俳優のオダギリジョーが4日、都内で行われた映画『FOUJITA』のティーチイン試写会に出席。試写会に美大生を迎えて、共演した中谷美紀とメガホンを取った小倉康平監督とともに本作を振り返った。

第28回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された本作は、1920年代のフランス・パリを舞台に、美しいパリジェンヌたちと出会い、別れ、狂乱のパリを生きた芸術家・藤田嗣治=フジタの知られざる世界を描く、実話を基にした日仏合作映画。

小栗監督は美大生を前に「絵を勉強している若い方たちの中で、フジタという存在がどういう風に生きているのか知りたい」と感心を示し、「この映画は伝記映画でもなく、絵画技法を紐解いているものでもありません。フジタがどのように“いま”というものに接近し、日本とヨーロッパの文化や歴史の違いをどう受け止めたのかを描いたつもりです」とアピール。

一緒に映画を鑑賞したオダギリは「改めて感じたのは、フジタの歴史を学ぶ教科書でもなく、2つの時代をどう過ごしたか。そこにトリップした感覚を味わえる作品」と話し「僕も観終わったばかりで、緊張というかドキドキが収まらなくてあまり喋る気がしないですね」と笑顔をみせ、緊張感漂う会場を和ませた。

一方、中谷は「セリフがとても少ない作品。無理矢理感動の押し売りをしない、そこが小栗監督の素晴らしさだなと。上映後に笑ったり泣いたりする作品ではなく、その場の沈黙の中で思いを噛み締めていることが最高の賛辞なのではないかと思います」と本作の出来に太鼓判を押した。

ティーチインでは美大生から「絵は一人で描く作品だが、映画で監督が描くフジタと、役者が描くフジタをどう交差させたか」という質問が。これにオダギリは「僕は(監督に)結構反抗的なんですよ。偉そうに聞こえますが、役をすべて任せてほしいんです」と正直な気持ちを明かし、「本作に関しては、小栗監督の脳みそがすごく面白くて。すべて監督に預けました。自分が思うフジタを反抗して押し付けていたらとんでもない失敗になったはず。今回はゼロ反抗です。自分という役者をゼロにして挑んだ」と吐露。
その結果を「自分が違うステージに立てたような感覚。監督に高みに引き上げてもらいました。役者として心を入れ替えないといけない時期ですね」と気を引き締める思いで振り返った。

同じ質問に小栗監督は「たとえば映画の持っている主語は誰が持っているのか。それは特定できないんですよ」と自論を展開し、「主語があるようでない世界を豊かに受け止めた方が絵の鑑賞も楽しくなるし、映画の奥行きも広がっていく。反抗したり、同調したりするのではなく、監督と役者がそれぞれの主語を隠して、探り合うことが大切だと思います」と主張した。

映画『FOUJITA』は11月14日より全国ロードショー

(Report:小宮駿貴)