「バイオレンス=“大阪の石原”というブランドにしたい」映画『コントロール・オブ・バイオレンス』第七藝術劇場にて石原貴洋監督、4/25初日舞台挨拶!
4/25(土)、十三・第七藝術劇場にて石原貴洋監督『コントロール・オブ・バイオレンス』が公開された。
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2012・オフシアターコンペティション部門にて『大阪外道』でグランプリを受賞した石原監督。前年度の同映画祭、北海道知事賞受賞の『バイオレンスPM』からのステップアップだった。
そして2013年に『大阪蛇道』、今年は『コントロール・オブ・バイオレンス』とコンスタントに作品を制作し、この度石原貴洋監督特集<大阪バイオレンス、4番勝負!!>として、4/25(土)〜5/22(金)の日程で第七藝術劇場にて上映の運びとなった。
劇場初公開となる『コントロール・オブ・バイオレンス』は、人間の暴力性に迫った、チンピラVSヤクザVS合田ギョウザ工場社長(山中アラタ)の三つ巴の抗争映画。前科30犯・通称“サブゼロ”(渋川清彦)率いるチンピラ集団が仁義もクソもない戦法でヤクザのシマの乗っ取りを企み、大阪・激戦区に乗り込んできた。ヤクザも恐れる謎の人物“能面”がうろつく中、激化する抗争にギョウザ工場長が巻き込まれ、物語はカオスへと突入していく。
公開初日舞台挨拶に登壇したのは石原貴洋監督 、プロデューサーの林海象さん、 出演の山中アラタさん、屋敷紘子さん。
●ベテラン監督と特攻服監督の出会い
『大阪外道』から石原作品のプロデューサーを務めるのが、『私立探偵濱マイク』シリーズ、最新作『彌勒MIROKU』の監督・林海象さん。石原監督との出会いは2011年、審査員として参加したゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオープニングパーティでのことだったと言う。
「一人だけ浮いてる奴がいたの。特攻服着て、サングラスでたった1人で片隅にいる訳。俺は馴染まないぞって感じで。行って、パァンって蹴ったんですよ。“アホかお前。何、気どってんねん”。そこから仲良くなった(笑)」
そんな気さくなベテラン監督を石原監督は“縁起のいいおっちゃん”と呼ぶ。脚本からキャスティングまで自分でこなす石原監督のスタイルに、林さんは編集段階でご意見番として全体を見る。強面な外見とは裏腹に指摘は素直に受け入れるという石原監督。関わると何かといいことがあると石原監督が言うとおり、『大阪外道』はグランプリを受賞となった。
最新作『コントロール・オブ・バイオレンス』ではエンディングロールに“守護神・林海象”とクレジットされるのが、深い絆を感じさせる。
●石原流キャスティングのヒミツ
石原作品の質感を支えるキャスティングセンスは今回も十分に発揮されている。主人公・元ヤクザでギョウザ工場社長の合田の恩人の娘で微妙な関係にあるマコトを演じた屋敷紘子さん。本作品で数少ない女性の出演者として繊細かつ大胆な演技を見せる。西村喜廣監督『忍者虎影』(’15・6月公開)、園子温監督『リアル鬼ごっこ』(’15・7月公開)、石井隆監督『GONINサーガ』(’15・秋公開)と出演作の公開が続く。
「監督はゆうばりでお見かけしたんですが、その時は白の特攻服で。絶対仲良くなれないと思って(笑)」
そんな屋敷さんと石原監督を引き合わせたのが『大阪蛇道』の主演を務めた坂口拓さんだったという。
「アクションも演技も出来るから、この子良いよ!と拓さんから紹介されて」
その後、檀密主演・石井隆監督『甘い鞭』に出演した屋敷さんを観た石原監督。
「女王役の演技がめちゃくちゃ良くて、出てくれ!って(笑)」
本作で主演を務める山中アラタさん。山口雄大監督『極道兵器』で丸坊主の政府要人役を観た石原監督が、
「この人いける!」と惚れ込んでキャスティングした。その時の印象を生かそうと、
「アラタさんはハゲやろうと」
「ハゲと坊主は違いますよ。(笑)」とすかさず突っ込みを入れるアラタさん
「ギョウザのおっさんでもあるけど、怒らせたら一番危ねえという。演技力が問われる訳なんです。僕の映画は怖い兄ちゃんを一杯使っているもので」
プロの役者の魅力に加え、石原作品を彩るヤクザやチンピラたち役の異様な迫力がある兄ちゃん達。彼らが何者のどういう人かは…石原映画工場の企業秘密とのこと。
「刺青入ってたら、イイね、出てって(笑)」と言う石原監督に、
「刺青入ってる人が来たら目がキラキラしてね(笑)」とアラタさん。
総天然色顔面図鑑とも言える石原作品中で、アラタさんは大らかさの中に暴力的な本能を秘めたギョウザ工場長・合田を魅力的に演じている。
●映画は庶民の代弁者でなくてはならない
石原監督は、ラーメン屋の副店長を長く務めながら映画を撮り続けて来た。現在は映画1本になったというが、本作のストーリーもそんな経験から発想があったようだ。
「チンピラとヤクザやったらありきたり。そこにギョウザのおっさんが巻き込まれるからおもしろい。ギョウザのおっさん舐めんなと。いちラーメン屋の定員として頑張っとった僕からしたら、怒らせたら怖い奴はいるよと」
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でグランプリ取った後、石原監督から林海象さんに電話が入ったと言う。
「ラーメン屋辞めたいと。俺は怒るわけですよ。お前はラーメン屋で映画人になってるから価値がある。それからラーメン屋取ったら何の価値もない。ただのチンピラだと」
「あらゆる人が映画を作ってもいいし、あらゆる人が映画に出てもいいじゃないですか。石原はそれを実践している。
映画って代弁者でないといけない。弱い人が強い奴をやっつけるのがいいじゃん」
と石原作品の存在意義を語った。
●石原ブランドを確立したい
バイオレンス映画を手掛けるまでは、大阪府大東市を拠点に子供映画を撮り続けて来た石原監督。強面のヤクザやチンピラと共に、子供達のイキイキした描写も石原作品の特徴だったが、今回は子供が登場しない。
「今回自分の中で新しい領域に踏み込もうと思って。白黒で雰囲気を香港ノワールみたいにしたいというのがありまして。自分の得意なタマだけ投げてもつまらんので、禁じ手にした方が新しいものが出るかなと、子供を出すのやめたんです」
大阪へのこだわりについて屋敷さんから 「今後も大阪に石原ありって活動していくんですよね。大阪を出る予定はないんですか?」と質問が。
「絶対出ないっていう気はないんですけど、ここまできたら大阪に居続けた方がおもしろいかなって。
大阪って言えば石原。バイオレンスって言えば大阪の石原だってブランドになったら面白いなって思い始めて。自分から安売りするのではなく、呼ばれる側になったら面白いなと」
本作はキングレコードから「大阪の石原くんらしいバイオレンスを作って欲しい」と熱いオファーを受けての制作となったという。
今回の特集上映では、5/9から『大阪蛇道』、続いて5/16から5/22まで『大阪外道』『バイオレンスPM』が登場する。『大阪蛇道』について石原監督は、
「“家族愛”がテーマでまた違う作風。幸せとは何ぞやみたいな。暴力映画ですけどそんな真っ当なテーマで(笑)」
と語る。『大阪蛇道』『大阪外道』についてアラタさんは、
「暴力シーンやアクションシーンは物語のいちエッセンスでしかない2作品、という印象を僕は持っていますけどね」
バイオレンスと共に描かれる家族や子供の姿が作品の中心にあると言う。
そんな石原作品の魅力をこの4本の特集上映で体感して欲しい。
(Report:デューイ松田)