戦前のカナダ・バンクーバーで、差別や貧困の中にあってもフェアプレーの精神でひたむきに戦い抜き、日系移民に勇気と誇り、そして希望を与え、さらには白人社会からも賞賛と圧倒的な人気を勝ち得た実在の野球チーム “バンクーバー朝日”。実際の記録をもとに、伝説の野球チームと、戦前の日系移民の壮大なドラマを描いた本作は、先日第33回バンクーバー国際映画祭(9月25日〜10月10日)にてワールドプレミア上映され、観客賞を受賞。さらにこの度、ハワイ・ホノルルで開催されているハワイ国際映画祭(10月30〜11月9日)に、オープニング作品として招待されました。

ハワイ国際映画祭は1981年より始まり、アジア太平洋地域の映画事業拡大と文化交流を目的とし、今年は48の国と地域より178本の映画が上映されます。日本をはじめ、中国、インド、韓国、フィリピン、台湾、北米、ハワイなど、それぞれの地域で製作された作品に焦点をあてた部門があり、ハワイの地域性と環境を活かした映画祭だといえます。
「バンクーバーの朝日」からは、10月30日(木)(現地時間)のオープニング上映にあわせ、石井裕也監督と、本編で主人公・“レジー笠原”(妻夫木聡)の妹・“エミー笠原”を演じる高畑充希が現地入りし、公式記者会見とレッドカーペットアライバル、さらに舞台挨拶を行いました。

公式記者会見には約60の現地媒体が集まり、ハワイの印象から作品のテーマに至るまで、様々な質問があがる中、石井監督は「逆境の中で生きる若者の姿は今も昔も変わらない。普遍的なテーマを扱っていると思っています。ハワイにも日系移民が多いので、通常より親近感を持って観てもらえるのではないかと期待しています。まずは楽しんでもらえることが第一です」とコメント。また、国際映画祭初参加となる高畑は「ハワイは居心地がよく、仕事で来ていることを忘れそうです。国際映画祭が初めてなので、まだ想像がつきませんが、満ち足りた気持ちで会場を後にできたらいいなと思います。とても楽しみです。」と上映前の心境を語りました。
会見後、高畑と石井監督はハレクラニ ホテル内で行われたレセプションに参加。俳優ワークショップのために招聘された女優、マーシャ・ゲイ・ハーデンや『スポットライト・オン・コリアセクション』の上映作品で招待された俳優、カン・ドンウォンなど、豪華なゲストたちとともに列席しました。

米国プレミア上映の会場となった『Regal Dole Cannery Stadium 18』には、日系人はもちろん、ハワイの多様な人種模様を反映した約600人の観客が場内を埋め尽くしていました。
上映前に行った舞台挨拶に着物姿で登場した高畑は「英語の歌詞を覚えるのがすごく大変でした…。映画の中でも英語の台詞が半分くらいあってすごく難しかったので、その辺も注目して観ていただけたらと思います。」と挨拶。続いて石井監督も「普遍的で今日的なテーマを扱っているので、ハワイの方々にも楽しんでもらえると思います。」と挨拶し、作品への自信をのぞかせました。また高畑は、劇場の観客に向けてサプライズのプレゼントを用意。劇中で“朝日”チームに向けて歌う応援歌『TAKE ME OUT TO THE BALL GAME(私を野球に連れてって)』を、ハワイらしいウクレレにのせて披露しました。この歌は、古くからアメリカのメジャーリーグの試合途中に観客によって歌われており、よく知られている馴染みある曲ということもあって、歌唱の後半では一緒に口ずさむ人も。映画鑑賞前にも関わらず、あたたかい一体感が会場を包みました。

映画鑑賞後に高畑と石井監督は映画館ロビーにて観客との握手や写真撮影に応じました。映画への感謝や感想が寄せられるなか、かつてシアトルの野球チームでプレーし、“バンクーバー朝日”にも何度か参加したという男性が現れ、「この映画を作ってくれてどうもありがとう。これは非常に貴重な映画だ」と感動を伝えていました。

また高畑はこの日、映画上映前にハワイの名所や、バンクーバー同様日系人が多い当地の日本人縁の場所を訪問。
伝説のサーファー『デューク・カハナモク像』やダイヤモンド・ヘッドを臨むビーチをまわった後、『ハワイ日本文化センター』を訪れ、日系移民の歴史解説を受けました。ハワイの日系移民の境遇がバンクーバーのそれと酷似している点に驚くとともに、ハワイの日系人社会でも野球チームが人々の楽しみや希望となっていたことに深く関心を寄せていた高畑は、ハワイ訪問を楽しみつつも、日本から遠い地に渡った先人の痕跡を辿ることで、自らが演じた役どころや、“バンクーバー朝日”に想いを馳せていました。

ハワイ国際映画祭上映後コメント
≪高畑充希≫
観客のみなさんのリアクションがよく、とても驚くと同時に、より何倍も映画を楽しむことができました。日本で最初に観たときは緊張していて、自分の演技ばかりに目が行ってしまいましたが、今日は映画全体を観ることができ、何度も泣きそうになりました。
海外の映画祭は初めてということもあり、せっかく海外だし、日本の着物を着ようと思いました。みなさんが着物をすごく褒めてくださるので、ハワイで着ることができてよかったです。
歌を披露するのはものすごく緊張しましたが、お客さんがあたたかかったので助けられました。
今日改めて映画を鑑賞して、絞りきれないほど見所がある映画だと思いました。一秒たりとも目を離さずに、細かいところまで釘付けになって観ていただきたいです。

≪監督:石井裕也≫
映画鑑賞後のお客さんたちに「何ヵ所かで泣いた」と声をかけられました。
悲しい出来事もたくさん起こるなかで、それでもなんとか踏ん張って立ち上がろうとした人々の話ですし、映画を観た人たちには元気を持ち帰ってもらえると嬉しいな、と思います。