『キックアス』で世界中の映画ファンを虜にしたマシュー・ヴォ—ン監督の最新作は、常識を覆す、誰も見たことのないノンストップ・スパイアクション。名優コリン・ファースがブリティッシュ・スーツに身を包み、華麗で過激なアクションを披露する姿に世界中が大熱狂。続編の製作も決定し、日本でも早くから公開を待望する声が多かった噂の作品、『キングスマン』。

このたび、9月11日(金)より全国公開されたことを記念して、映画評論家・町山智浩さんをゲストに迎えトークショーイベントを実施いたしました。

TOHOシネマズ六本木ヒルズでの本作上映後に行われたトークショーでは、日本での公開決定前から各メディアでいち早く本作を高く評価していたアメリカ在住の映画評論家、町山智浩が本作の主人公たちのファッションにちなみ、スーツ姿で登場。

のっけから町山は「アレは日本でやったら大変ですよね(笑)、よくスウェーデン人は怒らなかったな(笑)」と、主人公エグジーとスウェーデン王妃キャラクターによるブラックジョーク溢れるラストシーンについて切り出し、作品を観たばかりの客席は大爆笑。

全米では今年2月15日に公開され、全世界で4億ドル(全米では約1億2800万ドル)の大ヒットを飛ばした本作。全米公開時のタイミングで本作を鑑賞したという町山は「アメリカというのは西海岸、東海岸、そして中央部と、地域ごとに様々な思想の人がいます。本作のサミュエルL・ジャクソン演じる敵役ヴァレンタインは、西海岸の金持ち、かつ左寄り(左翼的思想)な人間として描かれていますよね。けど、一方で、この映画には右寄り(右翼的思想)な人種差別主義者を一網打尽にするシーンがあったりもする。けっきょく「左も右もやってしまえ」って感じなんですよね(笑)」とコメント。

劇中に散りばめられた数々のスパイ・オマージュについては、「『007」シリーズへの嫌がらせみたいなものですね(笑)。(本作の監督)マシュー・ヴォーンは、『007 カジノ・ロワイヤル」の監督をやりたかったんだけど、企画コンペでオチてしまった。けど、とにかくやりたくてやりたくてしょうがないんだと思う。つまりこの映画は“嫌がらせ兼ラブコール”みたいなものじゃないかな』。

また、「イギリスは階級社会で、貧富の差が激しい。本作はそういったものへの怒りも描かれている気がする。最終的にスパイとして「キングスマン」の一員となる主人公エグジーは、低所得者層だけれど、劇中に「Mannars Maketh Man」というセリフが出てくるように、身分ではなくマナーこそが人間をつくっていくんだと、そういった思想を感じました」と分析。「原作のマーク・ミラーは、彼自身が貧乏すぎて大学に行けなかったというのがあって、過去作品の『キック・アス』や『ウォンテッド』でも、恵まれない貧乏人が(自己実現を果たし)なりたいものになれる、世間から負け犬と思われている人が大成功するというような世界を描き続けているんですね」と、作品の根底に流れるテーマについて持論を展開。

さらに、各シーンで使用される印象的な音楽について、「例えば (アメリカ南部の教会での大バトルシーンで使用されている)レーナード・スキナードというバンドの曲「フリー・バード」は、アメリカの田舎の人たちにとって非常に馴染みが深く、いわば「君が代」的な曲。そんな曲をド派手なバトルシーンに合わせることで、もはやギャグとして描かれている」。

最後は「(この映画はいろいろとシャレの効いた下品な表現も多いが)だけど『007」シリーズも初期の頃は(女性キャラクターとの会話のやりとりなど)下品な表現が多かったとマシュー監督も語っているんですよね。だからそういった部分も含めて、本作はじつに色々なオマージュを捧げていますよねね』と締めくくり、終始笑いに包まれた町山の“キレッキレ解説”が大炸裂したトークショーとなった。