8月18日(火)現地時間15:30よりベトナム・ハノイのナショナルシネマセンターにて映画「ベトナムの風に吹かれて」(大森一樹監督、松坂慶子主演)のベトナムお披露目となる試写会が行われました。
本作は、日本映画史上初となる日本・ベトナムはじめての合作映画。製作から撮影、出演者、スタッフ編成にいたるまで2つの国の映画人が手を取り合って出来た作品。大森一樹監督、主演の松坂慶子さん、草村礼子さんらは昨年末の映画撮影以来のベトナムとなりました。

深田博史駐ベトナム日本国特命全権大使の挨拶に続き、スタッフ・キャストを代表して挨拶を行った大森一樹監督は、「言葉も社会も文化も違う人たち同士でこうして完成させることができたのは、映画の力(ゆえ)だと思います。尽力いただいた監督、スタッフ、役者の皆さんに深く感謝いたします。この映画をベトナムの皆さんが楽しんでくださることを願ってやみません。ありがとうございました。」と語った。また、大森監督に続き挨拶を行った松坂慶子さんは、「こんにちは、松坂慶子です。ベトナムが大好きです。ありがとうございます。」とベトナム語で挨拶をすると、会場からどよめきと温かい盛大な拍手が送られました。「日本とベトナムの初の合作に出演させていただき、大変光栄に思います。ベトナムのスタッフ、俳優の皆さんと一緒にあたたかい家族のように仕事をさせていただいたことは、宝物のようにうれしい(思い出)です。これからもベトナムの皆さんと映画、芸術、文化の交流をさせていただきたいと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます
」と語った。

上映後に行われた記者会見での質疑応答は下記の通り。

——流暢なベトナム語でしたがどのように習得を?そしてベトナムでの撮影で難しかった点は?

松坂慶子(佐生みさお役)
ベトナム語は大変難しくて、わたしもたくさんたくさん勉強させていただきましたけど、ベトナム語の先生たくさんの方に指導していただきました。それから共演した俳優のみなさんにも繰り返し教わって、教えて下さったみなさんに頭が下がります。本当にありがとうございました。撮影で苦労したことはやっぱりベトナム語で(笑)撮影に入る前に3回ほどベトナムに来て、小松さんそしてみなさんに教わりました。撮影に入るときは、岡田プロデューサーから最初にお話があったんですけれど、「ここに来てとても伸びやかに暮らしているように演じて下さい」という状態になれたこと、わたしとしては準備ができたことがとてもよかったです。それから大森監督からも「この作品はリラックスしてやってください」と言っていただけたのでベトナムでリラックスして伸びやかにできたことがとてもよかったです。ベトナムで苦労したことよりも楽しかった思い出が多いです。タット・ビン監督(ベトナム側プロデューサー、監督)もすごく家族的で私たちを見守って下さって、食事のことやおやつのことやいろいろ私たちが撮影をできるように気遣ってくれたことに感謝します。

今日、試写会で観客のみなさん関係者のみなさん、映画のスタッフのみなさんと一緒に上映をみて、ああ、船出をしたんだなと。それから今日みて気がついたんですけれども、わたしは、親や先輩や仕事仲間や、いっぱいの人に見守られながら育って、そして子供を育て、わたしは心のなかで「いつかはわたしも人を助けられるようになりたい」と思っていたんですけれど、わたしがするよりもこの映画の中のみさおさんがそれをしてるっていうことに今日気がついて。お母さんを見守っているみさおや、大女優のファン・ホアンさん(認知症の元大女優という設定)が舞台で輝いていらっしゃる、その命の輝きを見守るみさおや、友達の小泉が再生して旅立っていったのを見守る・・・ああずいぶん見守る役がわたしにできるようになったんだということが、今日見て嬉しかったです。

———この作品の撮影の前とあとで、ベトナムに対してのイメージは変わりましたか?
草村礼子 来る前は遠い国、外国だと思っていました。ここについて沢山のオートバイの群れをみてびっくりしたとき、そしてスタッフに囲まれてあったかい家族の元に帰ったような感じがしたとき、そのときからベトナムは外国じゃなくなりました。わたしの父は70年前に亡くなりました。その父に似た人をたくさんベトナムで見たから、親戚に会いにきたみたいな気分。役の認知症と同じで、わたしはマイペースで、みんなに抱かれていました。マイペースなわたしを受けとめて下さった一番の人は松坂さん、そして大森監督。みなさんに感謝しています。

———認知症と介護、海外で介護するということについて
小松みゆき わたしにしてみたらそんなに特別なことではなく。最初は一年ぐらいのつもりで、来年の春まで、のつもりでここにきたんですけれども、それがもうちょっといられた、なじんだ、ただそれだけなんですね。「ベトナムの風に吹かれて」というタイトルによく表れていると思うんですが、もうひとつのベトナム語の訳し方でいうと「ベトナムの風に乗って」というこの空気とか自然とか食べ物とかいろんなものになじんで乗っていくというかんじ。あと認知症は、本にも書いたんですが異文化だと思ってみたら、「そういうこともあるんだ」「あるよね、こういう傾向」というふうに捉えたら、そんな深刻に考えても仕方ないと思うんですね。それをおもしろがる、来たボールをわたしが投げ返す、そういう感覚になったら楽じゃないかな。わたしはそういう風にしかできませんでした。

———合作映画を作られた感想とここを見てもらいたいという点
タット・ビン(ベトナム側プロデューサー、監督)
脚本を読ませていただいたときに地味な話なんだけれど、とても大切な話だと思いました。日本、ベトナム両国に共通するテーマです。ベトナムではアメリカの映画やアクションなどが好まれますが、庶民の生活を題材にして見た人と語り合いながら見る映画をこれからも作っていきたいと思います。やはりある程度知識を持っている人、外国の文化に興味の持てる人が見てくれる事を願っています。ベトナムでも公開が決まり、日本の文化に興味を持ってくれる人に見てもらえるのではないかと思っています。

———(ベトナムメディアからの質問)音楽がとても印象的でした。この音楽を選んだ理由は?
大森一樹(監督)
日本の古い民謡から戦時中の歌から70年代フォーク、最新のロックまで日本の音楽史をなぞるかたちで音楽を入れています。映画のひとつのテーマとして戦後70年ということがあるんですけれども、だから音楽も70年をさかのぼっていったという意味を込めています。「浦島太郎」だけちょっとわかりづらいかなと思ったんですが、今日の試写会では歌ではそこだけベトナム語の字幕をつけてくださっていたのでベトナムのみなさんにも意図が伝わったのではないかと思っています。

———企画意図について
上田義朗(プロデューサー)
いままで日本とベトナムの関係は経済中心でした。最近になりまして安全保障の分野にも戦略的パートナーとしての関係ができつつあります。これからは芸術・文化の分野です。わたしはベトナムで小松さんと出会い、こういう女性をたくさんの人に知って欲しい、という想いから、岡田プロデューサーに話をしたのがきっかけでした。この映画が日本ベトナム両国の心に響く、交流になるような映画になればと思っています。映画というのは歴史に残るもの。この映画が日本とベトナムの歴史の1ページに残る事を期待しております。

なお、岡田プロデューサーから日本の公開について9月26日より新潟7館にて、そして10月17日から東京・有楽町スバル座ほか、大阪、福岡、そのほか順次70館の公開を予定していることが発表された。
また、ベトナム側のプロデューサー・オアイン氏からベトナムでの公開についても、10月11日より試写会場となったナショナルシネマセンターほかオーガストシネマなど全国で公開を予定していることが発表された。

この日は、交流会も催され、両国の映画のキャスト、スタッフらが集結し再会を楽しんだ。そして、両国の映画人らが交流を深めるとともに、フォーセインツwith松坂慶子として主題歌「たまには仲間で」が披露された。原作者の小松みゆきさんを含むコーラス隊5人が加わり、特別バージョンでの披露に会場も盛り上がり、映画の余韻に浸った。

10月17日(土)より有楽町・スバル座ほか全国公開