ソーシャルワーカー、ダン・コーエンがiPodとヘッドホンを使い、認知症患者に思い入れのある曲を聴いてもらい、失われた記憶を呼び戻すという実験を3年に渡って追った音楽療法ドキュメンタリー映画『パーソナル・ソング』が現在全国順次公開中です。スピルバーク監督、トム・ハンクスも見て絶賛したという注目の一作です。
この度、音楽評論家のピーター・バラカン氏をゲストに迎え、アメリカの音楽文化が高齢者にいかに影響を与え続けているかを解説していただきました。さらに現役の音楽療法士の加藤美知子先生に日本での音楽療法の効果や今後の課題について語って頂きました。

『パーソナル・ソング』公開記念トークショー レポート
◆実施日:12月18日(木)   ◆会場:シアター・イメージフォーラム (東京都渋谷区渋谷2−10−2)
◆登壇者:ピーター・バラカンさん(音楽評論家)×加藤美知子さん(音楽療法士)

Q:本作のご感想は?

バラカン「ラジオの仕事を通じて常に音楽のはなしをするときにマジックという言葉を使うんですが、この映画をみてまさにマジックだなと思いました。音楽の力は絶大ですね。そのことを改めて実感しました。」
加藤「私は音楽療法士なので、日々現場で音楽療法を行っている中で、この映画のなかにでてくるような劇的な反応はあまりみられないですが、ちょっと音楽を聴いただけで、歌詞の一部を読んだだけで自然と体が動いたりします。こういった音楽に対する反応は、年齢に関係なく、若い方から100歳をこえている方に色々な反応がみられ、毎日感じています。」
映画で印象的だったのは、音楽の効果っていうのはすごくあるんですけど、忘れてはいけないのは、音楽を聴いているときに、必ずそばに人がいて、語りかけて感想をきいたり、一緒に踊ったりすることがとても重要、ただただヘッドフォンと音楽を渡して聴かせておけばいいわけでは、ないのです。映画のなかでは、この人が介在していることが、あまり語られていなかったのですが、実はとても大切な事なのです。

Q:日本の音楽療法の現状について

加藤「認知症の方たちが450万人、予備軍が400万人と言われていて、そういう膨大な数に対して、音楽療法士に対して音楽療法学会が認定を出しているのですが、日本に音楽療法士は2600人位しかいない状況なので、まだまだ数が少ないですし、音楽療法自体も世間に知られていないですよね。 音楽の不思議な力、愛そういったものでいい方向になるのかなという想像が多いのですが、音楽療法士は音楽のどの部分が大事で、どういう風に人に影響を与え、どこに訴えかけてるのかな、ということを考えながら実践しています。こういった人たちが増えては来てますが、全国的には少ないです。でもこれからどんどん増えていかなくてはいけない仕事だと思います。
認知症には重くなってからでも音楽療法は効果はありますが、予防として元気なうちにいっぱい音楽を使ってなるべく、健やかな生活を送っていくということが大事で、そこで音楽ができる役割はとても多いと思います。
Q:予防とは?知的なトレーニングでワークシートでやったり、音楽にあわせて体を動かしたりとか、音楽を通して人と話したりとか。ほっておくと話さなくなってしまいますよね、そういう方たちが地域で集まって話したりするきっかけに音楽があったりとか。

楽しみがあることで生活にはりがでてきて、人がいきいきして長く健康に生きるコツだと思います。
もちろん音楽でなくてもいいんですけど、音楽だと聞くだけでも自分で奏でたりするのでも色々なやり方があるので良いと思います。

バラカン「アルツハイマー病に関するアメリカのニュース記事を読んでいて、後2、30年の間にアルツハイマー病の患者数がものすごく増える見込みだと述べられていたんです。きっと患者数が増えると薬代のことも大きな問題になってきますよね。そうなると、あまりお金がかからず、ある程度効果があって、治るといことはなくてもその人が楽める時間ができるならこういった音楽療法をやった方がいいなと映画を観て思いました。」
加藤「重いアルツハイマー病の人たちも音楽に反応されるということは、元気な70代、80代、90代、の人たちが少し意識を持って、音楽を使えばすごく効果があると思います。治る、治らないというよりは、予防、そしてなったとしても進行を緩やかにする、その人らしさを音楽が助けると考えて欲しいです。
そういうその人らしさを音楽でとりもどしたりはできるので、是非試してほしい。」
バラカン「“好きな音楽”というのがポイントですよね。ぼくも次にお母さんに会いに行くときは彼女の好きな曲を聴かせようと思ってます。みなさん、ご両親がお元気なうちに好きな曲をきいておくのがいいですね。」
加藤「あと嫌いな音楽も知っておくことも大事ですね。個人個人で色々な思いがあるので、今からそういう音楽のお話をしてメモしていきましょう」

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