素晴らしい快晴となった映画祭11日目の24日(土)。18時55分から行われた授賞式セレモニーの後、閉幕作品であるセルジオ・レオーネ監督の『荒野の用心棒』50周年記念修復版が上映された。“シネマ・ドゥ・ラ・プラージュ”部門は『パープル・レイン』(1984年)が掉尾を飾っている。また、併行部門の“批評家週間”も本日で閉幕。


◆ランベール・ウィルソンが司会を務めたクロージング・セレモニーには、華やかな顔ぶれのプレゼンターが登場!

 オープニング・セレモニーと同様、フランスの人気男優ランベール・ウィルソンが司会を務めたクロージング・セレモニーには、華やかな顔ぶれのプレゼンターが登場し、正装で身を固めた観客たちを魅了した。
 “短編コンペティション”部門のプレゼンターは中国の歌手&女優のリー・ユーチュンで、この部門と学生映画を対象とする“シネフォンダシヨン”部門の審査委員長を務めたイランの映画監督アッバス・キアロスタミ(1997年の『桜桃の味』でパルムドールを受賞!)とともに登壇。新人監督賞の“カメラドール”は、審査委員長のニコール・ガルシア(フランスの女優&監督)が、今回でカンヌ映画祭の会長を引退するジル・ジャコブを伴って登場し、受賞者を発表した。
 1978年の総代表就任後、ある視点部門、カメラドール、シネフォンダシヨン部門を創設し、2001年からは会長職に就き、長年カンヌ映画祭を牽引して来たジャコブ会長は「私が一番実現したかったのは新人監督賞を創設し、将来の映画人と将来の映画を支援することでした」と挨拶。満場のスタンディングオベーションの中、手を振りながら悠然と退場していった姿が印象的だった。なお、後任の会長はピエール・ルスキュールで、ジャコブは名誉会長に就任する予定である。

 “長編コンペティション”部門の男優賞のプレゼンターはイタリアの女優モニカ・ベルッチ。女優賞はフランスの俳優ダニエル・オートゥイユ。脚本賞はスペインの女優パス・ヴェガ。審査員賞のプレゼンターとして登場したのはドイツの俳優ダニエル・ブリュール。監督賞は米国の俳優エイドリアン・ブロディ。グランプリのプレゼンターはイタリアの大女優で、21日には特別講義も行ったソフィア・ローレン。そして、アメリカの女優ユマ・サーマンとクエンティン・タランティーノ監督が手を携えながら、最高賞パルムドールのプレゼンターとして登場した。   
 我々報道陣は、その模様を授賞式会場のリュミエールではなく、ドビュッシー・ホールのスクリーン映像で観るので、賞が発表される度に気兼ねなく歓声をあげたり、ブーイングしたりと喧しいのだが、今年は中継映像が何度も途切れるトラブルが発生。大ブーイングの嵐となり、途中退場する記者たちが続出した。
 受賞結果は下記の通りだが、最高賞のパルムドールは、前評判の高かった3時間16分の静謐なトルコ映画『ウィンター・スリープ』で、受賞も頷ける秀作だ。トルコ映画が最高賞に輝いたのは、1982年のユルマズ・ギュネイ監督の『路』以来、実に32年ぶりの快挙となった。


〈第67回カンヌ映画祭〉長編コンペティション部門受賞結果

☆パルムドール:『ウィンター・スリープ』ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督(トルコ)
☆グランプリ:『ザ・ワンダーズ』アリーチェ・ロルヴァケル監督(イタリア)
☆監督賞:ベネット・ミラー『フォックスキャッチャー』(アメリカ)
☆審査員賞:『グッドバイ・トゥ・ランゲージ』ジャン=リュック・ゴダール監督(フランス)
☆審査員賞:『マミー』グザヴィエ・ドラン監督(カナダ)
☆脚本賞:アンドレイ・ズビャギンツェフ&オレグ・ネギン『リヴァイアサン』(ロシア)
☆女優賞:ジュリアン・ムーア『マップス・トゥ・ザ・スター』(アメリカ)
☆男優賞:ティモシー・スポール『ミスター・ターナー』(イギリス)


◆授賞式直後の20時15分から審査員メンバーの記者会見が行われ、引き続いて受賞者たちが会見!

 クロージング・セレモニーの余韻が残るなか、20時15分より長編コンペティション部門の審査員団による記者会見が行われた。会見では選考作についての詳細と審議の過程が明かされ、今回のカンヌでの経験についての感想が審査員の口々から語られた。
 審査委員長のジェーン・カンピオン監督はパルムドール作品について、「監督のジェンダーについては全く語り合いませんでした。全作品が同じライン上で論じられたんです。以前に賞を受賞したことがあるかどうかという点は考慮しませんでした。全ての作品が好きだったので、もっと賞を増やして贈りたいくらいでした」と述べ、記者会見を結んだ。
(記事構成:Y. KIKKA)