世界初の人間とアンドロイドが共演する映画として話題の『さようなら』(11月21日公開)。

本作は原因不明の原子力発電所の爆発により、日本で難民となった南アフリカ人女性が主人公であり、移民・難民問題を中心とした社会問題が描かれています。そして本作のテーマに絡めて、昨日、認定NPO法人難民支援協会とコラボ試写会&シンポジウムを実施致しました。

いよいよ今週土曜日公開する映画『さようなら』。深田晃司監督、主演のブライアリー・ロングさんと特別ゲストの認定NPO法人難民支援協会・田中志穂さんがシンポジウム付き試写会に登壇し、現代の日本が抱える移民・難民問題について熱い議論が交わされました。

本作で社会問題の要素を盛り込んだ理由について深田監督は、「この映画の原作は平田オリザさんの戯曲なのですが、もともと戯曲の方には原発や難民問題の要素はありませんでした。ただ荒廃した近未来の日本を舞台にしたいと思ったとき、装置として原発の事故という設定にしました。そして、震災の時に「絆」や「頑張ろう日本」という言葉が、国内多くで叫ばれ、同じ被害に合っている日本在住の外国人が完全に無視されている状況に違和感を覚えたのも、外国人難民を本作の主人公にした理由のひとつです。」 主演のブライアリー・ロングさんは「親の仕事の関係で幼少期より何カ国かに移り住んで生活してきたのですが、2010年より日本に住み、翌年に震災も経験しました。しかし、普段日本で生活をしていて、まだ社会の一部になりきれていないと感じることもあります。そういう状況の中、外国人でありながら日本映画の主役を演じることができて大変光栄に思います。」「以前、ベトナムからボスニアに移り住んだことがあるのですが、その時はとても楽な気持ちになりました。アジア圏では白人で金髪の女性は良くも悪くも特別な目で見られることが多いです。」と日本で女優として活動していての心境を語られました。そして、特別ゲストとして登壇した田中さんは「現状、日本には年間5000人の外国人難民認定の申請があるなか、その0.2%に当たる11人しか政府より認定がおりていません。これは、諸外国と比較してもかなり低い数字です。そして、申請の結果が出るまで3年の時間を要し、下りるケースの場合は5年はかかることが大半です。これら現状の要因の一つとして、入国管理局の審査の厳しさが考えられますが、加えて日本社会特有の、盲目的にリスクをゼロにしようという考えも大きく影響していると思います。ヨーロッパでは、ただ難民を排除するのではなく、リスクに対処し乗り越え、その先どうするべきかが話し合われています。」「フランスでのテロ事件を受けても、日本ではさらに難民を排除する方向に議論が進むのではないかと思います。」と日本の難民問題の驚きの現状とヨーロッパとの難民問題への向き合い方の違いを解説し、客席からは驚きの声が漏れてきました。国内の現状を聞き、深田監督は「生きるということは、多かれ少なかれ誰かに迷惑をかけることであり、リスクが伴うことでもあると思います。リスクを乗り越えた先に何があるのか、という議論が日本国内でも、もっと活発になることが重要であると思います。」「ヘイトスピーチや、SNSで出回ったシリア難民を風刺したイラストなど、それぞれの想像力が完全に欠如していると感じます。映画同様、誰もが難民になる可能性を含んでいると思います。ひとりひとりが他者の苦しみを、想像することが重要であると思います。」と社会問題への独自の見解を披露しました。

最後に監督より「原発や難民問題でも、死についてでも、この映画を観ている2時間が、皆さんが何かを考える時間になって頂けたら嬉しいです。」と挨拶があり、大きな拍手の中3人は会場を後にしました。イベント終了後もQAセッションで質問ができなかった多くのマスコミや観客が3人に列を作り、質問や意見を投げかけられ、熱い議論が交わされました。