本日は、第68回カンヌ国際映画祭の開催を明日に控えた5月12日の火曜日(現地時間)。世界中から集う報道陣の多くが映画祭前日にカンヌ入りするのに倣い、今年も時間を有効に使える11日夜の羽田便で日本を発ち、ニース空港に12日の朝(8:45am)に到着する便を選択し、映画祭のメイン会場近くにキープした宿にタクシーで向かう。
 宿に到着後、何はともあれPCの環境を整え、荷ほどきもソコソコに映画祭のメイン会場パレ・デ・フェスティバルへ。公式プログラムを始めとする諸々の映画祭資料一式とIDバッジ(カテゴリー別にランク付けされ、コレがないと何処にも出入りできない)を受け取り、万全の態勢で取材に臨むためなのだが、地階にある受取所は午前中から大混雑だ。それに、1月のシャルリー・エブド事件の余波によりセキュリティも一層厳しくなっているみたいだ。

◆今年の映画祭公式ポスターの図柄は、スウェーデン出身の大女優イングリッド・バーグマン!

 毎年、注目されるカンヌ映画祭の公式ポスターの洗練された図柄だが、今年は5カ国語を操って国際的に活躍し、米アカデミー賞を3度受賞(1945年の『ガス燈』と1957の『追想』で主演女優賞、1975年の『オリエント急行殺人事件』で助演女優賞を獲得)した名女優イングリッド・バーグマン(1915年8月29日〜1982年8月29日)のバストアップ姿を捉えたスタイリッシュなモノクロ写真が起用されている。
 嬉しいことに、今年は映画祭の公式プログラムの表紙にポスター写真のカットを使用する恒例が復活し、評判も上々である(昨年の公式プログラムは、映画祭の顔だったマルチェロ・マストロヤンニの写真を使用しない単色の表紙で評判が芳しくなかった)。
 なお、イングリッド・バーグマンの生誕100周年にあたる今年は、彼女にオマージュを捧げたスウェーデンのドキュメンタリー映画「イングリッド・バーグマン、イン・ハー・オウン・ワールド」が“カンヌ・クラシック”部門で19日の夜に上映される予定で、さらには今回の“ある視点部門”の審査委員長にイングリッド・バーグマンとイタリアの巨匠監督ロベルト・ロッセリーニの間に生まれ、女優として活躍する愛娘イザベラ・ロッセリーニが就任したことも大きな話題となっている。

◆今年の長編コンペティション部門の出品数は19本、コンペ初参加のフレッシュな顔ぶれが並んだラインナップ!

 さて、映画祭の柱となる“長編コンペティション”部門。カンヌのコンペでの受賞経験のある名だたる監督の作品が、映画祭公式部門の第2カテゴリーである“ある視点”部門にシフトしたこともあり、注目された今年のコンペ選出作は19本(欧州議会選挙の関係で日程が繰り上がった昨年は18本)。例年以上にコンペ初参加のフレッシュな顔ぶれが並び、それを最高賞受賞監督の2人、ガス・ヴァン・サント、ナンニ・モレッティを始め、ジャック・オディアール、マッテオ・ガローネ、パオロ・ソレンティーノらの常連監督が迎え撃つ構図となっている。

 フランス勢が5本、イタリア勢が3本、アメリカ勢が2本並んだ今年のコンペ部門、日本映画の選出は是枝裕和監督の『海街diary』(6月13日公開)の1本だけだが、日本人俳優を起用したコンペ作が2本(ホウ・シャオシェン監督の『黒衣の刺客』には妻夫木聡が、ガス・ヴァン・サント監督の『ザ・シー・オブ・ツリーズ』には渡辺謙が出演している)あり、こちらも話題となっている。
 また、河瀬直美監督の『あん』(5月30日公開)と黒沢清監督の『岸辺の旅』(10月1日公開)が“ある視点”部門で、三池崇史監督の『極道大戦争』(6月20日公開)が“監督週間”部門で上映される他、旧作では溝口健二監督の『残菊物語』(1939年製作)と深作欣二監督の『仁義なき戦い』(1973年製作)が“カンヌ・クラシック”部門で、黒澤明監督の『乱』(1985年製作)が“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”部門で、それぞれ上映される予定だ。残念ながら今年は“短編コンペティション”部門と学生映画を対象とする“シネフォンダシヨン”部門に日本映画は選出されていない。
(記事構成:Y. KIKKA)