環境省に定められた動物愛護週間中である、本日9月23日(水・祝)に、動物の存在の大切さを伝える目的のため、「ペットがいると人生が豊かになる」をテーマにしたパネルディスカッションと、同じテーマを持つ映画『先生と迷い猫』試写会を行いました。パネルディスカッションでは、人とペットの幸せ創造協会の会長を務められる越村義雄氏を司会に迎え、動物と人の関係や、動物が人に与える効果について研究されている東京農業大学・太田光明教授、ヤマザキ学園・山?薫氏理事長、人と動物のとのふれあい活動CAPPの第一人者である柴内裕子院長、動物福祉を推進している於保実佐子理事にお越しいただき、日本の高齢者社会の中での動物の在り方や動物と人間の共生などに語っていただきました。

■パネルディスカッション&『先生と迷い猫』試写会■
【日 程】9月23日(水・祝)  【場 所】イイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1 4階)
【パネリスト】
司会:越村義雄(一般社団法人 人とペットの幸せ創造協会・会長/一般社団法人ペットフード協会・名誉会長)
パネリスト:太田光明(東京農業大学/動物介在療法学研究室教授)
山崎薫(ヤマザキ学院大学/理事長・学長・博士)
柴内裕子(獣医師/赤坂動物病院・総院長)
於保実佐子(一般社団法人ふくしまプロジェクト・代表理事)

【越村義雄】
日本は今12万の殺処分があります。アメリカでは250万頭〜300万頭ほど殺処分されています。そういう意味では日本は相当激減しているともいえますが、まだまだやるべきことも多くあると思います。映画をご覧になって、どんなご感想をお持ちでしょうか?

【柴内裕子】
主演猫であるドロップがとても自然で、無理な演技をさせられていない、猫好きな方が作っているなという印象を受けました。環境省では、“無責任な飼い主ゼロ”を目指しておりまして、“猫は室内で飼いましょう”としています。
この映画では、地域猫が出てきて、人間などから傷つけられてしまったりする場面もあります。ただ、地域猫に心温まるものを感じることもできます。その時代に合わせて、都会と田舎では飼い方や動物との接し方は変わってきます。ドロップみたいに色んな人から可愛がってもらう、そんな社会は素敵だなと思いました。映画を通して、地域や文化などについて考えさせられましたね。こういう映画をたくさんの人たちに観て頂きたいと思います。

【太田光明】
動物の良さは接してみて初めてわかるものです。猫は、追いかけると必ず逃げるんです。(劇中で猫を探す場面がありますが)映画の中の校長先生のあの探し方だと決して見つかりません(笑)この映画は猫の生態も巧みに表しているので、関心して見させていただきました。

【柴内裕子】
まずは、この映画をたくさんの方に観てほしいとおもいます。この映画を通じて、猫がどんな行動をし、意外なところに自分の意外性があることに気づかされます。校長先生がもっと早くにドロップに出会い、心を通わせていたら、きっと校長先生という立場で、もっと幅広い教育に広げていけますし、(校長先生の周りにいる)近所の人たちの考え方も変わっていたと思います。
犬、猫には長い歴史があり、その中で、人間は動物たちにたくさんの役割を果たしてもらっています。人間社会でしか生きていけないようにしておきながら(震災があった時に)同行避難はいけないとか、(出先で)建物内に入れないといった現実がありますが、こういうことは飼い主が正しい動物に育てていないからだと思います。この映画を通して、動物を好きな方も嫌いな方も様々な発見ができると思います。

【於保実佐子】
様々なことを考えさせられました。奥さんに先立たれた1人暮らしの先生が感じる老後の寂しさや生活の張りの無さ、地域猫がのびのびと生きる姿もよく表現されていました。ただ、生きることに悩んでしまっている子供との触れ合いが素晴らしかったです。人と動物が関わることの素晴らしさが見え、ぜひ自分と置き換えて観てほしいですし、考えるヒントがつまっている素敵な映画だと思いました。

【越村義雄】
65歳以上の人口がつい最近のデータでは26.7%と高齢者社会なってきていますが、ペットと暮らす意義や効用をどんなふうに考えておられますか?

【於保実佐子】
私たちは保護団体ですので様々な相談を受けるんですが、最近は特に高齢の方をご家族に持つ方からの相談が多いです。
例えば、高齢のご夫婦の例ですが、犬と猫を飼っているあるご夫婦の奥さんが脳梗塞で言葉と体が不自由な方なんです。犬の散歩は主人がやり、室内飼いで猫の世話を奥さんがやっています。奥さんが不自由な体をかばいながら、猫の世話をしているんですが、その世話の話を嬉しそうに語ってくれたんです。動物がいることでこのご夫婦は楽しく過ごしていると感じることができました。
なんらかの飼育の支援を差し上げることで、ずっと健康に動物と過ごす時間が長ければ我々の支援も捨てたもんじゃないかなと思います。

【越村義雄】
動物と暮らすことで夫婦間の会話が50%増え、喧嘩が4割減るというデータもございます。一人暮らしの高齢者は、男性は12%。女性は21%になってきています。高齢化もこれから3割、4割になると見えてきているわけで、高齢者に支援をしていくインフラ整備もしていかなくてはいけないとも感じております。
山崎先生はどんなご意見でしょうか?

【山崎薫】
ペットとの共生が夫婦間の問題解決に役立っているのはとても喜ばしいことだと思います。最近は、お年寄りが高齢犬を飼う例が増えてきています。夫婦のうちその一人が入院するからペットの飼い主を見つけてほしい、と言われるのですが、(私たちの役目として)お渡しする相手をうまくマッチしないとペットも含めお互いに不幸になってしまいます。高齢の猫は高齢者の方に飼われる方がマッチングがいいなど色んなパターンもあるんです。
また、卒業生や在校生による訪問介護も増えてきています。一人で暮らすのではなく、他の命と一緒に生きていくのが大事なんだとおもいます。その方が医療費もかからなくなるという統計もでてきています。
一人暮らしで一人で死んでいく、他の命と生きて行かないで生きていけるわけがないとおもいます。日本の高齢化社会でこれからみんなが考えていかなくてはならないことだと思います。

【越村義雄】
山崎先生から医療費の話がありましたが、日本の医療費も毎年1兆円づつ増えて、今40兆円になってきています。少し古いデータでは、ペットと暮らすことで、ドイツでは7500億円、オーストラリアでは3000億円の医療費削減の効果があったということで、政府の方にペットとの暮らしを考えて頂けたら、日本の医療費の削減にも繋がるのではないかと思います。太田先生、いかがですか?

【太田光明】
一人暮らしは、必然的に増えていくし、一番問題なのは、認知症です。それを防ぐには、映画の中にもありましたが、動物を飼うことが一番安上がりでもあるし、効果があります。是非、お年寄りこそ動物を飼うべきです。犬が飼えない場合、猫でもいいんです。そうしないと、医療費は増える、認知症も増えて大変なことになります。
動物たちがもたらす効果はポジティブな部分がたくさんあります。動物は人間の心理を読むのが上手なんです。映画にもある悩んでいる子供も助けてくれるようなメリットも持っています。動物はかなり有力な方法だと思います。ただ、実際に応用した実例がないので、応用する時期に来ているとおもいます。