この度、本映画祭のプログラムのひとつである、ごはんつき上映会が開催され、第62回サン・セバスチャン国際映画祭、美食部門にて、「TOKYO GOHAN AWARD」最優秀作品に輝いた、伝説のレストラン「エル・ブリ」のフェラン・アドリア氏も心酔していると言われる、ガストン・アクリオの食の世界を描く、パトリシア・ペレス監督の映画『FINDING GASTON (ファインディング ガストン)』を上映、お料理をご提供いただく「スリオラ」オーナーシェフ・本多誠一氏とサン・セバスチャン国際映画祭ディレクターと共にプレミアムトークショーが実施されました。

<プレミアムトークショー概要>

■日時:10月11日(土)
■場所:表参道ヒルズ スペース オー(東京都渋谷区神宮前4丁目12番10号)
■登壇者:「スリオラ」オーナーシェフ・本多誠一氏 、
国際映画祭ディレクター ホセ=ルイス・レボルディノス氏、副ディレクター ルシア・オラシレグイ氏

<イベントレポート>

映画を観ながら美味しいごはん食べようと、会場には多くのお客様がつめかけ、
都内で人気の高いモダンスパニッシュ「スリオラ」のランチBOXと共に、スペインのワインである
チャコリを味わう姿も見られました。
トークショーでは、サン・セバスチャン映画祭のディレクターである、ホセ・ルイス氏より、
ごはん映画祭とのパートナーシップの経緯やバスク地方の文化などがが語られ、
日本とバスク地方は文化的に似ているところがあるとコメント。
「スリオラ」オーナーシェフの本田氏もそれに共感、将来の料理界に関しても熱く語りました。
映画上映後は、拍手が送られるなど、お腹と心が満たされる大満足のイベントとなりました。

<以下トーク内容>

MC:日本は二回目の来日と伺っておりますが、東京を楽しんでいらっしゃいますか?

ホセ氏:(日本語で)はい、とってもです!
ルシア氏:(日本語で)今日は来てくれてありがとうございます。
二年前に東京に来て以来今回が二回目の来日となりますが、この街は一分ごとに驚きがある街だと思います。
私にとって日本の文化はバスク地方の文化と似ていることがあります。

MC:東京ごはん映画祭とのオフィシャルパートナーシップの経緯を教えてください。

ホセ氏:私たちにとって今回のパートナシップをとても光栄に思っています。
一年前にごはん映画祭の責任者からご連絡いただきましたが、情報交換の観点からしても重要であり、
さらにサン・セバスチャン映画祭にオフィシャルの賞を授与していただけるのも重要なことでした。
今年は『FINDING GASTON (ファインディング ガストン)』が受賞しました。今回のパートナーシップは
バスク地方と繋がる絶好の機会だと思っています。今日お越しの皆様にも是非サン・セバスチャン映画祭に来ていただきたい。
サン・セバスチャンの街は暖かく迎えることでも知られている土地ですよ。

MC:サン・セバスチャン国際映画祭の特徴は、どうのような点でしょうか。

ホセ氏:サン・セバスチャン国際映画祭は、カンヌやベルリン、ベネチアといった大きな映画祭にもカテゴライズされる
大変大きなコンペ型の映画祭です。
様々なジャンルが上映されますが、我々にとって重要としているのは、ラテンアメリカ、スペインというスペイン語圏諸国にも
スポットライトをあてている点です。
また、ラテンアメリカと欧州との合作を調整したりする部門や未完成の作品に出資する為のセクションも用意していることも
特徴のひとつです。
また、スポーツを専門にした上映部門も設けましたが、今年は俳優のオーランド・ブルームさんにお越しいただきました。
彼はモーターサイクルのファンとしても知られていますが、200台のバイクと共に登場していただきました。

MC:今回、「TOKYO GOHAN AWARD」に選ばれました『FINDING GASTON (ファインディング ガストン)』という映画の魅力を伺えますか。

ホセ氏:この映画の見所は、ラテンアメリカで最も知られ、世界的に有名な料理人、ガストン・アクーリオンに絞って描かれているところだと思います。
非常にパーソナルな彼の生涯が描かれていますが、ガストン自身当初は料理とは関係がなかったのですが、人生の中でフランス料理と出会い、
最終的には自国のペルー料理に生かすという独特の手法がこの映画では描かれています。

MC:バスク地方は、美食の街、として知られていますが、フードカルチャーという点では、どのような文化が根付いてますか。

ホセ氏:バスクにとってはガストロミー(美食学)というのは非常に重要な要素。友人が来たらおもてなしするという文化があり、
それは外食だけに限らず、自宅で料理をふるまいます。バスクでは、日本のように女性だけがそれをするのではなく、
男性も腕をふるいますよ。
バスク料理の特徴は、素材に非常にこだわっている点です。海に面している土地ですが、山にも囲まれていますので、
海産物や野菜などの素材自体の良さを尊重しています。
バスクのシェフたちは3、40年程前までは、フランスから多くを学びましたが、現在は中国やシンガポールなどの
アジアに目が向けられており、その中でも日本は親和性が高いです。

MC;実は、本田シェフも、スペインやフランスで修行を積まれいているのですよね。

本田氏:はい。26歳まで5年間フランスの方で修行をしていまして、自分として納得できる修行ができたので、
日本に戻ろうと思っていました。ですが、その頃フェラン・アドリアさんというシェフを筆頭にした「エル・ブジ」のスペインのガストロミー会が
世界の頂点と呼ばれ始めていた時期だったので、このまま帰ったら後悔すると思い、サン・セバスチャンで1年間働こうと思っていたのですが、
結局4年間いることになりました。

MC:スペイン料理の現場の雰囲気はどのようなものだと感じられましたか。

本田氏:ヨーロッパのレストランは大抵そうですが、シェフがオーケストラの指揮者のようにみんなに指示を出して、若い下のシェフたちが
、シェフの考えを理解し、チームとして動いていくというのが主な形です。

MC:映画『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』で描かれているようなチームワークということでしょうか?

本田氏:例えば、フランスなんかだと、一人のシェフが変わると料理の質も変わってしまうというような、レストランが多くあります。
ですが、スペインは厨房が”ひとつのチーム”という考え方が浸透しています。料理人として良い面と悪い面がありますが、
お客様にブレない料理を出すということ、将来の料理界を考えるとチームワークを大事にしているスペインは魅力的だと思います。

MC:本田シェフは、スペイン料理とはどのような出会いがあり、スペイン料理の特徴とどのようなところに最も魅力を感じていらっしゃいますか。

本田氏:先程ホセさんも仰っていましたが、スペイン料理は素材の美味しさを大切にしています。なので、一番の魅力は、素材ですね。
それは日本の和食やお寿司やさんに通ずるところがありますね。
あとは、中世期以降にイスラム教徒排除の為に、彼らの宗教上の理由で食べることができない豚肉を料理の至る所に使い始めたのですが、
それの影響もあって豚肉はたくさん使用すること、土地柄、良質なオリーブがたくさん穫れることから、たくさんのオリーブオイルを使用することも特徴的です。

MC:さて、本日は本田シェフに、東京ごはん映画祭オリジナルもモダン・スパニッシュを創作いただきました。
この機会にスペインの食文化をより楽しんでいいただき、どうぞガストロミーの世界をお楽しみください。
それでは本田シェフ、メニューのご紹介をお願いいたします。

・ゴマのクロスタス⇒地中海などでよく食べられる、中にオリーブオイルを練りこんだスティック状のおつまみ。
・ひよこ豆のサラダ⇒ひよこ豆を柔らかく煮込んでサラダ仕立てにしたもの。
・バカラオ(塩ダラ)のアホアリエロ⇒オリーブオイル、にんにくたっぷり、玉ねぎ、ピーマンなどを塩ダラと共にトマトソースで煮込んだもの。
・イカスミのイカ飯とイカスミの米チップス⇒スペインで有名なイカのイカスミの煮込みを日本のイカ飯のようにしてアレンジ。
                         つけあわせにお米とイカスミでつくったチップスを添えて。
・鶏とチョリソのクロケッタ⇒バルの定番であるクロケッタ。チョリソーで香りをつけた鶏肉のコロッケ。
・ジャガイモトルティーヤのカポティージョ⇒スペインで一番食べられているジャガイモトルティーヤをサンドイッチのような形で提供。

本多氏:映画を観ながらでも食べることのできる、正面をみながらでも食べることができるように考えて、今回作らせていただきました。

その後、読み上げられた『FINDING GASTON (ファインディング ガストン)』監督のパトリシア・ペレスからの手紙の中では、
ペルー人であるペレス監督が自国の状況に悲観的になり、以前は誇りを持てなかったこと、同じペルー人のガストン氏に出会い、
この映画をつくったことがきっかけで、心の底からペルーが好きになったことが語られ、映画を楽しんでほしいというメッセージも寄せられました。

以上。