この度、トルコが誇る巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督作『雪の轍(わだち)』が6月27日(土)より、角川シネマ有楽町および新宿武蔵野館ほか全国順次公開する。メガホンをとったのは、これまでカンヌ国際映画祭で2度のグランプリと監督賞を手にし、そして本作では見事、第67回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドール大賞を受賞致したトルコの巨匠 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督。

トルコでは知る人ぞ知る監督ですが、これまで日本で劇場公開はされてきませんでした。
この度、『雪の轍(わだち)』公開記念としまして、東京国際映画祭でジェイラン監督作を上映してきた矢田部吉彦氏、カンヌ映画祭を毎年取材している朝日新聞の映画記者 石飛徳樹氏を招き、池袋コミュニティカレッジにて本作でいよいよ日本で作品が公開されるジェイラン監督を徹底解説頂く特別講座を行った。

【イベント実施概要】
■日時:6月19日(金)19:00〜20:30
■会場:池袋コミュニティ・カレッジ (東京都豊島区南池袋1−28−1 西武池袋本店別館8F)
■講師
矢田部吉彦氏(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)
1966年、仏・パリ生まれ。2000年より映画配給と宣伝を手がける一方で、ドキュメンタリー映画のプロデュースや、フランス映画祭の運営業務に携わる。2002年から東京国際映画祭へスタッフ入りし、2007年より同映画祭の作品選定ディレクターに就任、現在に至る。

石飛徳樹氏(朝日新聞文化部記者)
1960年、大阪市生まれ。神戸大学法学部卒業後、1984年に朝日新聞社入社。以後、校閲部、前橋支局などを経て、文化くらし報道部編集委員。主に映画を担当する。2001年のベネチア国際映画祭以降、カンヌ、
ベルリンを含めた3大映画祭を取材。

<講座レポート>
毎年カンヌの映画祭に参加している石飛氏は、「3時間越えの尺の長さに観る前はひるんだが、あっという間に時間が経ってしまった。
対話がリアルで脚本の力がもの凄い」と大絶賛。ジェイラン監督のデビュー作から観てきた矢田部氏は、「短編「繭」でデビューしてから、監督はカンヌと共に成長してきた。はじめは極めて私小説的な作品が多かったが、作品を重ねるごとに彼のテーマである“文学性”が全面化し、『雪の轍(わだち)』で彼はとうとうパルム・ドールという頂点に到達した。彼の登場が、現代のトルコ映画の快進劇を作ったと言っても過言ではない」
と力説した。
3時間16分という長尺が特徴の本作。石飛氏は「見せる技術がないと、長い映画は撮れない。観客を引っ張り続けないといけない力量が必要。

ジェイラン監督にはそれがある」と語った。また矢田部氏は「監督の作品で好きな点は、人間に対する視点。誰が善で誰が悪、という二項対立ではなくそれぞれの立場の言い分がある。その惨酷なまでにフェアな目線が『雪の轍(わだち)』でもリアルに描かれている」と話した。
さらに、今回日本劇場初公開を記念し、「トルコ映画の巨匠 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン映画祭」が9月に開催も決定し、その映画祭に先立ち、公開直後の7月8日(水)に、ジェイラン監督作品の特別上映とレクチャー、トークを合わせたプレイベントの実施も決定している。プレイベントと映画祭での上映作品で、ジェイラン監督の長編全7本が網羅できるという、またとない貴重な機会。「監督は美学を映画という場で発見できる、
世界で本当に稀な人物。彼の映画を見逃したら映画を語ってはいけないでしょう」と矢田部氏は力強くコメントした。

6月27日から公開の『雪の轍(わだち)』上映にジェイラン映画祭と、今後ますますヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督から目が離せません!