「モスト・リスペクト in Paris賞」も、今回新たに設けられた賞。こちらは奥山さんがプレゼンターを務めます。世界で最初に映画が誕生したパリと、日本で初めて映画が上映された京都、このふたつの都市が「友情盟約」を結んでいることから、パリ出身の映画人に贈られることになったこの賞。奥山さんが「フランスの女優さんは愛を語るのが上手いが、その中でも抜群の表現力を持つ人。愛の複雑さを表現する時、右に出る者はいない」と絶賛する受賞者は、『ふたりのベロニカ』『トリコロール 赤の愛』で知られるイレーヌ・ジャコブさんです。登壇したイレーヌさんが、受け取った副賞のスカーフをさっそく首もとに巻いて見せると、会場からは大喝采。さらに「コンニチハ、イツモオセワニナッテオリマス」と日本語での挨拶が飛び出し、再び拍手が起ります。ジャコブさんは6週間前から、平田オリザさんとのコラボレーションによる演劇プロジェクトのため来日しており、城崎国際アートセンターで舞台に出演。「滞在中に、第1回の京都国際映画祭に来られるという幸運に恵まれました。映画文化にどっぷりつかっていた私が、このような機会に恵まれるのは幸せ」と受賞を喜びました。また、「開催に向けて尽力された中島さん、奥山さん、本当におめでとうございます。映画祭は映画人すべてにとってさまざまなメリットがある。(京都国際映画祭が)これから新しい日本映画の歴史を刻んでいかれることを願っています」と同映画祭のスタートを祝福。今回、記念上映される自身の出演作2本を手がけたポーランドの名匠クシシュトフ・キシェロフスキ監督についても触れ、「(監督の祖国である)ポーランドは規制が厳しく、はっきり表現するとすべてカットされてしまう。そんな中、監督は『ほのめかしているだけで、映画を深く理解してくれる日本の観客は素晴らしい』と言っていました」と振り返りました。ちなみにこの日身に着けていたワンピースは、京都の企業であるワコールから進呈されたものだそう。「日本の着物の刺繍を取り入れているんですよ」と紹介し、京都の伝統工芸にすっかり魅了された様子でした。

最後を飾るのは、牧野省三賞の発表です。選考委員を務めた中島監督、大阪大学教授・上倉庸敬さん、東映映画スタジオ代表取締役社長の眞澤洋士さん、奥山さんが登場し、まずはそれぞれがコメントを。「私が映画界に入る前から存在していた歴史ある賞。今回から俳優さんは除き、映画の作り手の方々に贈ることになった、再出発の賞です」と、中島監督。上倉さんは、発表後のスピーチだと思っていたとのことで、「聞いていたら誰かわかってしまうかもしれませんが」と苦笑い。受賞者が製作に携わった作品のシーンを挙げながら、「これからも日本の映画界に大きな実りを与えてくれる」と語りました。眞澤さんは、今回で第47回となる同賞の歴史を改めて詳しく紹介。「ご本人に電話したら『なんで俺なんだよ』とおっしゃっていましたが、(ここまでの)お話を聞いてご納得いただけたと思います」というのは奥山さん。果たして受賞者は誰なのか、プレゼンターの津川雅彦さんが登場し、いよいよ発表のときです。

津川さんは発表前のスピーチで、「日本映画は年々さびれております。何より娯楽映画がダメになっている」と映画界に問題提起。その原因を分析しつつ、「映画は素晴らしい力を持っている」と奮起を期待するコメント。「消滅しかかっている日本映画を持ち上げるのはスタッフの力」と同賞の意義を改めて確認する一方で、「ご列席の皆さんも、映画がどれほど素敵なものか考え、また見ていただけるといいなと思います」と呼びかけました。

そして津川さんが発表した今年の「牧野省三賞」受賞者は木村大作さん。木村さんは「皆さん挨拶が長いんで、マイクを使わず短く」と地声のみで受賞の喜びを。と、いきなり「吉本がやっているのに退屈だなあ! お祭りなんだからもっと盛り上げて」とダメ出しで笑いを誘います。さらに「今まで受賞した方の名前を見たら、すごい人ばかり。歴史の重さを感じます」としみじみ語りつつ、「津川さんは牧野監督の孫ですが、私は牧野監督の映画の孫だと思っている。これからも長く日本映画が発展するように、あと5年ぐらいは頑張ろうと思います」とユーモアあふれるひとことも。最後に再び「お祭りですよ!」と声を上げ拍手を求めるなど、会場を大いに盛り上げました。

約2時間にわたるセレモニーも、そろそろ閉幕。吉本興業代表取締役会長・吉野伊佐男が締めくくりの挨拶を行いました。「吉本は、かつては新京極に京都花月、今は祇園に祇園花月があり、毎日演芸を上演している。また、芸人やタレントにも多数の京都出身者がいる。吉本にとって京都はゆかりのある地」と述べたうえで、「豊富なラインナップが揃っているので、皆さんにはぜひ有意義な時を過ごしていただきたい。そして、今後も愛していただける映画祭を目指していきたいと思います」と話しました。

「京都国際映画祭」は、京都市内の各会場で10月19日(日)まで開催中です。いま一番熱い映画とアートの最前線を、この機会にたっぷりとお楽しみください。