第67回カンヌ国際映画祭が、5月14日(現地時間)に南仏の高級リゾート地カンヌで開幕した。一昨年と昨年はひどい悪天候に見舞われ、肌寒い日々ばかりが続いてホトホト嫌になったが、映画祭初日の今日は、朝こそ涼やかだったものの爽やかに晴れ渡ってくれた。これは幸先がいいかも知れない。


◆今年のオープニング作品は、ニコール・キッドマンがグレース・ケリーを華麗に演じた『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』!

 映画祭の開幕作品に選ばれたのは、人気絶頂の1956年にモナコ大公レーニエ3世と結婚して女優業を退いたグレース・ケリーが、公国の存亡の危機に立ち向かう姿を描いたコンペ外招待作品『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』(10月公開予定)だ。1954年の『喝采』でアカデミー賞主演女優賞に輝いたグレース・ケリーが翌年、同作のお披露目で訪れたカンヌ映画祭でレーニエ3世と出会ったエピソードも有名なので、本作はオープニングを飾るに相応しい話題作だといえよう。
 1962年。モナコ公国の公妃となって6年が経っていたが、いまだ公妃としての立場に馴染めずにいたグレースは、敬愛する映画監督アルフレッド・ヒッチコックからの誘いに心動かされ、女優への復帰も考慮し始めていた。だが、そんな折り、モナコ公国はフランス併合の危機に直面する。隣国フランスの大統領シャルル・ド・ゴールがモナコに過酷な課税制度を適用して締めつけ、夫レーニエ3世が窮地に立たされたのだ。この危機を救うため、外交儀礼の特訓を受けたグレースは、ド・ゴールを含む各国首脳を招いて催された“パーティ”という大舞台で完璧な公妃を演じきろうと決意するが……。
 “クール・ビューティ”の代名詞的女優として知られたグレース・ケリー(1929年11月12日〜1982年9月14日)の公妃時代の秘話を詳らかにした本作の監督を務めたのは、2005年の『エディット・ピアフ 〜愛の讃歌〜』で、マリオン・コティヤールにアカデミー賞主演女優賞をもたらしたフランスの俊英オリヴィエ ・ダアンである。

 フランスの人気男優ランベール・ウィルソンが司会を務める映画祭のオープニング・セレモニーは宵の19時15分からのスタートで、本作『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』は、そのセレモニー後の20時と23時からの2回、正式上映(ドレスコードのあるソワレ上映)が行われるのだが、我々報道陣は午前中からの始動だ!
 まずは10時から上映された本作のプレス向け試写を鑑賞後、13時から行われた公式記者会見に参加。
 登壇者はオリヴィエ・ダアン監督、主演のニコール・キッドマン、ティム・ロス(レーニエ3世役)、ジャンヌ・バリバール(侍女役)、パス・ヴェガ(マリア・カラス役)、エリク・ゴティエ(撮影監督)とプロデューサー2名。
 国際的に活躍する人気女優であり、昨年はコンペの審査員も務めたニコール・キッドマンはグレース・ケリー役について、「非常に特徴的な役なので、挑戦だと感じました」と語り、夫役のティム・ロスは「レーニエ3世をあまり知らなかったので途方にくれたよ。だけど、おかげで彼を比較的自由に表現できたので、結果オーライさ」とコメント。一方、本作で唯一、実在の人物ではない侍女役を演じたジャンヌ・バリバールは、「モデルとなった人物がいない分、とても気楽に演じられた」という。
 そして、本作が9本目の長編映画で、カンヌ初参加となったオリヴィエ・ダアン監督は、「舞台を1962年だけに特化することで、女優として、そして女性としてのグレースの真の考えに迫る、完全なポートレートを作ろうと考えたんだ。結婚して子供もいる彼女の内面の葛藤をもね」と述べた。


◆長編コンペティション部門の審査員を務めるのは、名匠ジェーン・カンピオン監督(審査委員長)以下、総勢9名!

 映画祭初日は、オープニング上映作『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』の公式記者会見に続いて、14時半から、映画祭の柱である“長編コンペティション”部門の審査員全員が登壇する審査員会見に出席! 
 今年の審査委員長はニュージーランド出身の映画監督で、1993年の『ピアノ・レッスン』で女性監督初のカンヌ最高賞に輝いたジェーン・カンピオン。彼女が率いる審査員の顔ぶれは、ソフィア・コッポラ監督、ニコラス・ウィンディング・レフン監督、ジャ・ジャンクー監督、俳優のウィレム・デフォー、キャロル・ブーケ、ガエル・ガルシア・ベルナル、レイラ・ハタミ、チョン・ドヨン。
 その会見上でジェーン・カンピオン監督は、「映画は人生であり、情熱です。そして監督の世界観を理解することに興味があります。出品作にどう反応するかを前もって予言することはできません。各々の映画にはそれぞれ持ち味がありますからね」と語り、残る8人のメンバーも審査に対するそれぞれの心構えをコメントした。
(記事構成:Y. KIKKA)