第28回東京国際映画祭の提携企画のひとつである第5回日本学生映画祭が23日、新宿バルト9にて開催された。本映画祭は三大学生映画祭(東京学生映画祭・TOHOシネマズ学生映画祭・京都学生映画祭)のグランプリ作品が集結する国内最大級の学生映画の祭典。

ベストセラー作家・伊坂幸太郎の人気小説を実写化した『オー!ファーザー』の藤井道人監督、柳楽優弥・瀬戸康史ら出演作『合葬』の小林達夫監督、第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞に輝いた黒沢清監督の『岸辺の旅』で助監督を務めた菊池健雄監督らが、学生映画の魅力を語った。

藤井監督はアニメーション作品に「すごいな」と衝撃を受けたようで「僕には絶対に撮れない。アニメーションとかを作る人は本当に尊敬します。実写映画も含め、学生映画の域を超えた作品ばかり」と話し、小林監督は「ほんとにすごい作品ばかりで、3人で監督された『小村は何故、真顔で涙を流したのか?』は特に音楽の使い方が上手。猟奇的である中に悲しみもあるような表現がされていて面白かったですね」と絶賛。「中村くんの『雲の屑』は出てる役者の顔がすごくいい。どうやって人を集めてるんだろう」と感心をみせた。

また、菊池監督も「普通の商業公開しても全然問題ないくらいのクオリティに驚きましたね。僕らが学生時代のころはホラーとかジャンル映画をみんなやってたりしたんですが、今回の実写作品3本は、社会性もあってすごく身近なところに題材を得ている。今の若い監督たちは人間観察力がすごくて驚きましたね」と絶賛の嵐に。

一方、今後活躍が増えるであろう監督たちの出現に、藤井監督は「出る杭ですよね。だから楽しい!」と笑顔をみせ、小林監督は「それぞれの監督さんが、今の方法論をどういう風に成立させていくのかすごい気になりますね。もちろんそのままやっていく監督もいると思いますし、まるっきり戦略変えて作る方法もいいと思います」とエールを送った。また、菊池監督は「メジャーな大手の映画制作はショッピングモールを建てるような感覚で、自分だけの想いだけでは突っ走れないイメージ。みんな思いっきり突っ走れる個人の家は建てれると思うので、ショッピングモールを建てるための戦略が問われてくる」とアドバイスした。

今回上映された作品は、東京学生映画祭よりアニメーション部門グランプリ『GYRO』(円香監督作)、実写部門グランプリ『雲の屑』(中村裕太郎監督)。
TOHOシネマズ学生映画祭よりショートフィルム部門グランプリ『死亡動機』(田中穂先監督)、ショートアニメ部門グランプリ『うわさのねこ』(谷阪萌瑚監督)。
京都学生映画祭より長編部門グランプリ『小村は何故、真顔で涙を流したのか?』(二宮健監督・近藤啓介監督・永田佳大監督)、短編部門グランプリ『Ketchup Kid』(Patrick Vollrath監督)。
司会は放送作家で映画活動家の松崎まこと氏が担当した。

(Report:小宮駿貴)