映画『海街diary』リリー・フランキー×是枝監督 ティーチイベント
小学館「月刊フラワーズ」にて大人気連載中、吉田秋生のコミック「海街diary」を『そして父になる』の是枝裕和監督が映像化した『海街diary』が、全国にて大ヒット公開中です。
また、すでに101カ国の配給が決定、北米配給も、早々にソニー・ピクチャーズ・クラシックスに決定したことも世界的なニュースとなるなど、国内外を問わず大きな話題を集めています。
この度、本作の大ヒット公開を記念して、本作で山猫亭の店主・福田仙一役として出演しているリリー・フランキーさんと是枝監督とのティーチインイベントを実施致しました。
映画『海街diary』 ティーチインイベント概要
■日時:6月21日(日)
■場所:TOHOシネマズ六本木 SC9(港区六本木6-10-2六本木ヒルズけやき坂コンプレックス内)
■登壇者: リリー・フランキー、 是枝裕和監督
映画鑑賞後のお客様からの質問に答える、是枝監督作品恒例のトークイベント。
今回のゲストはリリー・フランキーさん。会場はお二人のお話を聞こうと満席となりました。
リリーさんから本作の感想が語られた後、お客さんとのティーチインがスタート。
しかし、リリーさん本人も監督に聞きたかったことが多かったようで、質問の半分はリリーさんから寄せられました。リリーさんの軽妙なトークに笑いが起こったりするなど、映画同様、穏やかな空気感に包まれたイベントとなりました。
<トーク内容>
リリーさん:僕が四姉妹の誰かだったらよかったのに、映画の余韻を崩すようなこんなオヤジが来てすみません。
はじめてこの映画を観たとき、犯人は誰だ!とかがあるわけでなく、言ってしまえば何も起こらないんだけど、なんだかジーンときてしまうところが随所にあって、何気ない場面で泣いてしまいました。
穏やかな空気が途切れることなくいつまでも続く作品だなと感じましたね。
お客さんからのQ:今日で三回目の鑑賞です。四姉妹や四季折々が映し出される映像がとても美しくてずっと観ていたくなるような映画でした。リリーさんは多方面でご活躍されていますが、監督から観た俳優としてのリリーさんの魅力はなんですか?
是枝監督:橋口亮輔監督の『ぐるりのこと。』の現場でお見かけしたのが最初で、前作の『そして父になる』できちんとご一緒させていただいたんですが、リリーさんはなんにもしないでもその存在だけで成立しちゃう人なんですよね。
それってすごい難しいことで、役者さんにしてみればなんだよ!って思ってしまうことなんだけど(笑)
演出家にとっては、身を乗り出してその人のことを探りたくなる。そんな役者さんですね。
リリーさんからのQ:原作があるものを映画化することの難しさってあるんですか?
是枝監督:やりにくいし、最初は苦労しましたね。僕は元々原作が好きだったんですけど、この原作の何が好きなんだろう、原作者の吉田さんは何を思ってこの場面を描いたんだろうとかたくさん考えました。
こんなに人の作品を読み解くこともないので、大変だったけど楽しかったです。
リリーさんからのQ:僕は映画の冒頭のシーンもしかり、なんだかエッチな映画を観てしまったなと感じたんですよ。
男性はきっと思ったはずですよ!四季の移り代わりを長澤まさみの身体で表現しているんですよ!
是枝監督:あはは(笑)この映画の中には“死”が漂っていて、葬式のシーンが三度も出てくるんですよね。
四姉妹の中でも長澤さん演じる佳乃は“生”の役割を担っているんです。原作でも佳乃の部屋って出てこなかったと思うんだけど、それって佳乃の居場所はあの家ではなくて、誰か男性の隣だからなんですよね。そういった生々しい生命力を感じさせる役目だから長澤さんには最初から、すみませんがエロス担当でお願いしますとお願いしていました。
リリーさん:喪服とか普段着もピチっとしていて、計画的にエッチな気分にさせてるのかと思ってましたよ!
是枝監督:衣装といえば、喪服ひとつとっても四姉妹それぞれ着こなし方が違うんですよね。
服装から彼女たちの性格がよく表れている。今回衣装を担当してくれたスタイリストの伊藤さんから、彼女たちの下着から決めさせてくれって言われたのには驚きましたね。
リリーさん:それはとても興味がありますね・・・僕が思うに、幸は上下色とかバラバラですね。
あとはベージュが多そう。三女はボクサータイプ。
是枝監督:あ、三女はそうですね、スポーティな感じでした(笑)次女は日本製じゃないインポートのもの。
リリーさん:わかる!すずはお腹が冷えないパンツを穿いてほしい。
リリーさん:そういえば、劇中にでてくるご飯がすごい美味しそうに見えたと思うけど、あれは本当に美味しかった。
空き時間に普通に食べてましたもんね。なんかわからないけど本当に美味しいんですよ。
是枝監督:空き時間になるとみんなご飯をもって並ぶんですよね(笑)フードスタイリストの飯島奈美さんが多めにつくっておいてくれるんですよ。飯島さんは、「美味しそうに見えて、本当に美味しい料理をつくる」
ということが心情だそうですよ。僕もいつも不思議に思うけどなぜか本当に美味しいんですよね。
お客さんからのQ:私は三姉妹なので、色々共感ポイントがありました。その中で、家の柱に姉妹たちの身長が刻まれていて、幸がすずの身長を書き込むシーンが、すずへの愛情をすごく感じて思わず泣いてしまいました。
リリーさんが本作で泣いてしまったシーンを教えていただきたいです。
リリーさん:何回か泣いてしまったんだけど、人間も街も風景もみんながすずを受け入れている感じにジワジワきたり、すずと千佳が二人でちくわカレー食べているときに千佳がすずに「いつかお父さんのこと聞かせてね」っていうんだけど、この三女が一番父親の記憶がないんだって思って、そんな何気ないところにジーンときたりしていましたね。
リリーさんからのQ:すずは台本がない演出方法だったんですよね。それはどうしてなんですか?
大竹さんや樹木さんを前にして、どんなセリフが飛んでくるか分からないとか普通の人の神経じゃ発狂しますよ!
是枝監督:最初に演出方法決めるときに、今回のようなその場で僕がセリフを伝える方法と台本を渡す方法、あと即興という3パターンを実際にやってみてもらったんだけど、すずはどれも上手だったんです。
本人に聞いたら今回の方法は他の現場では経験できなさそうだからやってみたいということで決まりました。
本人はすごく耳を使ったといっていましたね。相手の表情からどう汲み取るかよく考えていました。
リリーさん:あと思ったのが、綾瀬さんも長澤さんも夏帆さんもみんな主役をはれる女優さんなのにすずをあぶりだすような演技をしていましたね。現場でも本当に仲がよさそうで、みんながすずのことを可愛がっているなと思っていました。
是枝監督:すずももちろん素晴らしいんだけど、本当に周りが素晴らしかった。
例えば、さっき話しに出てきた柱のシーンですけど、綾瀬さんがすずの頭をそっと撫でるシーンがあるんです。
僕が指示しているわけじゃなくて、アドリブなわけですけど、あそこのシーンにすごいグッときてしまった。
やっぱり、急にさぁ撮影始めますといって、すぐにああいった親密な関係が画面の中から伝わるものではないんですよね。
現場での親密な雰囲気があってこそ滲みでてくるものなんだと思います。
リリーさん:続編つくってもいいと思うんだけど。続編ですずがすごいグレちゃってたら嫌だけど(笑)
是枝監督;そういっていただけるのは嬉しいですね。そういうずっと愛される作品であったらいいなと思います。
以上。