6/20(土)、大阪市西区にあるシネ・ヌーヴォにて、『灰色の烏』が関西公開初日を迎え、監督の清水艶監督が舞台挨拶を行った。この作品は2013年の夏から秋にかけて東京を拠点に撮影され、2014年に完成し、東京では3月にヒューマントラストシネマ渋谷にて公開された。今回は大阪/シネ・ヌーヴォと京都/立誠シネマと同時公開となった。

母への憎悪を抱えた珠恵(西田エリ)と中学生のマナ(小林歌穂)らガールズキャンプクラブの少女たちは、天狗が住むという山に迷い込む。そこで出会った謎の青年・椿(中山龍也)によって、彼女たちが心に秘めた思いが曝け出され、亀裂が広がっていく。

清水監督は大阪芸術大学・映像学科卒の出身の32歳。監督・脚本・編集を務めた卒業制作の『シェアリング』(’06)にて第 7 回 JCF 学生映画祭でグランプリを受賞。
2009年には、文化庁が支援する「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」にて、『ホールイン・ワンダーランド』の監督・脚 本・編集を務めた。

大阪で制作される映画にも数多く参加。CO2(シネアストオーガニゼーション大阪)では、『ジャーマン+雨』(’07/横浜聡子監督)、『Dressing UP』(’11/安川有果監督)の助監督、『こども映画ワークショップ』(’13)ではメイキング監督を務めている。

観客の前に立った清水監督は、
「ずっと大阪で活動していて、シネ・ヌーヴォさんも前に作った短編映画を上映して頂いたりとお世話になったので、こうして上映してもらえる機会ができて嬉しく思っております」
と笑顔を見せた。

●映画化の経緯
この作品はシンガーソングライターである西田エリさんの「灰色のカラス」という歌と、彼女が書いた「灰色のからす」と言う同名の絵本があり、それを元に映画を撮ろうと始まった企画だった。
絵本は映画と異なり、鳩たちの世界とカラスたちの世界で巻き起こった抗争を灰色に生まれてしまったカラスが止めようと奮闘するいう内容。
「絵本を拡大解釈をさせてもらって(笑)
私自身やってみたいテーマのひとつだった白い世界、黒い世界、その間の灰色の境界線、白黒じゃないグレーの世界に向き合ってみたいと考えて作った作品です」

●小林歌穂さんの魅力
キャストの中でマナ役の小林歌穂さんが、映画出演後にアイドルグループの私立恵比寿中学として活動を始め、舞台挨拶ではファンの皆さんが多数応援に駆けつけたという。
シネ・ヌーヴォにもファンの皆さんの姿が見られた。

主演は西田エリさんで、というところから始まった本作だが、その他の役者は全てオーディションで選んだ。
「歌穂ちゃんは演技も未経験でしたが、原石みたいな荒削りだけどキラリと輝くものがあって」
別の候補で経験豊富で安定感のある参加者がいたため、スタッフの中でも意見が分かれたという。
「わたしが歌穂ちゃんをゴリ押ししました。原石タイプの子は撮影期間中に成長してくれるんです。何?今の表情!っていうものを色々出してくれて良かったです」
マナというキャラクターは心に秘めた思いを抱えつつ、おかしいと思う事には周囲との調和よりストレートに吐き出す事を選ぶ難しい役どころでもある。
シネ・ヌーヴォ山崎支配人からも「表情が良かった」との感想が寄せられた。

⚫彼女たちが山で見つけたもの
Q&Aでは男性の観客から、ラストの解釈について質問が挙がった。清水監督のコメントを冒頭の部分のみを紹介すると、
「椿と珠恵は同じようなところにいて、愛憎ごちゃ混ぜに感じている対象がお母さん」
「山の中で2人が出会って共鳴し合う。様々な境界線を描きたいと思った」
「珠恵はお母さんとの間に線が引けてなかった。いろんなことに囚われていて、自分の人生を歩けてないんです」

境界線をテーマにしたという清水監督。珠恵やカナがどう行動し、何を見つけたか。そしてその時の彼女たちの顔をぜひ劇場で確かめて欲しい。
シネ・ヌーヴォ、立誠シネマともに7/3(金)まで上映予定となっている。

(Report:デューイ松田)