高野山開創1200年記念
『ボクは坊さん。』
「高野山カフェ」in丸の内ハウス2015トークショー

登壇者:白川密成(原作者、僧侶)、真壁幸紀監督、
安藤親広(エグゼクティブプロデューサー) MC:長壁なつみ
会場:千代田区丸の内1−5−1 新丸ビル7階 「ライブラリー」

9/6(日)まで開催中の、世界遺産・高野山を都心で気軽に体験できるイベント「高野山カフェ」in丸の内ハウス2015で、高野山開創1200年を記念して製作された映画『ボクは坊さん』のトークイベントが行われた。
トークゲストは映画の原作者で四国八十八ヶ所霊場・第57番札所栄福寺の住職・白川密成さん、今作が長編映画初監督となった真壁幸紀監督、エグゼクティブ・プロデューサーの安藤親広さん。来場したお客様は近年の坊さんバー、坊さんカフェなどのお坊さんブームやお遍路女子などの人気からか約9割が女性。
手に写経を持つ人もいて、人気僧侶・白川さんの登場を待ちわびる様子から、「仏教」「お寺」「お坊さん」がこんなに親しみやすく受け入れられている、と実感できるイベントになった。

映画『ボクは坊さん。』は、24歳で突然、住職になった白川さんの同名エッセイ(ミシマ社刊)を原作に、白川さんをモデルにした若き住職・白方光円を伊藤敦史さんが演じた。高野山奥の院で初めて映画撮影を許可されたのも話題で、高野山大学で修行中の白川さんの爆笑エピソードも盛り込まれ、笑って見ているうちに、思わず涙して、生きるヒントをもらえる、そんな温かい映画。

白川さんはトークで高野山大学時代を思い返し、「高野山は遊ぶ場所もないので、深夜になると皆ウロウロと徘徊を始める。シンヤハイカイ。人間はやることがないと、歩き始めるんだなぁと思った」と、笑わせながらちょっと哲学なお話や、映画でコミカルに描かれるお坊さん野球チームの話を披露。
白川さん自身も参加しているお坊さん野球チームの名前は、なんと「南無スターズ」!
チーム分けの際に「御本尊様が如来の人はこっち?こっちは菩薩の人?なんてやって。
如来VS菩薩で対戦したり。本人たちは大真面目なんだけど、こういうことってはたから見たら面白いんじゃないか」と、もっとお寺やお坊さんに親しみを感じてもらいたくてエッセイを書き始めたきっかけも語った。

一方で、真壁監督は「お坊さん映画というと誰もが周防監督の名作『ファンシィダンス』を思い出すと思いますが、一番大きな違いは『ファンシィダンス』は修行中のお話で、『ボクは坊さん。』は住職になってからが物語の中心。主人公の成長物語で笑って見られる映画だけど、生死というものに向き合っていかなくてはいけない若いお坊さんから、きっと今の時代に必要なものが描けたんじゃないか」と話し、安藤プロデューサーも映画化について「両親の死がきっかけ。当初は企画として地味と言われたが、震災を経て人が生きること・死ぬことを考えることが多くなり、映画化が実現した」と話した。

また、安藤プロデューサーは当初から伊藤淳史さんに主演を演じて欲しいと思っていたそうで、その理由を「伊藤さんは、周りの役者の良さを引き出し、互いに共鳴するような演技ができるので、お坊さんの役にぴったりだと思いました。原作者の白川さんにどこか雰囲気が似ていて、たたずまいがお坊さんに近いし、伊藤さんはいつも“一生懸命”。
この役をぜひやって欲しかった。」と語った。

Q&Aでは、「神仏は存在すると思うか?」という観客からの突っ込んだ質問もあり、「心の中にいる仏はいると信じています。でも、今会えたかもと感じたり、また見えなくなったり、そういうことの繰り返し。まだ自分の中の仏様を見つめ直しているところです」と真摯に穏やかに答える白川さん。テレビのお坊さんバラエティーが人気になり、秋にはお坊さんを主役にしたドラマも登場。数年前からの知る人ぞ知る「お坊さん人気」がついにブームになりそうな予感だが、これはただのブームじゃない。
映画『ボクは坊さん。』の楽しさ、面白さとともに、大切なメッセージを優しく感じさせたトークイベントだった。