以下、質疑応答全文

●【ブラッド・ピットへ】この作品をご覧になって、どんな感想をお持ちになりましたか?
B:私は編集から携わっていましたので、完成する前の段階でこの作品が形作られていく過程を見ていました。私たちが本当に作ろうと思っていた映画に仕上がったと思います。生々しく臨場感の溢れる映画。まるで兵士になって戦争を体験するような、そんな映画になりました。精神的にも肉体的にも追いつめられる兵士たちの過酷な状況を描く事ができたと思います。とても普遍的な物語だと思います。

●【ローガン・ラーマンへ】映画の中ではローガンさんの成長ぶりが素晴らしいと感じました
L:そもそも自分の姿を映像で見る事に慣れていなくて、少し恥ずかしい部分はあります。今回の映画は、自分にとっては特別作品で、こんなに夢中になって作った映画は今までにありませんでした。撮影は4ヶ月かかったのですが、他のキャストと生活をともにし、途中で休んで遊びに行くなんてことも一切なく、ずっと仕事ばかりでした。そこまでしないとリアルなストーリーは語れないと思いましたので、自分の全てを 100%注いで取り組みました。自分のキャラクターが窮地に追い込まれていく過程を見るのは決して気分の良いものではありませんが、本当に頑張って作った映画なので誇りに思っています。

●【お 2 人へ】戦車の中の撮影はどんな体験でしたか?
B:見ての通り、戦車の中というのは人が住むようには作られてはいないので、居心地の良さということは全く考えられていません。回転塔が回った時に足を失う可能性もあるし、ハッチを閉める時に指を挟んで折ってしまう可能性もあります。とにかくキツいし、音も凄い。しかも大の男が5人も入るのですから、空気もとても新鮮とは言えない、臭いです。
でも、僕たちは実際に戦車に乗り込んでトレーニングを受けました。30 トンもするあの戦車を我々5人の俳優に任せてくれましたので、自分たちも中で何とかしなければならないと。だんだん慣れてくると、この戦車塔とボルトの間に頭を置くと少し居心地がいいぞ、とかコーヒーはここに置けばこぼれないとか、細かいこと(コツ)がわかって来ます。しかし実際に戦車で戦った人々はあのスペースの中で食べて寝て戦って、トイレもそこで済ませたわけです。それを考えるとものすごい苦労があったのだなとつくづく感じさせられます。

L:戦車の中は時として非常に臭かったりもしたのですが…、我が家のように思えるようになりました。初めて戦車を見た時には、もうこんなもの見たことないと圧倒されてしまいました。何よりも狭い、どうやって撮影するのだろうと最初は少し不安になりました。ただ連日かなりの訓練を重ねましたので、撮影が始まる頃にはそれぞれ戦車内での役割を果たして操縦することができるようになり、自分のもののように扱うことができるようになっていました。本物の戦車を使ったのは屋外のシーンで、そこは本物なのでそれなりのテンションを保って挑めたのですが…、難しかったのは屋内のシーンです。セットを作って撮影しているので、セットアップに時間がかかるなどの大変さがありました。屋内のシーンは最後の1カ月で撮影したのですが、その頃にはキャスト同士でサポートしあいながら取り組みました。

●【ブラッド・ピットへ】本作のストーリーとウォーダディのキャラクター、どこに魅力を感じていますか?
B:この映画で注目すべき点はウォーダディのリーダーシップの形にあると思います。激戦の中、部下の士気を高め、厳しく接しながら、決定は迅速に確信を持っていなければならない。彼の中にも迷いはあるかもしれないが、それを部下の前で見せるわけにはいかない。それを一体どこで発散するのか。そのあたりが面白い役だと思いました。強い指揮官というのは、部下のために様々な決定をしますが、時には難しい決断をしなければならないこともあります。そして同時に愛情を持って接することもある。そういった点が魅力的だと感じています。

●【ブラッド・ピットへ】「Ideals are peaceful, history is violent(理想は平和だが、歴史は残酷だ)」というセリフがとても印象に残っています。このセリフはブラッド・ピットさんのアドリブと伺ったのですが、どういった思いでが込められているのですか。
B:このセリフはとても重要です。撮影の前にリサーチのため退役軍人の方々にたくさんのインタビューをしたのですが、そこでこの言葉が発せられたのです。
この映画が主張しているのは、家の中でのルールは戦場では通用しないということです。新兵のノーマンは人間の慈愛や正義感を持っていますが、それは戦場では通用しません。殺すか殺されるかの世界では冷血な人間にならなければならない。これだけ人間が進化しているにも関わらず世界中で争いは絶えない。そんな戦争の愚かしさ、矛盾をあらわしているのがこのセリフです。私たちが大事にしているものや理想としているものは、戦場では一旦忘れなければ生き延びることができないのです。

●【お 2 人へ】生死をさまよう程、過酷なブートキャンプに参加されたとのことですが、具体的にどのようなトレーニングをされたのですか。
L:撮影に入る前、4か月間のトレーニングがあり、その最後の仕上げがブートキャンプでした。参加した一人一人が変身を遂げるプロセスになりました。これを経ることで団結力をつけ、5 人は家族になれたのだと思います。ただ、そこにたどり着くためにはそれなりの負荷が必要です。まず睡眠時間を削る、肉体的にもかなり苦痛を強いられ、そして様々な課題を与えられます。もういろんな無理難題を投げつけられて、お互いのサポートなしには遂げられないようなタスクをこなしました。そのおかげで団結力もつき、お互いを頼りながら課題をやり遂げることで変化(成長)することができたのです。

B:5人の俳優から1週間に渡って、カプチーノも携帯電話も取り上げたのです。どう思われるかわかりませんが、これはエリートの軍人が作りあげたプログラムで、ハッキリ言って最低でした。ここまでやらされるのかと。1週間終えるとつくづく普段の生活のありがたみがわかるというか(苦笑)。
皆さんも是非、1年に1回試したら良いと思います。自分の仕事がよりよく出来るようになりますし、人間としても成長できると思います。

●【ローガン・ラーマンへ】1日で新米兵士が一人前の兵士へと変わっていくという難しい役どころでしたが、どのように演じられましたか。
L:脚本を読んでいる時から、これは難しい役だなと感じました。理想を掲げて戦地にやってきた男が、24 時間で大変身を遂げなければならない。人を殺したくないと思っているのに1日で殺人者になるのです。しかも、ストーリー全体を俯瞰しながら、要所要所でその変化を演じ分けて観客に伝えなければならない。
それから、私は新米兵士の役でしたので現場でも新米扱いされてしまい、それも大変でした。

B:ローガンの役は一番大変だったと思います。他のメンバーたちとは撮影前に既に絆が深まっていたので、本当の意味で彼は新人だったのです。今回の撮影では週末に休みをとって街で遊ぶなんてことも一切なかったので大変だったとは思いますが、彼はそれに耐えうる力を持っていました。逆に我々に挑戦してくることもあったくらいです。

質疑応答終了
B:良い質問ばかりでした。意義深い質問をありがとうございました。