
こばめないと思いました・・・」(シトウさん)とそれぞれが感じた魅力を吐露。
また役作りにおいて、体重を10キロ以上増やすなど外見もディーンに似せるべく努力したデハーンを称えた、
「高橋ジョージ並みのポマード具合がよかった」(辛酸さん)「昔の北野武のような50年代ファッションが今っぽくて
メンズファッションとしていい」(シトウさん)と各自の注目ポイントもあげました。
ディーンとストックの関係性について、男性2人で旅行に行くことはあるのか?という辛酸さんからの質問に対し、
男二2人でディズニーランドへいったことがあると明かす門間さん。その発言に場内がざわつくも、
辛酸さんは「吉祥寺にいくとイケメン2人が歩いているのをよくみますよ」とフォローにならないフォローをし、
門間さんをうろたえさせました。
デニス・ストックについてはシトウさんが分析。「ストックは構図を決めて撮るものより、自分が予期していないとき、
何気ない瞬間を捉える写真の方がよかった。ドキュメンタリーな写真を撮り続けてキャリアとしても成功していますよね。
写真家としての方向性を決めかねていたけど、ディーンとの出会いによってその方向がさだまった。
そういうことに気づくのは、時間の長さではなく時間の濃さなんでしょうね。」
その後も、辛酸さんとシトウさんの疑問、質問に対し、門間さんが解説するなど、
ジェームズ・ディーンやデニス・ストック、アントン・コービンについて大いに語り合った3人。
最後に本作について「男性の友情における仕事との関係性だとか、男性と女性の友情の違いもみてとれて
考えさせられる部分がありました。」(辛酸さん)「ストックがディーンとの関係を深めていく内に、疎遠だった
自分の息子との関係も徐々にに近づけさせていったように、人と人が関わることで人は成長するし、
変われるのかなと感じました」(シトウさん)という2人の発言から「人と人との距離感というところにお2人は
ご覧になったのかもれませんね」とまとめた門間さん。
バラエティーに富んだトーク内容に、観客は満足した様子でイベントは終了しました。
以上。