それでは、長編コンペティション部門の受賞作と受賞者のコメントをかいつまんで紹介!
 

◆満を持しての最高賞パルムドール受賞となったトルコ映画『ウィンター・スリープ』

 〈カンヌ国際映画祭便り6〉で既にお伝えした通り、映画祭序盤の16日(金)に正式上映された『ウィンター・スリープ』は、トルコ映画界を牽引する実力派監督ヌリ・ビルゲ・ジェイランが、名勝カッパドキアに建つ小さなホテルを舞台にして描いた家族の愛憎ドラマで、トルコのイスラム社会が抱える矛盾をはらませた究極の会話劇。奇しくも昨年に続き、出品作品のなかで一番上映時間の長い作品がカンヌを制することになった。
 ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督は、プレゼンターであるクエンティン・タランティーノとユマ・サーマンから楯を手渡されると「本当に驚きです。トルコ映画100周年という記念イヤーに、この賞をいただけたのは幸せな偶然ですね」と受賞の喜びをあふれさせると同時に「トルコの反政府デモで命を落とした若者たちに、この賞を捧げます」とコメント。
 その後の受賞会見では「僕は万年第2位なんだと思っていたので、受賞は意外でした。1位と2位では全然違いますね。最高に嬉しいです。この作品の脚本は小説を書くがごとく執筆していったんですが、後になってからそれが長すぎたと気づいた次第です」と笑った。


◆次点のグランプリはイタリアの気鋭女性監督アリーチェ・ロルヴァケル監督の『ザ・ワンダーズ』が受賞!

 グランプリをサプライズ受賞した『ザ・ワンダーズ』は、映画祭中盤の18日(日)が正式上映日だった家族ドラマで、ドキュメンタリー的手法と繊細な視点が評価された形となった。授賞式で自国の大女優ソフィア・ローレンから賞を手渡されたアリーチェ・ロルヴァケル監督は、家族や映画製作に携わった人々、そして映画祭ディレクターのティエリー・フレモーに謝意を述べた後、顔を上気させながらソフィア・ローレンへのリスペクトを表明。
 その後、受賞者会見に臨んだアリーチェ・ロルヴァケル監督は「コンペに選出されたことだけでも驚きだったのに、賞までいただけるなんて……。製作チームの皆を思うと、嬉しい限りで、感極まっています。全ての関係者に感謝したいです。撮影中、本当に多くの人が蜂に刺されていましたから」とコメント。


◆監督賞は、『フォックスキャッチャー』を手掛けたアメリカの俊英ベネット・ミラーが獲得!

 19日(月)に正式上映された『フォックスキャッチャー』は、有名な億万長者が実際に起こした殺人事件を映画化し、人間の心の闇に迫ったベネット・ミラー監督の渾身作で、カンヌ初登場にしての栄冠となった。授賞式で「カンヌでのこの1週間は特別なものでした。 ジェーン・カンピオンを始めとする審査員団、そしてティエリー・フレモーとジル・ジャコブに深く感謝申し上げます。この賞を俳優の皆さんに捧げます。自分を信頼してくれる人たちがいるというのは素晴らしいことです。本当に満足しています」と述べたベネット・ミラー監督は、会見では「この作品を作り始めてからこの賞を受賞するまで8年の年月が流れました。この映画は、つい3週間前に製作し終えたばかりなんです」とコメント。さらには「スティーブ・キャレルは注目すべき俳優であり男性です。この役を受けることは彼にとって勇気のいる行動でした。彼が人を殺すなんて思えないですからね」と讃えた。
(記事構成:Y. KIKKA)