●審査員賞は新旧の天才監督、ジャン=リュック・ゴダールとグザヴィエ・ドランの同時受賞!

 各賞の発表で会場が一番どよめいたのは、83歳の老練監督ジャン=リュック・ゴダールと25歳の気鋭監督グザヴィエ・ドランが賞を分けあった審査員賞である。21日(水)が正式上映日だった『グッドバイ・トゥ・ランゲージ』だが、ジャン=リュック・ゴダール監督がカンヌ入りしていないため、プロデューサーのアラン・サルドが代理で賞を受け取った。ゴダール監督にとって、本作がカンヌでの初受賞作となるのだが、正直言って“何をいまさら”感は否めないだろう。一方、22日(木)に正式上映されたグザヴィエ・ドラン監督の『マミー』は、もっと高位の賞が相応しいと思える傑作だった。
 授賞式で「僕は審査員の皆さんの心の広さに対する感謝の気持ちで動転しています。皆さんのおかげで、この職業が愛し愛される仕事であることを実感しました。これは想像上の愛のお返しのようなものです」と興奮ぎみに謝意を述べたグザヴィエ・ドラン監督は、審査委員長のジェーン・カンピオン監督がパルムドールに輝いた『ピアノ・レッスン』に多大な影響を受けたこと、そして彼女の“女性の描写”の仕方に対する敬意を熱っぽくスポーチ。受賞者会見では、賞を分けあったことについて「世代は違っても映画の自由な表現を探るという点で僕たちがやろうとしていることは同じだと思います。この受賞が映画の再考に励んできた伝説的なゴダール監督と僕を結び付けてくれて光栄だし、とても嬉しいですね」とコメントした。


●脚本賞は、ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ&オレグ・ネギンが『リヴァイアサン』で受賞!

 コンペ出品作の掉尾を飾り、23日(金)に正式上映された『リヴァイアサン』は、ある一家のカタストロフィを描いた力作で、脚本は監督のアンドレイ・ズビャギンツェフと脚本家のオレグ・ネギンが共同執筆した。アンドレイ・ズビャギンツェフ監督は授賞式で「審査員団、ティエリー・フレモー、ジル・ジャコブ、そしてこの作品を愛してくれた方々にお礼申し上げます。プロデューサー、友人たちにも感謝します」と述べ、「この賞を受け取るべきはオレグ・ネギンです。彼がこの作品の真の脚本家なのですから」と朋友を思いやった。また、受賞者会見でも「非常に喜ばしい受賞なのですが、今夜、この作品の脚本を共同で執筆したオレグ・ネギンが、この場に不在なのが残念でなりません。現在もう一つの作品が進行していて、すぐに取り掛かる予定なんです」とコメント。


●女優賞は『マップス・トゥ・ザ・スター』で、あけすけな蓮っ葉女優を巧演したジュリアン・ムーアが獲得!

 19日(月)に正式上映されたデヴィッド・クローネンバーグ監督の『マップス・トゥ・ザ・スター』はハリウッド・セレブたちの精神的不安が引き起こす狂騒を描いたブラックな群像劇で、女優賞を獲得したジュリアン・ムーアは、性悪な落ち目女優を巧みに演じている。今回の受賞により、ジュリアン・ムーアは3大映画祭の女優賞の制覇(2002年の『エデンより彼方に』でヴェネチア国際映画祭女優賞を、2003年の『めぐりあう時間たち』でベルリン国際映画祭女優賞を受賞)を達成! これは、2010年にジュリエット・ビノシュがカンヌで達成して以来、史上2人目の快挙なのだが、ジュリアン・ムーアは既に帰国の途についていたため、『マップス・トゥ・ザ・スター』の脚本家であるブルース・ワグナーが代理で賞を受け取った。


●男優賞は、『ミスター・ターナー』でタイトルロールを重厚に演じたティモシー・スポールが受賞!

 男優賞は、15日(木)に正式上映されたマイク・リー監督による伝記映画『ミスター・ターナー』に主演した英国俳優のティモシー・スポールが獲得した。彼はマイク・リー監督作の常連俳優として知られているが、ハリウッド映画にも顔を出す実力派の性格俳優だ。『ミスター・ターナー』が33年来の仲であるマイク・リーとの7度目のコラボ作となったティモシー・スポールは、授賞式でマイク・リー監督に謝意を述べ、『秘密と嘘』がパルムドールを受賞した時、白血病と闘っていたため、授賞式には出席できなかった旨を明かし、今も生きていられることを神に感謝した。
 また、受賞者会見に登壇したティモシー・スポールは、今回の受賞について「とても信じ難く、16歳の少年のように唖然としています。私は自分のキャリアに期待せず脇役を演じるのに慣れていたからです。この主役は私が最も尊敬する監督からの指名でしたので、とても誇りに思います」と喜びを語った。
(記事構成:Y. KIKKA)