第68回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出されました、台湾が生んだ巨匠ホウ・シャオシェン監督(侯孝賢)『黒衣の刺客』が、5月21日(現地時間)昼に公式会見、同日夜に公式上映が行われました。ホウ監督は本作で7度目のコンペティション部門への出品という偉業を成し遂げています。

公式会見にはホウ監督、本作で女刺客を演じた世界的トップ女優スー・チーと『レッドクリフ』シリーズなどで知られるチャン・チェン、日本からは俳優・妻夫木聡が揃って登場。妻夫木は「初めてのカンヌ国際映画祭について」聞かれると、「まだ色々なところに行っていないので何とも言えないですが、こうして世界の方たちと一緒にいられ、とても刺激を受けます。
そして、映画祭に出るような作品に関われてとても幸せです。短い期間ですが最後まで楽しみたいと思います」と語った。

公式上映前のレッドカーペットでは、ドレスアップしたキャストや監督とともにタキシードに身を包んだ妻夫木は、終始笑顔で世界中から集まったファン、多数のメディアの歓声に応えた。ホウ監督の8年ぶりの新作とあり、会場となったリュミエール劇場は2,300人以上が押しかけ超満員。上映後は盛大な拍手が贈られ、5分以上にも及ぶスタンディングオーベーションで熱狂的にカンヌに受け入れられた。公式上映で初めて本作を鑑賞した妻夫木は「すごく好きな映画だと思いました。映像が美しくて、撮影中に何度もロケハンをして、何度も粘って撮り直しをしていたホウ監督は、やはりすごいと改めて感動しました」とコメント。

ホウ監督、妻夫木で行われた2ショット取材では、7,8年前に韓国の釜山映画祭で会ったのがきっかけだったと明かし、その時の妻夫木の印象を「非常に魅力的で、陽射しのある、親切そうな青年だと思いました。それで今回キャスティングしようと思った」と語ったホウ監督。
「まさかオファーがくるなんて!と、初めは嘘かと疑いました(笑)。ホウ監督は気さくで、役者の人間性を役に反映させている。月並みな表現ですが、本当に新鮮で刺激的でした」と妻夫木も返した。唐代の中国を舞台にした時代劇で遣唐使船の日本青年を演じた妻夫木は役柄について「私の役は、スー・チー演じる主人公が”光と影”の”影”だとしたら、自分の役は”光”だと思い演じました」「ホウ監督の作品は理屈ではなく、ふとした時に感じる、なにか分からないけれどこの人と一緒にいたいとか、そういう人間の言葉や物事だけで説明できない感覚、そういう間柄(スー・チーとの役柄の関係)でいてほしいんだと解釈して演じてました。とても心地よい感じがありましたね」。またホウ監督は「昔から日本の侍映画がとにかく大好きで、勝新太郎の『座頭市』は全部観ました。日本のチャンバラは中国のアクションとは違う。飛んだり跳ねたりしない。そのリアルさを表したかった」と日本映画への愛を語った。

本作は、この秋に日本全国公開されることが決定しており、日本でも多くのファンがいるホウ監督の最新作として公開が待ち望まれている。
出演には、『ミレニアム・マンボ』(2001)などホウ監督のミューズ、スー・チーが、運命に翻弄されながらも力強く生きてゆく女刺客・隱娘を演じ、アクションにも挑戦。隱娘の標的となる暴君には、『レッド・クリフ』シリーズで知られ、『百年恋歌』に続きホウ監督とタッグを組んだチャン・チェン。
そして、窮地に追い込まれた隱娘を助ける日本青年を妻夫木聡が演じています。