囲み取材コメント
≪唐沢寿明≫
リトアニアに来て、多くの人が杉原さんのことを知っていることに驚き、ありがたく思いました。日本より知られていると思います。こちらでは中学校の教科書で杉原さんのことを勉強すると聞きました。日本でも特に若い世代にもっと彼のことを知ってほしいです。この映画は誰か一人だけをフォーカスしたつくりじゃない。だからこそ時代背景がすごく分かると思います。
今回縁の地を回って、実際に杉原さんがここにいたのだ、という実感がしみじみわき、来てよかったと思いました。撮影する前に来ていたら逆に考え過ぎてしまったかもしれない。撮影中は余計なことを考えず、撮影が終わってから来たからこそ素直に見ることができたのだと思います。
この映画を観て、この人はこういう時代を生きて、多くの犠牲を払ってまでたくさんの人を救ったのだ、ということを分かってもらえれば嬉しいです。彼がやったことは素晴らしいし、どうやっても真似できないと思う。ただの正義感だけではできないこと。特別な人だからこそ映画になっているんです。

≪小雪≫
今回リトアニアを色々回って、歴史的にも、地理的にも色々な国からの迫害や影響を受けた国だということを肌で感じました。自分たちのルーツがどこで、どういう風に今が成り立っているのかという問題意識が高いですね。日本の方達も作品を通して自分たちの生き方に興味をもち、問題提起をしてみるきっかけになったらと思いました。
撮影の1年後に足跡をたどったりすることはなかなかできないことだから貴重な体験でしたし、作品にもすごく親近感がわきました。これから日本で公開まで映画を紹介していくにあたり、自分が実際目で見てきたことで説得力も生まれるので、来ることができてよかったなと思います。
もし自分が杉原さんのような立場だったらどうするか、周りの意見や世間を欺いてまで自分が正しいと思う道を選択できるか、ということは常に自分に問うています。現代を生きる私達とシチュエーションは違えど、好きなこと、正しいと思うこと、いいなと思うことをちゃんと発言し、意思をもって、自分で自分のことが納得できる人の多い世の中になったらと、この作品を通して感じました。

≪監督:チェリン・グラック≫
杉原さんのことはアメリカでもユダヤ人の人達にはよく知られています。彼が日本人だから知ってもらいたい、という以上に、人間として、彼の功績を知らないということは残念だと思う。
僕はロケハンでリトアニアを訪れているので今回が2回目でした。でもロケハンの時には深く考えずに、撮影に関して技術的なことしか頭になかったので、撮影が終わって1年経ってもう一度来ることができ、今度は違う目で見ることができました。とても感謝しています。
この映画のテーマはそんなに難しくはありません。自分が正しいと思って決断したら、行動で示すしかない。
たとえ人生の半分を捨てるということになっても、「ナニジン」じゃなく人間として、杉原さんのように決断し行動できる人が増えたら、と願います。

千畝がカウナスに赴任していた1939年当時を知る観客のコメント
◆フェイガ・カガンスキエネ(1926年生まれ・女性)
強制収容所に隔離されていたが、その中のユダヤ人が虐殺されるときに脱出して生き延びた方。
彼女の姉妹のご主人がドイツ人だったため、助かることができた。
「映画本編と舞台挨拶で、長時間ではありましたが映画自体はすばらしく、大変興味深いものでした。私たちをご招待してくださって本当にありがとうございます。」

◆フルマ・クチンスキエネ(1933年生まれ・女性)
カウナス在住でゲットーに強制的に居住させられた方。多くのリトアニア人によって助けられ、逃亡して生き延びた。彼女の父親は、ドイツ軍の爆撃で亡くなった。
「今日の映画をご覧になった人は若い方が多かったですが、自分たちは出来事を経験してきた世代です。杉原さんがカウナスに来る前のことは知らなかったので映画を観てすごく勉強になりましたし、カウナスで起こっていたことに関してはより心を打たれました。私は2年間ゲットーにいて、家族の中でも私だけが生き残っています。直接的に杉原さんにお会いし、ヴィザをいただいたわけではないですが、今日の映画を観て杉原さんの“命のヴィザ”により、私達(ユダヤ人の)は命をつないでいただいたのだと実感いたしました。」

観客のコメント
◆非常に感動し、涙が流れました。とても奥深い映画。この映画が大好きです。
◆千畝の妻・幸子を演じた女優と主演俳優の演技がすごくよかった。
◆ユダヤの人達がドイツから逃げたように、リトアニア人もまたロシアによって迫害されました。今の時代も難民の問題があります。この難民問題に対し、リトアニア人ももっと受け入れる気持ちを持たなければいけないと思います。
◆私自身もユダヤ人です。当時に生きていたら迫害を受けていただろうと思います。ユダヤ人の中にも良い人も悪い人もいる。でも等しく迫害を受けた。そこがきちんと描かれていてよかった。
◆ずっと泣きながら観ました。戦争で殺されたたくさんの方々がもし生きていたら、今世界のためにどれほど貢献できていたことでしょう。この映画を通じて日本についても知ることができました。リトアニアでも日本でも、人道的な行為を行うために必要な考えは共通しているとわかりました。この映画で日本人の気持ちや性格についても理解できたのではないかと思います。私は日本に到着したユダヤ人の本を読んだこともありますが、すごく人を世話する国民ですね。
◆戦争は最も良くないことです。私の親戚も強制収容所に入れられましたし、私自身もユダヤ人です。この映画が戦争をなくすために役に立つことを期待します。
◆この映画を観て、カウナス市民であることを誇らしく思いました。この街の歴史について知ることができてよかったです。私は平和主義で戦争や暴力に対しては絶対的に反対です。杉原さんの行為は勇気ある感動的な行いだと思います。杉原さんは外交的な問題を解決するインスピレーションを我々に与えてくれます。リトアニアはこれまで何度もロシアから侵略されています。危機感はありますが、外交的に問題を解決していければと思います。
◆映画を観る前は正直あまり期待していませんでしたが、実際映画を観たら非常に感動しました。これからもずっと心に残っていく映画になると思います。もちろん私は生まれてから戦争を実感したことはありません。しかし最近の日常をみると危機感を感じます。特にウクライナとロシアの問題。次はリトアニアではないかという不安はあります。私はソ連時代を知らないし、知りたくもないです。色々な人にこの映画を観てもらうことで戦争を防ぐことができたらと思います。
◆私の父は強制収容所に入れられました。父は幸いにして命が助かりましたが、ソ連軍によりシベリアに送られ8年間強制労働をさせられました。ソ連から戻った人々は誰にも歓迎されず、職に就くことも難しかった。この映画を観て日本は我々にとって一つの模範になる国だと感じました。日本に行ってみたいですし、学びたいことがたくさんあります。杉原さんがカウナスに住んでいたことを自慢に思います。