第68回カンヌ国際映画祭が、現地時間の5月13日(水)、風光明媚な南仏の高級リゾート地で開幕した。映画祭初日の今日は、雨の心配をしなくてすむ天気ながら、空の青さが薄く、景観撮影には少々不向きな空模様だ。

◆今年のオープニング作品は、フランスの女性監督エマニュエル・ベルコ監督による『スタンディング・トール』!

 『スタンディング・トール』は、ジャンキーの母親(サラ・フォレスティエ)にネグレストされ、情緒不安定で自分を制御できない超問題児に成長した少年マローン(ロッド・パラッド)の姿と、彼を何とか更生に導こうとする少年裁判所判事(カトリーヌ・ドヌーヴ)や保護観察官(ブノワ・マジメル)、そしてケースワーカーたちの奮闘を描いた硬派な社会派ドラマで、フランス語の原題は「頭を上げて」という意味である。

 フランスの人気男優ランベール・ウィルソンが司会を務める映画祭のオープニング・セレモニーは宵の19時からのスタートで、『スタンディング・トール』は、そのセレモニー後の19時45分と23時30分からの2回、正式上映(ドレスコードのあるソワレ上映)が行われるのだが、我ら報道陣はその上映に先立ち、午前中からの始動せねばならない。まずは朝の10時から上映された本作のプレス向け試写を鑑賞後、12時30分から行われた公式記者会見に参加した。
 登壇者はエマニュエル・ベルコ監督、共同脚本家のマルシア・ロマーノ、俳優陣のカトリーヌ・ドヌーヴ、サラ・フォレスティエ、ブノワ・マジメル、ロッド・パラッド(新人俳優ながら、卓越した演技を披露!)と2名のプロデューサー。

 脚本家であり、実力派女優としても知られるエマニュエル・ベルコ監督(今年のコンペ出品作『モン・ロワ』の主演女優!)は、ドライかつリアルな描写について、ドキュメンタリー風に撮影はしたが、あくまでもフィクションであると強調。なぜコンペ部門ではなくオープニング作品になったのかという質問に対しては「それは映画祭ディレクターのティエリー(・フレモー)に聞いてちょうだい」とかわした。
 また、映画祭初日に合わせて発売された“シャルリー・エブド”誌の表紙にカトリーヌ・ドヌーヴが風刺漫画化されて掲載されたことについて問われたドヌーヴは「まだその号は見ていないけど、笑える画だといいわね」と即答し、会場の笑いを誘った。

◆長編コンペティション部門の審査員はアメリカの兄弟監督、イーサン・コーエン&ジョエル・コーエン(共同審査委員長)ら、総勢9名!

 映画祭初日は、オープニング上映作『スタンディング・トール』の公式記者会見に続いて、14時30分から、映画祭の華である“長編コンペティション”部門の審査員全員が登壇する審査員会見に出席! 
 今年の審査委員長には数々のカンヌ受賞歴(1991年の『バートン・フィンク』で最高賞のパルムドール&監督賞、1996年の『ファーゴ』と2001年の『バーバー』で監督賞、2013年の『インサイド・ルウェイン・デイヴィス』でグランプリ)を誇るイーサン・コーエン&ジョエル・コーエンが就任。残る審査員メンバーの顔ぶれは、メキシコの監督ギレルモ・デル・トロ、カナダの俳優&映画監督グザヴィエ・ドラン、アメリカの俳優ジェイク・ギレンホール、イギリスの女優シエナ・ミラー、フランスの女優ソフィー・マルソー、 スペインの女優ロッシ・デ・パルマ、マリの歌手ロキア・トラオレ。

 その審査員会見上では、「ここカンヌに来れて、やっとゆっくり映画を見る時間を取ることができます!」とコーエン兄弟が語った後、残る7人のメンバーも審査に対するそれぞれの心構えを神妙に述べている。
 また、スウェーデン人記者が今年の映画祭のアイコンとなったイングリッド・バーグマンについてのコメントを審査員各人に求めた際、一番ふるっていたのは、「僕の父親の家系はスウェーデン人だから、彼女と遠い親戚だったらいいなって思うね。母親の家系は違うけど、母の方がバーグマンの大ファンなんだ。ポスターをチャンと貰ってきてね、と頼まれたよ」と返したジェイク・ギレンホールのコメントだった。
(記事構成:Y. KIKKA)