ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門で監督賞含む4賞ほか、多数の映画祭で数々の賞を受賞しているウベルト・パゾリーニ監督による新作『おみおくりの作法』が、2015 年 1 月シネスイッチ銀座での公開に先立ち、9 月 12 日(金)〜15 日(月)開催の、なら国際映画祭にて日本初公開されました。また、コンペティション部門に出品された本作は、同映画祭にて『観客賞』を受賞致しました。

本作は、孤独死した人を見送る仕事をしている寡黙な民生係ジョン・メイが故人の人生を紐解くためイギリス中を旅し、人々と出会う中で、新たな人生を歩みだす姿を繊細な脚本で描いた感動作です。監督は『フル・モンティ』や『パルーカヴィル』といった作品を生み出した名プロデューサー、ウベルト・パゾリーニ。主人公ジョン・メイを演じるのは『ワールズエンド 酔っ払いが世界を救う』『思秋期』『戦火の馬』など、イギリスを代表する実力派俳優、エディ・マーサン。几帳面で誠実な民生係という難しい役どころを情感豊かに魅力的に演じています。
今回『おみおくりの作法』が上映されたのは、「NARAtive コンペティション」で、映画祭のメインプログラムとなる部門。この部門は、世界の新進気鋭の監督による日本初公開作品を集めたコンペです。このプログラムには、カンヌ、ベルリン、ロッテルダム、ロカルノなどの世界の主要映画祭にて評価を得て来た傑作が集まり、観客やメディアからの注目度も高まりました。又、審査員には写真家・プロデューサーとして世界的に有名なルチアーノ・リゴリーニ、実力派俳優である夏木マリ、スペインの映画監督ルイス・ミナロが務めました。

『おみおくりの作法』の上映は、9 月 14 日(土)・15 日(日)に行われ、15 日には来日中のウベルト・パゾリーニ監督が上映後に舞台挨拶を行いました。当日は、ほぼ満席の場内はエンディングあたりから、すすり泣きする音が聞こえ、上映後に登壇したMCも本作を観かえして感動のあまり泣きながら登場するという一幕も。熱気冷めやらぬ客席からは、「ジョン・メイのキャラクターが魅力的で引き込まれました!」「黒澤明の『生きる』を思い出しました!」「来年の公開が待ち遠しい!」など絶賛の感想が監督に投げかけられました。また、同じく 15 日に行われた受賞発表では、見事、出品 8 作品中ダントツの票を得て「観客賞」に輝きました。観客のアンケートから決まる「観客賞」。14 日、15 日ともに回収率は他のどの作品よりも高く、観客の満足度の高さがうかがえました。パゾリーニ監督は「ありがとうございます。奈良では見るもの全てが素晴らしく、ここを離れるのが残念に感じます。」と笑顔で応え、また地域社会の繋がりについて描いた作品にふれ、「この映画は完成までに 2 年かかりました。社会というのは弱者をぞんざいに扱うもので、何も言えない死者は一番の弱者です。そのような振る舞いは社会以外の他の面にも反映されていくものだと思います。この映画を各地の映画祭で上映してきて、この映画を見た後にその国で一人でも隣の家のベルを鳴らしてくれればうれしいです。」と熱くコメントした。