映画ファンからの熱い支持を集め、今年で計5回目を開催中の「第二回 新・午前十時の映画祭」。過去4回を含め、現在までの映画祭通算動員数は200万人超えています。
本日9月15日(月)TOHOシネマズ日本橋にて、その熱心なお客様たちを対象に、“20世紀の名作を劇場で見る意義と面白さ”を知ってもらうため、今最も映画ファンからの信頼が厚い映画評論家・町山智浩氏を講師に招き特別講座を開講いたしました。
上映作品は、オーソン・ウェルズ主演、キャロル・リード監督の傑作サスペンス、『第三の男』(1949)。上映後には、この映画の作品論を中心に、「映画における悪役」というテーマに沿った講習と観客の皆さんからの質疑応答で映画上映+町山講演という約4時間に及ぶロング・イベントを実施。

この映画の軸となるミステリー・サスペンスの本質に、実は意味が無いのです。オーソン・ウェルズ演じるハリー・ライムが行う悪事の数々は本人にとっては悪戯程度のものでしかなく、この映画自体も勧善懲悪ではない。だから彼はいつも笑っていられるんですね。こういったキャラクターは名だたる名作の悪役の数々に影響を与えているんです。(「バットマン」シリーズの)ジョーカーや(「羊たちの沈黙」の)レクター博士に「時計じかけのオレンジ」のアレックスなんかもオマージュされています。

魅力的な悪役というのは実は正論を語っていて、正義の味方が語っているのが理想であったりするんです。そのため観る者にとって説得力があり、そのカリスマ性で物語に引き込まれやすくなる。それがハリー・ライムであり、数多くの映画に登場する悪役達の軸になっているキャラクターなんです。

さらに、並木道のラストシーンなんかはよく他の映画で見ることがあると思いますが、「ディパーテッド」のラストもマーティン・スコセッシはこのシーンのパロディであると公言しています。また“人が死んだと思っていたら生きていた”というシナリオは「ロング・グッドバイ」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」にも見られる結末ですよね。

「映画における悪役」というテーマの下、不朽の名作「第三の男」がくの映画に与えた影響は多大なものだと語った町山氏。最後には自身が共同脚本を務める「(実写版映画)『進撃の巨人』も観て下さいね!」としっかりPRも忘れず、町山氏らしいユーモアたっぷりの講演に観客の方たちも大満足の様子でした。