秩父で撮って、秩父で観る映画祭「ちちぶ映画祭2014〜巡礼〜」が9月15日(月・祝)開催最終日を迎えました。
最終日2作目として特別招待作品「朽ちた手押し車」が上映されました。本作は、三國連太郎唯一の未公開作品として発掘され、お蔵出し映画祭で観客賞及びグランプリを受賞し、30年の時を経て今年5月に劇場公開を果たし、今なお多くの人たちに支持されロングラン上映を続けている作品です。本作に出演している女優・長山藍子さんがトークイベントに登壇されました。

まず秩父の印象について聞かれると
「まだ来たばかりだもの。おそばをいただきました。すごくおいしかったです。」と年齢を経ても変わらない魅力的な甘い声で、会場を魅了した。

「朽ちた手押し車」がお蔵出し映画祭で観客賞・グランプリを受賞した時の気持ちについて
「お蔵出し映画祭っていうのは、世に出ないで眠ってしまっている、いい映画を見つけてくださる有志の皆さんがいらっしゃって、広島の尾道で毎年開催されている映画祭なんです。この映画は、当時私が40代の時に出演して、今私が70代だから、30年ぐらい前になるのね。私も舞台やTVで忙しくしておりましたから、この映画のことを忘れていたんです。そしてお蔵出し映画祭でこの作品を上映しますというご連絡をいただいて、この作品のことを思い出したんです。お蔵出し映画祭で上映されるということで、観客として劇場の後ろの方でそーっとみていたんですが、もう、涙が出て、涙が出て・・・。本当にいい映画だなぁと思いました。そうして、映画祭の授賞式で観客賞をいただいた時にはすごくうれしくて、ボロボロボロボロ涙が出てしまいました。主演の三國連太郎さん、田村高廣さん、初井言榮さん、皆さんお亡くなりになってしまって・・・。それで私が映画祭に出席させていただいたんですが、観客賞なんていう本当に素敵な賞をいただいて、感激して席に戻ったら、グランプリも受賞ということで、その時には腰が抜けちゃいました。本当にうれしかったです。」

この作品が未公開となってしまった背景には、当時の時代背景が影響している。バブル期に入る頃で、社会的な問題が詰まった本作が時代に合わないという判断で公開が見送られてしまったという。そんな本作が現代で蘇った感想をお伺いすると
「この作品の中には日本の家族の原点がないわけではない。日本人が忘れかけてしまっている家族の核となるものが温かく描かれていると思います。そんな作品が30年経った今、多くの人たちにいい作品だと思っていただけて、支持されたんだと思います。」

長山藍子が演じた嫁については
「日々いろんな愚痴や不満もあると思うんだけど、自分のポジションをきちんとわきまえている女性です。だから娘にもきちんと説教もできるわけです。それから、今私の年代になって改めて思うことは、田村高廣さん演じる夫と二人で布団の上で寝転がって嫁の私が夫に愚痴をこぼして、夫はそれを「うん、うん」って聞いているだけのシーンがあるのね。作品の中では描かれていませんが「あのあと、あのだんなさんは抱いてくれたな」って思ったんです。ちょっと大人の話なんだけど、男と女って、いくら相手に対して思いやりや優しさがあったとしても忍耐だけでは夫婦関係は続かないものなんです。」と熟年者ならではのコメントを述べた。

最後に今後の活動について聞いてみると
「NHKの土曜ドラマ(21:00〜)「限界集落」という農村のお話のドラマに、おばあさんの役で出演します。そして明日からクランクインです。全部で5話のドラマです。私の白髪頭も見てみてください。」とお茶目に話してくれた。このドラマは、2015年新春放送予定となる。