監督・高橋伴明(66)、主演・奥田瑛二(65)で、人生の半分を過ぎようとする男たちが探し続けている“不確かなもの、”人間が誰しも経験する“老い”が“性”にも追いつく時間を葛藤と焦燥感に苛まれ、それでも求め続けるしかない人生を描いた映画『赤い玉、』。
監督から、「日本映画には最近エロスが足りないからダメになっているのかもしれない。」と言われ、同感した奥田は、「エロスというものを俺たちの世代がもう一度復活させないと、これからの若い人たちはどうしようもないだろう」という想いもあって参加した意欲作。
第39回モントリオール世界映画祭に正式出品されることが決定し、25日の舞台挨拶の後、伴明監督は現地入りする予定となっている。

劇中、奥田演じる時田は、自身が教鞭をとる大学の事務員である30代の理解のある美しい女・唯(不二子・35)がいるにもかかわらず、街で一目惚れした女子高生・律子(村上由規乃・21)に翻弄され、また、劇中の学生映画のヒロインを演じる教え子・愛子(土居志央梨・23)にも「次の彼氏になってくれませんか?」と誘われる。

8月25日(火)18:30〜
登壇者:奥田瑛二、不二子、村上由規乃、土居志央梨、高橋伴明監督

●登壇コメント
司会「この映画を撮ろうと思ったきっかけについてお教えください。」
高橋「大学で学生が作る映画を何本も観ていると、皆、性表現から逃げているんですね。これじゃいかんと思って、こんなじいさんでも、頑張ってここまでの表現をするんだよというのを見せたくて、企画しました。」
司会「奥田さん、それを監督からお聞きし、賛同してご出演を快諾されたとお聞きしました。同世代の男2人のタッグとなりましたが、完成した作品を観て、どう思われましたか?」
奥田「伴明監督がおっしゃったように、今日本映画にはエロティシズムが皆無に近い。それは同世代として憂うわけであって、それをじゃあどうしたらいいのか、お互い想いは一つだったので、じいさんが脱ぐしかないと思って。自分が盟友として出ているわけだから、(映画は)いいに決まっているでしょ?そんな答えが決まっていることをしゃべる必要ないですもんね?!(高橋監督に同意を求める)」
高橋監督頷く。
司会「じっくり見て頂きたいと。不二子さん、本作では、フルヌードで体当たりの演技をされていますが、奥田さんとの撮影時のエピソードなどを教えて下さい。」
不二子「体当たりさせてもらいましたが(笑)。学生さんたちが大勢制作に関わっていらして、二十歳そこそこのかわいらしい女の子や男の子たちが一生懸命やっているわけです。ベッドシーンとかも結構あって、奥田さんは開けっ広げな方なので、そのまま(前貼りなし)なんですけれど、『カット』と言われた瞬間、『早く隠さなきゃ』みたいに、女の子がばさっとバスタオルを投げかけていたのが印象に残っています。」
奥田「あまりにもばさっが乱暴すぎたので、『ちょっと繊細にかけてくれ』って言いました。(笑)」
司会「不二子さんの印象はいかがでしたか?」
奥田「おっしゃったように、開けっ広げな、ばさっな現場でありながら、演じていることは繊細なことですので、そこは女優さんをリスペクトして、僕なりにケアをさせて頂いたということが伝わったかはこっちが聞きたい話です。」
司会「村上さんは、奥田さんとの撮影時のエピソードはありますか?」
村上「私は映画の現場が初めてで、緊張したんですが、夏、汗だくになって撮影している時に、飴ちゃんを持ち歩いておられて、塩レモン飴みたいなものを下さったのが嬉しかったです。」
奥田「飴は大事なんだ。飲まないと熱中症になったら困るから麦茶、水は、あるんだけれど、俳優は本当は、あんまり飲まない方がいい。汗かくから。塩飴がちょうどいい。という想いで、僕は常に飴を持っています。」
司会「奥田さん、村上さんは本作が映画デビューだったのですが、村上さんの印象はいかがでしたか?」
奥田「不二子さんも土居さんもそうだけれど、ご覧になると、本当に百戦錬磨の私がびっくりするくらいよろしいです。何がよろしいかと言うと、多岐に渡ってよろしい。今映画が始まる前なので言いません。今ニコニコなさっていますけれど、終わった途端、とんでもないことになりますからね。それ位素晴らしい女優陣でございます。大学2年生になったばかりですよ。そのことを見ている内に忘れてしまう位、女優として完膚なきまでに成立している。それは高橋伴明監督の力もあるやと思いますけれど。」
司会「じっくり見て頂きたいと思います。土居さんは、奥田さんの撮影時の思い出はありますか?」
土居「撮影前なんですけれど、監督とキャスト・スタッフで近くの神社にお祓いに行った時に初めて奥田さんにお会いしたんですけれど、玉串を捧げる奥田さんの立ち居振る舞いがものすごく美しくて、かっこいいと思ったのが、頭の中に残っていて、愛子としても時田先生として見ていた部分もあったのかもしれないですけれど、ぶわーっと色々広がりました。神々しかったです。」
司会「奥田さん、土居さんは、出演シーンは少ないながらも、強い印象を残されていましたが、土居さんの印象はいかがでしたか?」
奥田「ドキッとする台詞があるんですけれど、映画の中では、『先生、私、愛人にして』と言われて、『70年代ならそういうこともあったけどな』という台詞があるんですけれど、思わず『なれよ』と言いそうになりました。(『なれよ』と)思うからこそ、『70年代だ』と言うのが、自分の中に、錯綜するわけですよね。多分それが脚本の意図でもあるわけで、そう思わせてくれた彼女のリアリズムがとても印象に残っています。土居さんは、女優として一本立ちして、大学を卒業して、これから活躍なさる方なので、全身が出てきますので、皆さんよーく焼き付けて、3人を応援して頂くように、切にお願い申し上げます。」
司会「さて、残念ながらもうお時間となってしまいました。最後に、奥田さんから、締めの挨拶をお願いします。」
奥田「映画って観終わった後にどう思うかがテーマだと思っています。我々同世代の男性諸氏を含めた方々が、常日頃そこには定着しなかった意識を持って過ごしているんだけれど、この映画を観終わった後に、『そこに思いをフィードバックさせて自分を見つめなくてはいかんぞ』と思わせる映画だと思いますので、この役をやってよかったなと思います。すごい抽象的なんだけれど。極端に言うと、団塊世代の皆さん、観なさい。逃げている場合じゃない、ということかな。この映画が攻めている攻めていないとかそういうことではなく、時代を生きてきた人たちが観ると強烈なんじゃないかと思うし、若い人たちが観ると、男性諸君として、自分が持っている夢とは何だろうということを思っていただければ。僕は『オス』という言葉を使っています。その『オス』とはなんだ?ということを考えてくれると、メスがもっと見えてくるかもしれない。」