● 日程:10月23日(金)
● 場所:TOHOシネマズ六本木ヒルズ(スクリーン9)
● 登壇者:辰吉𠀋一郎(45)、阪本順治監督(57)

Q.いつものリングでなく、映画祭の舞台に立たれた今のお気持ちは?
辰吉:僕は俳優でもなんでもないんで、ボクサーなので、ドギマギします。
阪本監督:ボクサーのドキュメンタリーにも関わらず、試合映像はほとんど出てこないのですが、彼の発言の重みを大事にすると、逆にそうした動的なものは必要ないと思って入れませんでした。彼の発言、彼の20年間の顔の変化をこの映画の魅力として観て欲しいです。辰吉君がこの映画を観た直後の感想は「俺が終わってないのに、なんで映画が先に終わるんや」でした(笑)

Q:映画を撮り続けた20年を振り返ってみて、いかがでしたか?
辰吉:よく撮ったな、と思いましたね。感心します。
阪本監督:95年のラスベガスから撮り始めて、(彼が)引退したら発表しようと。失礼ですけど、その時点では4〜5年後に作品として仕上げようと思っていたのですが、何でか引退されないので(笑)ずーっと撮り続けて、20年という区切りと次男の寿以輝くんがプロデビューするのをひとつのきっかけに、膨大なフィルムを一度まとめようと。辰吉くんからは『ジョーのあさって』はいつ撮るのかと言われています。

Q:今回の撮影を通して感じたこと。映画として完成した思いは?
監督:『BOXER JOE』(1995)の撮影より前に、辰吉君とは、彼が19歳でプロデビュー、僕が監督デビューした年が同じなんです。彼と対面すると、すごくクレバーで、科学的に物事をとらえて、知的な例えを交えて話す。彼にとても興味をもって、彼の頭の中をのぞいてみたいと思いました。
辰吉君は、基本的に変わらない。20年の撮影の中で、似た質問をしても、その時までに蓄積された言葉が出てくる面白さがある。そして、一貫したボクシングに対する美学は変わらない。でも、その裏で、彼なりの葛藤があり、嘆きがあるはずで、それはその時にしか撮れないものだと思う。この映画は、ひとりの男の引き際ということで1本にまとめました。引退のことについてしつこく聞いています。リングを降りる時はどういう時なのかを質問したものを中心にまとめています。撮影中は、ドキュメンタリーを作る意識よりは、辰吉君にカメラをあまり意識させないように配慮して、本音を引き出そうとしましたね。

Q.監督からの質問で嫌なものはありましたか?また、20年でふたりの関係性は変わった?
辰吉:(質問が嫌なことは)別にない。(関係性は)良い関係ですよ。
監督:辰吉君の前では素の自分に戻れる、という気がします。彼には「さかピー」もしくは「ピー」だけで呼ばれる仲ですからね(笑)。

Q:この映画をどんな人に観て欲しいですか?
辰吉:僕の父ちゃんかな。父ちゃんと、僕の女房のお父ちゃんに観せてあげたいね。二人の感想を聞きたい。

Q.最後に一言
辰吉:なにを喋っていいか分かりませんから、とりあえず、ありがとうございました。
監督:ぜひ皆さんも、時々、自分の心境を習字で例えてみてください(笑)。
(※習字の例えは劇中で辰吉氏が語るエピソードの一つです)