映画『この国の空』青山真治が、泣いた 『戦争への思いをひっくり返す、挑戦的な作品』
二階堂ふみ、長谷川博己主演『この国の空』が8月8日(土)より、テアトル新宿、丸の内TOEI、シネ・リーブル池袋他、全国ロードショー致します。
原作は芥川賞作家・高井有一による同名小説、1983年に出版され谷崎潤一郎賞を受賞しました。戦争という時代を戦場ではなく、庶民の暮らしを繊細にそしてリアルかつ大胆に描かれた物語です。また、本作は日本を代表する脚本家・荒井晴彦の18年ぶりの監督作です。
この度、本作の試写会を開催致しました。本編上映後に、本作監督の荒井晴彦と、かつて『共喰い』でタッグを組んだ青山真治のトークイベントが行われました。
《終戦70周年記念作品 『この国の空』トークイベント付き試写》
■7/29(水) シネアーツ試写室 (市ヶ谷)
■登壇者:荒井晴彦監督、青山真治監督 ■進行役:明智恵子(『キネマ旬報』編集長)
Q、本作は18年ぶりの監督作ですが、公開が近づいてどのような心境ですか?
荒井:構想30年、執筆1週間、撮影1ヶ月。
本作は、今年が戦後70年だから成立した作品だと思う。
声高に反戦だとか、安倍批判をするような映画でもない。戦争中に少女が隣家の男を好きになるとんでもない映画(笑)
青山:『この国の空』を観るのは、これが4回目かな。
一番最初に脚本を読んでくれと(荒井監督から)渡されたのは、10年近く前。自分も監督業をしているから、てっきり監督をさせるつもりで読ませたのかと思ったよ(笑)
スクリーンで観ると川原のシーンなど迫るものがあって、男泣きしました。
青山:こういう作品をやることこそが我々の仕事だと思う。明らかに、自分ら世代の戦争に対する思いが描かれている。戦後を生きた人間が、戦争をどう捉えたか色濃く反映されている。
18年前にたまたま制作会社のスタッフルームが隣同士だったという両監督。荒井監督は、青山監督がかつての自分を評価してくれた数少ない監督だと言う。そんな縁からか、青山監督が本作の撮影現場を訪れた際のエピソードも。「(現場に行ったのは)トマトを窓辺に並べるシーンね。特に何もしていないけど。笑」
本作を映画化するきっかけになったのも、青山監督の「玉音放送無しで終戦を描く事は出来ないのか」という疑問からだと言う。(その言葉の通り、本作は昭和20年8月14日で終わる。)
本トークイベントでは、映画監督同士だからこそ盛り上がる、制作談義に花が咲く一幕もあった。荒井監督が、戦時中を描いた作品だからこその苦労をこう語った。
荒井「あの時代をセットで作れと言われても、『こうだ』とは言い切れない。B29をCGで作ったからチェックして欲しいと言われても、僕たちは戦後に産まれた人間だから、あくまで想像するしかないしね。でも自分の幼少時代は戦後だったから、雰囲気とか、貧しさは分かったよ。」
“戦争映画らしくない戦争映画”とも言われる本作を、青山監督はこう絶賛する。
青山「戦争映画だけど、あまり類を観ない作品。ドイツなど海外ではあるかもしれないが、日本映画に、戦争をこういった描き方をする映画は無かった。本作を映画化したいと思って、30年経ってやっと実現できた。それだけの粘り腰じゃないと、映画なんてやってられない。その上、こんな映画が作れる人はめったに居ない。」