この度、10月18(土)よりシネスイッチ銀座にて公開する映画『マルタのことづけ』の公開に先立ち、本日9月25日(木)トークショー付き特別試写会を開催致しました。

『マルタのことづけ』トークショー付き特別試写会開催概要
日程:9月25日(木) 18:00開場 / 18:30開映  / 20:05〜20:30 トーク 
会場:セルバンテス文化センター東京 地下1階オーディトリアム(千代田区六番町2-9 地下1階)
テーマ:子どもたちに必要なグリーフケアとは
登壇者: NPO法人「AIMS」代表 高井伸太郎氏   主催:ビターズ・エンド  

本作は、メキシコを舞台に新星監督クラウディア・サント=リュスが自らの実体験をもとにした作品。
余命わずかの4人の子どもを持つ母・マルタと、孤独を感じながら生きてきた女性クラウディアの、偶然の出会いによる心の交流を描いた感動作です。母の死を前に張りつめた家族の時間を繊細なタッチでとらえた本作は、各国の映画祭で高い評価を得て、受賞を重ねました。本作の大きなテーマに、「母親が余命わずかの時、4人の子どもたちは残された時間をどのように家族と共有し、そして母の死をどう受け入れるのか」ということがあります。
今回は、がんで親を亡くした子どものグリーフケアプログラムを開催しているNPO法人「AIMS」の代表 高井伸太郎氏をお招きし、本作のご感想と「子どもたちに本当に必要なグリーフケアとは」についてお話いただきました。

実の姉であり、43歳にしてがんでこの世を去った元NHKアナウンサー小林真理子さんが設立者である、NPO法人「AIMS」。その遺志を継いで代表を務められている高井さんは、本作の感想を聞かれて開口一番「マルタと姉の姿が重なりました。
当時6歳という幼い娘を遺して、亡くなっていった姉も、マルタ同様、周囲が驚くほど積極的に、残された時間を娘や家族と過ごすことに費やしていました。
マルタが家族と一緒に海に行くシーンは、余命宣告されてから『海に行きたい』といって、車いすに乗りながら、それでも笑顔で楽しんでいた姉の姿を思い出しました。」と語っていただきました。

「アメリカを中心に、海外では広く知られている『グリーフケア』ですが、日本ではまだ馴染みが薄いんです。
大切な人との死別体験は、大人同様、子どもたちの心にも大きな影響を与えます。表面的には乗り越えたようでも、周りの大人たちを気遣って自分の感情を押し込め、表に出さない子どもはたくさんいます。そんな時に、してあげられることは『マルタのことづけ』のクラウディアのように、そっと見守って、その子供たちの側にいてあげることです。
それが、まさに『グリーフケア』なのです。クラウディアの存在は、マルタの子どもたちにとっても、そして、クラウディア自身にとっても自然に気持ちを打ち明けることができるいい関係性だと思いました。」と、ご自身の活動も交え、興味深いお話を伺うことができました。

ひとあし先に、映画をご鑑賞いただいた観客の方からも「深いテーマを描きつつ、爽やかな映画だった。」
「母の愛情を強く感じ、家族の大切さについて、あらためて考えてしまった。感動した。」との声が上がりました。

■トーク内容
MC    NPO法人AIMSでの活動内容や、子どもたちの変化についてエピソードがあれば教えてください
高井さん「子どもたちは、最初、プログラムに参加すると自己紹介をしてもらうのですが、決して強制ではありません。
自分の名前も言えずに固まってしまう子が多いですが、でもそこで重要なのは、自分と同じ境遇の子どもがいるということを認識することなのです。自己紹介もしたいときにすればいい、自分の感情や心で思ったことを自由に表現させてあげられる場所を提供するのが私たちの役割なのです。回数を重ねるなかで、誰かが側にいてくれることで、心を開いていき自分の抑えていた感情を表現できるようになるんです。」

MC お姉様の小林真理子は、ご自身の余命を知ってマルタのように何か遺されたものはあったのでしょうか?
高井さん「娘が6歳と幼かったので、自分が亡くなったあとの心のケアについて心配し、このAIMS設立を成し遂げました。
また、娘が20歳になるまでの毎年の誕生日に贈るバースデーカードを書いていました。内容も、押しつけがましいものではなく、日常の交換日記をしているかのような自然な内容で、成長していく娘を想像して書いたものでした。そうしたところは、マルタと重なる部分がありましたね。」

高井さん 「大切な人を失った子どもたちのこころの傷は、年月を重ねたからと言って消えるわけではありません。
ふとした瞬間に思い出してしまうものです。アルマンドのように幼くして親をなくした子どもは、思春期になってから、またさびしくなったりしてしまいます。
『グリーフケア』には終わりがありません。喪失体験は特別ではなく、誰でもするものです。だからこそ、クラウディアのようにそっと、そうした子どもたちの側にいてあげることが大切なのです。」

■グリーフケアとは
大切な人を亡くし、大きな悲嘆(グリーフ)に襲われている人に対するサポートのこと。1960年代に米国で始まったとされ、英国やドイツなどでも広く浸透している。日本国内でも、東日本大震災以降に注目されるが、まだまだ取り組みは十分とは言えず、病院などでも継続的に子どもを支援することは難しいとされている。

■登壇ゲストプロフィール
NPO法人「AIMS」  代表 高井伸太郎氏
親をがんで亡くした子どものためのグリーフケアプログラムを開催している、設立からまもなく3年を迎えるNPO法人団体。
43歳で亡くなった元NHKアナウンサーの小林真理子さんが設立を提案。その遺志を引き継ぎ、小林さんの実弟で弁護士の高井伸太郎氏らを中心に活動を広げている。