この度、本作の公開に先駆けて早稲田大学戸山キャンパスからほど近い早稲田奉仕園にて松尾スズキ監督を迎えて上映会・学生たちとのトークセッションを実施いたしました。

お金とさらばして田舎暮らしをしようとするタケ(松田龍平)がどう生き延びていくのか?
“お金が必要だ”という常識を覆して生きていく術とは??
常識を逆手にとって、リアルともファンタジーともつかない世界を見事なエンタテインメントに昇華させた松尾スズキが、映画鑑賞後の学生の質問・疑問に本音で答え大盛り上がりとなりました。

●映画『ジヌよさらば〜かむろば村へ〜』大学生向けトークセッション概要●
【日時】3月30日(月)
【場所】早稲田奉仕園内 スコットホール
(東京都新宿区西早稲田)
【マスコミ受付場所】スコットホール正面入口

【登壇者】 松尾スズキ(監督、脚本、出演)
主催:早稲田大学広告研究会 協力:キノフィルムズ

MC:本日は映画『ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜』監督・脚本・出演の松尾スズキさんをお迎えして、4月4日(土)より公開の映画『ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜』のお話はもとより、人生の大先輩として型にハマらない生き方や、人生のアドバイスをいただけるQ&Aのお時間も設けていますので、皆さんどんどん質問してください。

早速お呼びしましょう。松尾スズキさんです。
色々とお伺いしていきたいと思います。

まず、本作で監督をつとめられることとなった理由をお教え下さい。

松尾スズキ監督:もともといがらしみきおさんの大ファンであったこと、不思議なことが起こった後にリアルなことが起こるという世界観にシンパシーを感じたことが大きな理由です。

MC:原作にある笑いのネタは映画化にあたってどのようにアレンジしましたか?

松尾監督:原作では間を含めて、緻密につくられているので原作のテイストを壊さないように気を付けました。

MC:松田龍平さんをキャスティングした理由をお聞かせください。

松尾監督:コメディを二枚目半の俳優さんに演じてもらっても、なんだか安っぽくなってしまう気がして、普段はあまり笑いをやらない人に頼もうと思ったら、松田さんが思い浮かんで、(『恋の門』よりも)10年ぶりというのも悪くないなと思いました。10年たって、居るだけで画をもたせる雰囲気と色気が出ましたね。
ユーモラスな芝居も良くて、結果的にバランスがとれていたと思います。
生まれ持った独特の味は普通の人では出せないですよね。

MC:ご自身が俳優としても出演されていますが、いかがでしたか?

松尾監督:監督の意図を全て理解しているので、使い勝手の良い俳優です(笑)。

Q:演技指導はどのようにされましたか?

松尾監督:キャラクターは各役者さんが持ってきたアイデアを表現してくれているところが多いですが、動きを付けた方が分かりやすい芝居は実際に演じてみました。

MC:本作で3本目の監督作となりましたが、本作が持つ意味はありますか?

松尾監督:3作目というのは節目のような気がします。
前2作は自分発信の企画でしたが、今回は依頼されたお仕事だったので監督としてプロの仕事ができたなと自負しています。

MC:“ジヌ”(お金)恐怖症のタケ(松田龍平)が主人公ですが、監督自身お金についてはどのようなお考えをお持ちですか?

松尾監督:お金は大事ですよね(笑)。若いころは貧乏だった時期もありますし、お金で大変なことになってしまう人が周りに居たりもするので、諸刃の剣だと思います。

MC:監督の大学生活はどんな感じでしたか?

松尾監督:既に芝居をやっていて、デザイン科だったので地味な課題がたくさんあったと思います。バイトは新幹線の売り子や、ぬいぐるみショーの中の人などやっていました。

MC:一度就職されてから会社を辞められて本格的に演劇の道に進まれていますが不安ではありませんでしたか?

松尾監督:景気の良い時代で、アルバイトならたくさんあったからなんとかなるかだろうと暗い気持ちにはならなかったです。
劇団で食べていけなければ、野垂れ死にだなとは思っていました(笑)。

MC:映画監督から、舞台、俳優と多岐に渡って活躍されていますが、松尾監督を仕事に突き動かすものは何ですか?

松尾監督:背水の陣で臨むという覚悟ですかね。
安定しているものでもないので、仕事をいただくと、入れすぎてしまい余裕が無くなりがちです……。

MC:主人公のタケは劇中で壁にぶつかりながらも周囲に助けられて乗り越えていきます。監督は辛いことをどのように乗り越えていきますか?

松尾監督:壁となるものを黒い塊に見立てて自分の中から排除するイメージトレーニングをします。あとは、お酒との合わせ技ですね(笑)。

MC:それでは会場の皆様から質問を受け付けたいと思います。

※以下会場の学生からの質問

Q:劇中で東北地方の方言は使用されますが、通常のセリフと異なる書き方をするのですか?

松尾監督:文語と口語の違いがあるので、言葉を聞いて意味が通じるようにと計算しました。
「あまちゃん」があったので日本の皆さんが東北の方言に慣れていてくれているんじゃないかと期待しています(笑)。

Q:今一番やりたいことや、夢はありますか?

松尾監督:映画でやりたいことはあるんですが、まだ言えません(笑)。
TVの演出とかあまりやったことが無いのでやってみたいですね。
アニメとか通販番組とか(笑)。

Q:映画とお芝居で演出の違いはありますか?

松尾監督:映画はFIXされてコンプリートされていくものなので最終的に監督のものという感じがありますが、芝居は演技の放流で、瞬間的に消えていく儚さがあるのでそこを意識しています。

Q:タイトなスケジュールのロケ現場での元気の源は何ですか?

松尾監督:撮影しなければならないところを撮りこぼしたらどうなってしまうのだろうという使命感と責任感で乗り切っています。

MC:ありがとうございます。それでは最後に松尾監督からこれから社会に出ていく学生たちに人生についてのアドバイスをいただきたいと思います。

松尾監督:ブラブラしていて不安な日々もありましたが、どこかに着地するだろう、落としどころがやってくるだろうと思っていました。
着地点は絶えず動いているので、人生必ずしも思った通りにならなくても何とかなると思っていれば、不意の出来事にも対応できると思います。
頑張ってください。