映画『日本のいちばん長い日』 (8月8日公開/アスミック・エース、松竹配給)は、昭和史研究の第一人者・半藤一利の傑作ノンフィクションを、『クライマーズ・ハイ』『わが母の記』の原田眞人監督が完全映画化。太平洋戦争終戦の舞台裏では何が行われていたのか? 日本の未来を信じ、今日の平和の礎を築くため、身を挺し闘った人々の物語に挑みます。ベテランから、躍進目覚ましい若手俳優まで、今の日本映画界を代表するキャストの豪華競演が実現しました。すべての日本人に伝えたい、戦後70 年の壮大な記念碑となる感動作が、ここに誕生しました。

このたび、8月8日(土)の全国公開を前に、本日8月3日(月)に日本外国特派員協会(外国人記者クラブ)主催の試写会にて主演の役所広司、原田眞人監督が登壇して記者会見を実施いたしました。

『日本のいちばん長い日』 外国特派員協会 記者会見 概要
【日時】 8月3日 (月)  
【場所】公益社団法人 日本外国特派員協会
(千代田区有楽町1-7-1 有楽町電気ビル北館20F)
【登壇者】 役所広司(59)、原田眞人(66) *敬称略

会見が始まると、原田監督は「1945年当時、19歳だった父は、九州の最南端知覧という神風特攻隊の基地があった場所としても有名な地域で塹壕掘りをしていた。もしあの時天皇が聖断を下していなかったら父は死んで、私は生まれていなかったかもしれません。」と熱い思いを述べると、作品作りについて「肯定否定様々な思いを感じながらも、自分の思い、誇りを信じて、まず家族を大切なものとして描いています」と語った。

重厚な人間ドラマで感銘を受けたが、この最後の最後まで自分のメンツを保つために優柔不断な部分を描いていると感じたと語る記者の質問に、監督は「今の安倍政権を観てもわかるように国民性ですよね」と答えつつ「この時代は、日本が戦争に負けたことがない、降伏というものがなかった。多数決で決定をしても必ずクーデターが起こることは分かっていた。開戦の時は聖断を下すことはできなかったが、終戦の時に聖断を下すことができた。それはやはり昭和天皇、鈴木貫太郎首相、阿南惟幾陸相の三人がいたからこそだった」と語る。
また、天皇制について監督は「当時天皇というのは全ての日本人の家長という存在だった。その天皇による、天皇制というものがあったからこそ日本人を救うことができた。近衛や東條のような政治家が決定を下すようなことだったら、このように終戦を迎えることは出来なかった」とコメント。

熱弁する原田監督の言葉を黙って聞いていた役所に対し、司会から「役所さんの話も是非聞きたい」との振りから本作での役作りについて質問されると、役所は「原田監督との仕事の時には膨大な資料がおりてきます。今回も、まずはその資料に目を通すところから始まりました(笑)」と役作り当時を振り返り会場を沸かせた。「戦争継続を望む若手将校たちとの間に苦悩しながら、鈴木貫太郎首相、昭和天皇とで戦争にピリオドを打てたのはよかった」と語りました。

また、戦況が悪化をたどり、終戦に向けての議論が紛糾する中、何故阿南陸相は辞任しなかったのかという事に対して役所は「この内閣は阿南が辞任していたら崩壊していた」と語り監督は「この映画で一番描きたかったのは阿南さんの抱えていたアンビバレントです。大本営直属の軍人ではなく、天皇直属の軍人だという彼のジレンマにドラマがあると思います」と、思いを語りました。

また、原田監督は「岡本喜八監督の『日本のいちばん長い日』では昭和天皇を描けなかった。半藤さんの原作では明らかに主役の一人として描かれているのですが、当時は細かい部分を描くことができなかった。21世紀に入ってアレクサンドル・ソクーロフ監督が『太陽』という作品を撮ってイッセー尾形さんが演じ、初めて昭和天皇をクローズアップして描いたが、カリカチュアライズされていて、昭和天皇のクセを強調していて気品の感じられる昭和天皇像ではなかった。」と不満を語りながらも、「しかし、この当時ようやく描かれた昭和天皇像に対し、世間からの不平があがることはなかったので、今こそ『日本のいちばん長い日』を描く時だと感じた」と制作への裏話を語った。また、「本作では半藤先生の「日本のいちばん長い日 決定版」と同じく半藤先生原作の「聖断」を参考に、終戦までの4ヶ月間を描いたことで、終戦がなぜ遅れたのかを描き、昭和天皇、鈴木貫太郎首相、阿南惟幾陸相の関係を綴っています」と語った。

最後に海外の方に対して本作をどのように伝え、感じて欲しいかの問いに役所は「戦争をはじめるというのは簡単だけど、終わらせるというのは本当に難しいことという、シンプルなメッセージとして海外の方も受け止めてくれるのではないかという気がします」とコメント。原田監督は「海外の反応がみたいということがありますので、どうなるかはわかりませんが、9月くらいから様々な映画祭にアプライしております」と海外公開に向けてコメント。さらに、「ハーバード・ベックスの本による「昭和天皇」が出てから、昭和天皇に対して事実とは違う歪められたイメージが一般的に広がってしまっている。真実よりもイデオロギーを先行させるという考え方にとても怒りを感じる。だから僕はこのことを変えていきたいという気持ちがあります」と、作品への思いとともに自身の熱い思いを訴えかけ会見を終了しました。