公開に先立ち、学生の労働相談に応じているブラックバイトユニオン主催で「『サンドラの週末』を通し、学生が考える労働問題」と題した特別試写会つきシンポジウムを行いました。

シンポジウムには、ブラックバイトユニオンの渡辺寛人さん(学生)、労働問題をテーマに政策立案コンテストを企画運営したGEIL2014の中谷和馬さん(学生)、NPO法人POSSEの坂倉昇平さんらが登壇。
映画を鑑賞し終えた客席の学生約20名らからも意見がでる充実したシンポジウムとなりました。

【『サンドラの週末』試写会付シンポジウム概要】
■5月20日(水)18:00開場 / 18:30開映 / シンポジウム開始20:05〜21:00
■場所: 北沢タウンホール3F ミーティングルーム (世田谷区北沢2丁目8−18)
■登壇者:渡辺寛人(ブラックバイトユニオン)中谷和馬(政策立案コンテストGEIL2014)坂倉昇平(NPO法人POSSE)

【シンポジウム内容】
社会問題にもなっている「ブラックバイト」。残業代の未払いや、シフトの強要など…学業に支障をきたすほどの環境で
声をあげられずにいる学生の相談にのっているブラックバイトユニオン。これから社会に出る学生に向けて、労働問題について知ってほしい、と
今回ブラックバイトユニオン主催の特別試写会付シンポジウムが開催された。

◆ブラックバイトユニオン 渡辺寛人さん(学生)
「労働問題を扱ったベルギー映画『サンドラの週末』のことを知り、その内容に、いま私たちが向き合っている現実が重なりました。
ブラックバイトは『サンドラの週末』の主人公とは違った労働問題ですが、悩んでいる相談者の方々は不当な扱いを受けても、
病み上がりのサンドラのように“仕方ない、自分にも責任がある”と思っている人が多くいます。でも、実際は彼らに問題があることはほとんどありません。
また、作品を観ていて私が一番共感したのは、実はサンドラの夫・マニュでした。私たちは、マニュがサンドラを支え、奮い立たせていたように、
「あなたは間違っていない、正しい」と相談者の味方になり一緒に問題を解決していけるように話を聞きます。
実際、マニュのような存在がいることで、はじめて行動を起こせる人は多いんです。
劇中ではこうしてサンドラが行動を起こすことで、サンドラだけでなく同僚、そして職場全体が「労働」について考えるようになっていきます。
このように、まずは行動を起こすことが大切だと思います。私はこの作品から、行動は、仲間を生み、連帯を生み、
変化を起こすことができるかもしれない、という希望を感じることができました。」と話した。

◆労働問題をテーマに政策立案コンテストを企画運営したGEIL2014の中谷和馬さん(学生)
「労働問題を解決するうえで政策や制度は大切ですが、統計やデータをもとに策を打つのでは、
そこから漏れてしまう人々が出てきてしまうと思います。この映画のように1人1人の問題に目を向けることが大切なのではないでしょうか。
また、現代は自分のポジションからしか物事を考えない人が多いとも思います。『サンドラの週末』の主人公の視点から見るだけではなく、
経営者だったら、同僚だったら…そして、自分だったらどうするだろうと考えることも大切なのではないでしょうか。
私はこのシンポジウムをきっかけにブラックバイトユニオンという団体を知りました。
今回のイベントは、学生にもこのような団体があると知ってもらえた、いいきっかけになったと思います。」と話した。

◆労働問題の相談を受けているNPO法人POSSEの坂倉昇平さん
「この作品で興味深いと思ったのは、敢えて労働組合もない小さな会社が舞台となっていることです。
サンドラが夫と協力し、そして同僚の元を訪れて協力者を見つけるという行動は、労働組合の発端となるものだと思います。
私たちの元に訪れる相談者の方の中には、闘うのに引け目を感じ、諦めて会社を辞めることを考える人もいます。
でも相談にのるうち、ただ辞めるのではなく後輩や同僚のためと、問題を解決して辞めようと心境に変化がでる方がたくさんいます。
一人の雇用を守ることが引いてはみんなの為になる、ということを感じたときに現状を変えようと思えるのではないでしょうか。
サンドラがそうであったように、これは、国境なく日本、ベルギーでも同じことなのだと思います。
自分のため、そして誰かのためにと一歩を踏み出すことが大切なのだと思います」と話した。

◆参加者学生からの感想
「とても考えさせられる映画でおもしろかった。それを今の身の回りに起きていることブラックバイトとつなげて考えるきっかけをもてて、
より深く映画を自分にとりこめた気がする。」「アルバイトをしている際に、おかしいと思う自分がおかしいのではないか、と感じることがあった。
声を上げると他の誰かに迷惑がかかるし、職場をかき回すことにとても罪悪感があってそれでも変えようと言う本人は
なかなか体力がいるんだよなと思ったことを思い出した。」「サンドラの姿をみて、シフトの強要をされ、
代わりを見つけるために他の人にお願いをしに回ったことを思い出した。」などの感想や意見も飛出し、白熱したイベントとなりました。

以上