23日(金)は17時から、国際批評家連盟賞の発表と授賞式が行われ、公式部門第2カテゴリーの“ある視点”部門も本日が閉幕日。ドビュッシー・ホールで授賞式セレモニーが行われた後、引き続き“ある視点賞”に輝いた『ホワイト・ゴッド』が上映された。


☆国際批評家連盟賞(FIPRESCI)受賞結果

●長編コンペティション部門:『ウィンター・スリープ』ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督(トルコ)
●ある視点部門:『ヤウヤ』リサンドロ・アロンゾ監督(アルゼンチン)
●監督&批評家週間部門:監督週間上映作『ラヴ・アット・ファースト・ファイト』トーマス・セイリー監督(フランス)


◆ハンガリーのコーネル・ムンドルッツォ監督作『ホワイト・ゴッド』が、“ある視点賞”を獲得!

 今回、全20作品が上映された“ある視点”部門のアワード・セレモニーが、19時15分から映画祭ディレクターのティエリー・フレモーの司会によりドビュッシー・ホールで催された。今年、この部門の審査員を務めたのは、アルゼンチンの映画監督のパブロ・トラペロ(委員長)、スウェーデンの女優マリア・ボネヴィー、フランスの女優ジェラルディン・ペラスらの総勢5名。
 最高賞の“ある視点賞”に輝いたのは、これまで2度のコンペ参戦歴を持つハンガリーの実力派監督コーネル・ムンドルッツォ監督の『ホワイト・ゴッド』。
 13歳の少女の愛犬が大人の事情で少女から引き離され、路上に置き去りにされる。強い絆で結ばれていた少女と愛犬は互いに捜し出そうとするが…。東欧版の『名犬ラッシー』or『ビバリーヒルズ・チワワ』的な心温まる作品かと思いきや、なんと途中からトーンがホラーへと一変。意表をつく大胆なストーリー展開に目が離せなくなる天晴れな怪作で、見事な演出力にも瞠目!
 審査員賞は、スウェーデンのリューベン・オストルンド監督(2011年の前作『プレイ』で東京国際映画祭最優秀監督賞を受賞!)が獲得。娘と息子を連れ、フレンチ・アルプスでスキー旅行を楽しんでいたスウェーデンの夫婦がハプニングに遭遇し……。夫婦の間に生まれる亀裂と動揺、そして不信感の増大を緊張感たっぷりに描き出した秀作だ。
 ある視点特別賞は、ブラジルのフォトジャーナリスト、セバスチャン・サルガドの姿を追ったドキュメンタリーで、彼の実の息子であるジュリアノ・リべリオ・サルガドと名匠ヴィム・ヴェンダースが共同監督した。
 アンサンブル賞は、今年の“ある視点”部門のオープニングを飾った『パーティー・ガール』が受賞。60歳になっても夜遊びに明け暮れている独身女性の物語で、監督はフランスの国立映画学校フェミス出身の3人組。
 最優秀俳優賞は『チャーリーズ・カントリー』でアボリジニ族の老人を演じたデイヴィッド・ガルピリルが受賞した。

☆“ある視点”部門受賞結果
●ある視点賞
『ホワイト・ゴッド』コーネル・ムンドルッツォ監督(ハンガリー・ドイツ・スウェーデン)
●審査員賞
『ツーリスト』リューベン・オストルンド監督(スウェーデン)
●ある視点特別賞
『ザ・ソルト・オブ・ジ・アース』ヴィム・ヴェンダース監督&ジュリアノ・リべリオ・サルガド監督(フランス)
●アンサンブル賞
『パーティー・ガール』マリー・アマシュケリ監督&クレール・バーガー監督&サミュエル・ティス監督(フランス)
●最優秀俳優賞
デイヴィッド・ガルピリル『チャーリーズ・カントリー』ロルフ・デ・ヒーア監督(オーストラリア) 


◆マルシェ(見本市)関係者がごっそりと去って、カンヌの街中はのんびりムードに!

 あれほど賑わい、混み合っていたクロワゼット大通りも閑散としている。商談を済ませた配給会社や製作会社などのマルシェ関係者がごっそり去ったせいだが、コンペティション部門の授賞式を明日に控えた我々報道陣にとっては、まだまだ気が抜けないのが実情だ。
 そして気になる賞レースの行方だが、ジャーナリストたちも参考にしているのが英語の“スクリーン”誌とフランス語の“ル・フィルム・フランセ”誌だ。どちらも最終ページに長編コンペティション部門作品の星取り評価表(両誌の評価は案外異なる)を掲載している。しかしながら、賞の行方は審査員のメンツ次第。この星取り評価表が受賞に反映されないことも多いのが実情だ。
(記事構成:Y. KIKKA)