この度、ハリウッド作品『クラウドアトラス』や『空気人形』のぺ・ドゥナ、『アジョシ』、『冬の小鳥』のキム・セロンが主演、『オアシス』、『シークレット・サンシャイン』のイ・チャンドンがプロデューサーを務め、カンヌ映画祭「ある視点」部門に招待されたことでも話題の『扉の少女(仮題)』が、2015年GWにユーロスペースほかにて全国順次ロードショーする運びとなりました。そしてこの度、11月22日(土)より開催中の東京フィルメックス・コンペティション部門にて上映され、24日(月・祝)の上映後に主演ぺ・ドゥナ、チョン・ジュリ監督による舞台挨拶・Q&Aを実施致しました。

■日時:11月24日(月・祝) 
■場所:有楽町朝日ホール(住所:千代田区有楽町2-5-1有楽町マリオン11F)
■ゲスト:ぺ・ドゥナ(主演)  チョン・ジュリ(監督)

同作で監督を務めたのは、「影響下にある男」で釜山国際映画祭のソンジェ賞を受賞したことをはじめ、「11」「The Wind Blows To The Hope」など、多数の短編映画を通じて期待を集めてきた新鋭チョン・ジュリ監督。港町を舞台に女性警察官と一人の少女との出会いを、家庭内暴力、セクシャルマイノリティ、外国人の不法就労問題など様々な社会問題を交えて力強く描ききる希望の物語。

Q&A内容
●挨拶
監督:朝早くから沢山の人に来ていただいてびっくりしました。本当にありがとうございます。

ぺ・ドゥナ:実は私は夜型でして、ふくろうのような生活をしているものですから、こんなに朝早くから映画を観に来るというのはなかなかないんですが、みなさまに来ていただきまして本当にありがとうございます。楽しんで観ていただけたとしたら嬉しいです。そして、久々に日本の観客の方にお会いできて嬉しく思います。

●Q1:ぺ・ドゥナさんに質問です。『クラウドアトラス』では素晴らしい英語力を披露されていましたが、その裏に役作りによるストレスも感じられているかと思いますが、どのように解消されているのか?

ぺ・ドゥナ:おもしろい質問をありがとうございます(笑)。『リンダ リンダ リンダ』や『空気人形』では日本語を一生懸命に頑張りました。アメリカの映画に出るときには、英語の勉強を一生懸命にし、今もしているんですけど、俳優というのは演技をしながら言葉で内容を伝えなければならないので、本当に大変な作業です。それがストレスになってしまうわけなんですね。でも、今回の『扉の少女(仮題)』のような作品を撮るときには、ストレスは一切感じることはありませんでした。言葉のストレスもなくやりきることができたんですが、それは私が本来持っている言葉を使えたからだと思います。今も海外で撮影しているんですが、そういった意味でも韓国映画にできる限り出演し続けたいと思っています。私の持っているものを100%すべて発揮できると思うからです。

●Q2:韓国で性的マイノリティの中でおそらくレズビアンが一番抑圧されていて、ドキュメンタリーを含めても、ほとんどレズビアンが出てくる映画を見ないですが、この作品で色んな少数者が出てくる中で、レズビアンであることで心に空虚なものを抱えているヒロインを、そしてストーリーを考えた経緯を教えて下さい。

監督:今回はどうしたら一番寂しい2人が出会うことができるのかということについて、かなり悩みました。ひとつまず最初に思いついたのが、実の母親に逃げられてしまって義父の元にいて、その義父から虐待を受けている少女。そして、かたや、その少女と出会う寂しい女性はどんな人がいるだろうと考えた時に、ヨンナムという人物を思いついたわけです。私が設定したヨンナムという女性は警察官です。韓国というのは男性中心の社会なんですけど、その社会にあって警察官で年上の男性たちを部下にしなけれけばならない幹部の立場にいる女性にしたんですね。更に、もっともっと寂しい女性ということを思い描いていましたので、同性愛者という、アイデンティティを持っている女性を思いつきました。ヨンナムという人物は、運命の中に自分を閉じ込めなければならない本当に寂しい境遇にある人物なんです。その2人が出会うということを思いついてこの映画がスタートすることになりました。

●Q3:年の近い女性の監督と一緒にやることは、男性の監督の作品と、現場のやりやすさなどに違いはありますか?実際に映画に表れてたりもしている場面があったら教えて下さい。

ぺ・ドゥナ:私は女性監督と一緒に仕事するのが大好きなんですね。あと、新人監督とお仕事するのも大好きです。なぜなら一緒に勉強していくという気持ちになれるからです。年配の監督さんは全てのプロセスを知っているのでついて行けばいいという感じなんですけど、新人の監督だと一緒に作っていくんだという気持ちが強く感じられます。特に女性監督の場合には女性のキャラクターを作る上で、とてもいいヒントを下さると信じていますので、私自身とても演技がしやすかったりします。特にチョン・ジュリ監督とは年齢も近かったので友達のような感じで、ある時はお姉さんと妹のような感じで、一緒に作っていくことができました。今回のプロジェクトはいってみたら少数精鋭のグループだったんですね。以前、私が出演した『クラウドアトラス』に比べると、スタッフの数も1/5位だったと思います。そういう少人数のチームでしたので、本当に友達のような感じで、作業ができたんですね。そういう雰囲気というのはとても重要なことだと思っています。私の役とは反対に現場はとても楽しい雰囲気だった。キム・セロンちゃんはとても難しい役でしたが、周りのみんながセロンちゃんのことを気遣って、面倒見ていたので、彼女にとっても非常に良い影響を与えたと思います。

監督:ぺ・ドゥナさんの場合はほとんどどのシーンにも出なければならないので、1日も休まず、撮影に臨んで下さった。そんな過酷な状況の中で私達スタッフや他の俳優さんたちを励ましてくれたのがぺ・ドゥナさんでした。現場で私にとっては一番の心強い同志であったのもぺ・ドゥナさんだった。心から感謝している。