映画祭11日目の23日(土)、本日もまた快晴なり。 “コンペティション”部門の正式上映も今日が最終日となり、オーストラリアのジャスティン・カーゼル監督による『マクベス』が掉尾を飾った。また、最終日を明日に控えた今日、国際批評家連盟賞が発表された。

◆豪州の気鋭監督ジャスティン・カーゼルはシェイクスピアの名作戯曲を映画化した『マクベス』で初参戦!

 1974年生まれのジャスティン・カーゼル監督は、2011年の長編デビュー作『スノータウン』を“批評家週間”に出品し、注目されたオーストラリアの新鋭監督で、本作『マクベス』は2作目の長編だ。
 過去に何度も映画化されてきた名作戯曲が原作だが、本作ではマクベス夫妻にマイケル・ファズビンダーとマリオン・コティヤールを起用。スコットランドの寒々しい荒涼とした大地を舞台に、シェイクスピアの原作に忠実な世界を展開させた骨太作で、リアルな戦闘シーンが圧巻だ。共演はデイヴィッド・シューリス、エリザベス・デビッキ、ジャック・レイナーら。

 朝の8時30分からの上映に続き、11時から行われた『マクベス』の公式記者会見には監督のジャスティン・カーゼル、プロデューサー、主演したマイケル・ファズビンダーとマリオン・コティヤールが出席した。
 撮影で一番大変だったことを問われたジャスティン・カーゼル監督は、「スコットランドの冬の撮影がとても厳しかったね。でも、ダンスシーンは上手くいったのでとても好きだよ」とコメント。これに対してマイケル・ファズビンダーは、「素手で剣を握らなきゃいけない戦闘シーンが大変だった。とてもダメージが大きいからね。なので、できるだけトレーニングを積み重ね、準備に時間をかけたよ」と、マリオン・コティヤールは、「母国語ではなく“英語”でシェイクスピア劇に挑戦したことよ」と返答した。
 また、鬼気迫る演技でタイトルロールを演じきり、その人物像をPTSDを患っている人物として創作したというマイケル・ファズビンダーは、「PTSDの件は、ジャスティンが最初の話し合いの際に僕に示したアイディアなんだが、それで全ての方向が決まった。僕たちはイラクやアフガニスタンからの帰還兵たちがPTSDを患い、幻覚を見ることを知っている。だからこそマクベスが幻覚を見るキャラクターであることもとてもよく理解できたんだ」と述べ、さらには「『マクベス』は“野心”についての物語だとされているよね。確かにそうだけど、僕は“喪失”の物語でもあると思うんだ。夫婦が関係を失い、子供を失い、正気を失っていくわけだからね」と彼自身の解釈も明かした。

◆上映作品も減り、もはやマルシェ(見本市)関係者がごっそりと去って、街中は実にのんびりムード!

 コンペティション部門の授賞式を明日に控え、プレスの間でも賞レースの行方が盛んに取りざたされている。映画祭期間中は毎年、日刊で映画祭の模様を伝える情報誌が幾つか発行される(英語の“スクリーン”誌とフランス語の“ル・フィルム・フランセ”誌が双璧)のだが、どれも最終ページに長編コンペティション部門作品の星取り評価表(前述の両誌の評価は案外異なる)を掲載している。ジャーナリストたちも参考にしているのだが、賞の行方は審査員のメンツ次第。この星取り評価表が受賞に反映されないことが多いのが実情だ。それに、どの情報誌も会期途中で発行を終えるので、映画祭終盤が正式上映日となる出品作についての星取りはされていない。

◆パレ・デ・フェスティバル内にあるサロン“アンバサダー”で国際批評家連盟賞が発表!

 17時より国際批評家連盟賞が“アンバサダー”で発表され、授賞作の関係者(コンペティション部門とある視点部門は監督自身が出席、監督&批評家週間部門は代理人が出席)が授賞の喜びを語った。受賞作は以下の通り。

☆国際批評家連盟賞(FIPRESCI)受賞結果
●コンペティション部門:『サン・オブ・サウル』ラズロ・ネメス監督(ハンガリー)
●ある視点部門:『フライ・アウェイ・ソロ』ニーラジ・ガイワン監督(インド)
●監督&批評家週間部門:批評家週間上映作『ポーライナ』サンティアゴ・ミトレ監督(アルゼンチン)

(記事構成:Y. KIKKA)