8/25、大阪市浪速区のロフトプラスワン・ウエストにて特撮美術・特殊造形・フィギュア作家の寒河江弘さんが観客と一緒に粘土でオリジナル怪獣を作ろう!という粘土造形ライブを開催した。

 タイトルどおり観客全員が、百均で購入できる色つき粘土やオーブン粘土、ファンド(造形用粘土)といった様々なタイプの粘土とヘラや竹串、造形用スパチュラを駆使してオリジナル怪獣を作りながらの観戦。時間が限られているため目線は手元、耳はトークを楽しんで爆笑、という珍しい光景が繰り広げられた。

 ゲストは、『ゴジラVSキングギドラ』のアンドロイドM11役を務めたロバート・スコットさん。寒河江氏が企画を務める“ご当地怪獣”((C)㈱第一通信社)のプロデューサーである内野惣次郎さん。子役としてウルトラQ「虹の卵」、ウルトラマン「恐怖の宇宙線」出演、現在はコンテンツビジネスに携わっている。

●“ご当地怪獣”プロジェクトとは?
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 壇上の寒河江さん、内野さん、スコットさんの前には寒河江さん制作のジオラマと“ご当地怪獣”6体が並べられている。大阪であれば大阪の下町に生息する「おせっ怪獣ヒョウガラヤン」弱点はナットーキナーゼ!水戸市に生息する「バチルキング」スーパー粘液が必殺技でヒョウガラヤンの天敵、といった具合だ。

「この“ご当地怪獣”で今年10月までに10の自治体と組もうと思っています。話題になるし、メディアがなんかやろうよとなるわけです。そこから映像につなげたい!」
内野さんが構想を語れば、寒河江さんも熱く答える。
「映像、いいですね!日本の怪獣モデラーさんは、新作の怪獣映画がなかなか作られないから、昔の怪獣を掘り起こすのはいいけど、新しいフィギュアが出て来ないという状況です。だったら俺ら勝手に新しいフィギュア作るから映画になれへんかなという心意気です」

●内野惣次郎さんが語る
実相寺昭雄監督の思い出
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 内野さんは子役時代、劇団に入っていたが、特に『ウルトラマン』、そして何と言っても非常にユニークな実相寺昭雄監督が印象深いと語る。成人し広告代理店に勤務した内野さん。40代になった時、当時玩具のディレクターを務めていた安斎レオさんから来阪される実相寺監督に紹介してもらえることになり、大阪のはり重(老舗の牛肉専門店)向かうことに。
「『ウルトラマン』の撮影では子供に対してはちゃんとしゃがんで説明してくださったのを凄く覚えていて。大人になってみると凄い怖い人だとか、天才だけどおかしい人だとか聞いていたんですが。
「当時は色々お世話になりました」「いや私は子供です」(笑)。そんな丁寧な方でした」

 それを期に実相寺監督が亡くなるまで7年半ほど交流があったという内野さん。
寒河江さんは、晩年の実相寺監督とはフィギュア仲間でフィギュアの話ばかりしていたという。内野さんもその話を受け、
「実相寺さんは食玩集めるのに必死な方で。自宅の近くのコンビニを回るんだけど、お家のない人みたいな風体でおられると。見かけた方がよくよく見たら実相寺監督だったと(笑)。
実相寺さんのフィギュアのコレクションの師となったのは漫画家の加藤礼次朗さん。自分は凄い人なのに、ことコレクションに関しては師匠には従順でしたね」
と思い出を語った。

●ロバート・スコットさんが語るM11の炎上事件!
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 東京に戻られる内野さんは拍手とともに退席。第2部は『ゴジラVSキングギドラ』で実際に撮影で使用され、大森一樹監督から譲り受けたM11の人形と並んで座るロバート・スコットさんの独壇場となった。

 スコットさんが『ゴジラVSキングギドラ』の大森一樹監督と出会ったのは監督がパーソナリティを務める毎日放送のラジオ番組だったという。海外に電話してゲストと話す番組だったが、通訳者の直訳がエンタテイメント番組に馴染まないため、知り合いから通訳として推薦された。パラマウントの役職者に友人がいたスコットさんは、ジョン・フォード監督やマイケル・ダグラスさんをセッティングし大森監督を大喜びさせた。そんな縁がM11役のオフォーに繋がる。スコットさん22、23歳の頃。
「ちょっとの役があるんやけど、アンドロイドで足速い役を探しとんのやけど走れるか?」
「走れるわ!当たり前やろおおお!」
スコットさんの再現トークのテンションに場内爆笑となる。
「最初は10分、20分くらいの仕事と言われて、結局はほとんど出ているんですよ(笑)」

 スコットさんから、『ゴジラVSキングギドラ』でM11が豊原功補さんと中川安奈さんが乗る赤いジープをクラウンで追いかけるシーンの特筆エピソードが紹介された。トラックと接触したクラウンが横転し炎上。片腕が燃えながらM11が出てくるという緊迫のシーン。車が爆発するため、本番は一回しか出来ない。3台のカメラで5つほどのシーンを同時撮影する。M11は服を破り捨てて2人を追いかける予定だった。
「脱ぎやすいように服の内側が破れていたはずなのに、なかなか取れないんですよ。一回しか撮れないと思ってポーカーフェイスでやってたけど、腕の毛が燃えてくるのに、全然取れないから上から脱ぎ捨てて走り出した。カットかかった瞬間に“痛いよ!!!”。腕も燃えてたんですよ!危ないより熱かったですね(笑)」
 危機一髪のスコットさんに会場は爆笑となった。
問題のシーンがスクリーンで流されると服が破れず何度もやり直す、しかし表情を崩さないM11の姿に笑いと大拍手が起こった。

(Report:デューイ松田)