11/29(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて公開が始まった『クロッシング・ウォー決断の瞬間(とき)』のトークイベントに、ジャーナリストの上杉隆氏、言論家であり神話アーティストとしても活躍する吉木誉絵(のりえ)氏、防衛ジャーナリストの桜林美佐氏が登壇した。映画は、昨年アフガニスタンから完全撤退を決めたドイツ駐留軍に赴任した主人公の兵士・イェスパーが人間としての良心か、それとも軍隊の規律かで激しく葛藤する様を描いており、世界で初めてドイツ連邦軍が全面的に協力したことでリアルな戦闘シーンが生まれたと、本年度ベルリン国際映画祭で話題となった。

本作について、「こんなに静かで雄弁な戦争映画は初めてだ」と話す上杉氏。「戦争映画といえば激しい戦闘シーンが話題になったり、あるいは極端に戦闘自体を美化するといったような物をイメージするが、そのどれとも違う。戦争とは、組織とは、国とは何かということの問題提起をしながら、その問題を押し付けられる末端の人間の心情。戦争というよりも、組織の軋轢に悶える人々を描いていると思った」
自衛隊の軍事演習に参加したこともあるほど、国防に関する意識が強い吉木氏も語る。「女性でも共感できる戦争映画だと思います。登場人物の心情を細やかに描かれているのに、押し付けではなく、観る人の考える余地を与える映画でした」

桜木氏は「日本はこうした問題を感情論で締めくくってしまうところがある。しかし、それだけでは終わらないと訴えている映画です」とそれぞれ感想を述べた。

安倍総理のお膝元出身の上杉氏は、周辺がにわかに騒がしくなっていることを引き合いに出し、「20年政治の取材をしているが、この映画は今までの取材活動に通じる問題を扱っている。とにかく日本は議論をしない。議論をしないで、根本をあいまいにするからいつまでも問題は解決しない。衆議院選挙も近い。今こそ決断の瞬間(とき)ではないか」と締めくくった。

映画『クロッシング・ウォー決断の瞬間』は、現在ヒューマントラストシネマ渋谷、シネリーブル梅田にて上映中。12/6(土)〜名古屋シネマスコーレ他全国順次公開される。