廣木隆一監督、染谷将太主演の『さよなら歌舞伎町』(2015年1月公開)が9月7日(モスクワ現地時間)、ただいま開催中の第39回トロント国際映画祭「Contemporary World Cinema」部門にて、ワールドプレミア上映が行われました。上映前舞台挨拶とQ&Aには廣木隆一監督が登壇しました。

第39回トロント国際映画祭「Contemporary World Cinema」部門
●日程/モスクワ現地時間9月7日 日本時間9月8日
●会場/Scotiabank(キャパ387) 
●登壇者/廣木隆一監督

公式上映前のプレス試写では「人間の心情がよく描かれていて、想像力豊かなインディー&アート的作品であり素晴らしい!」と評判を呼んでいた本作。
本日のワールドプレミア上映では作品に寄せる観客の関心の高さを表すような長蛇の列。老若男女問わず多くの観客が上映に駆けつけ、387席の会場は満席だった。廣木監督は、プログラマーのGiovanna FULVI(ジョバンナ・フルヴィ)さんからステージに迎えられた。キャスト起用について聞かれると、「染谷さんとは以前からずっと一緒に映画をやりたかったので、今回オファーした。その(有名ミュージシャンを目指す)彼女役には、本当に歌が歌える人が良いと思って、前田敦子さんにオファーした。難しい役柄だし、まさか受けてもらえるとは思わなかったが、受けてくれて実現したキャストだ」と秘話を語った。また、「映画を観終えたら、皆さん必ず歌舞伎町に行きたくなるはず」とコメントすると観客からは笑みが。また、「エンドロールの後に、作品の希望(ホープ)が隠されているので、最後まで作品を観て欲しい」とメッセージを送った。

上映中は笑いが起こるなど、作品のもつ温かさもあって非常に良い雰囲気だった。上映後に行われたQ&Aにはほとんどの観客が残り熱心に監督の話に耳を傾けていた。映画監督を目指す観客から、監督志望の若者へのメッセージを求められると「ほとんどないのですが・・・」と始めながら、本作品が2週間程で撮影される中、ロケバスもなく機材も持って移動、ほぼ寝ない日々が続いた現場の様子を語り、「そんなこともやってみた方がいいかな。そうしたら、色んな映画ができる」と締めると会場から笑いが起こった。歌舞伎町を舞台にした理由について「映画を始めた頃はよくお酒を飲んだり仕事をしたりと、色々と教えてくれた町。そこを舞台に映画を撮りたかった」と語った。また、周りのアドバイスを受けて歌舞伎町を避けてきたというかつて日本に住んでいた観客は、本作品を観て、歌舞伎町に行かなかったことを後悔したと語った。監督から「惜しかったなぁ」とコメントが。本作品のキャラクターは皆、歌舞伎町から出て行きたいが、歌舞伎町への愛着心を持っているようにも感じる。監督も同じかと質問がでると、「今ある歌舞伎町を愛しており、町が変わっていくことを寂しく思ってる」と答えた。

【トロント国際映画祭プログラマー Giovanna FULVI(ジョバンナ・フルヴィ)さんの『さよなら歌舞伎町』選定理由についてのコメント】
「今季有数の日本映画といえる『さよなら歌舞伎町』で、廣木隆一監督は様々な人物が交錯する或るラブホテルでの24時間を赤裸々に描いています。この特異な施設に出入りする、それぞれのキャラクターの内面を、深い想いを込めて繊細に描き、あたたかくも洞察力のある作品へと仕立てています。国際的な成功を収めた『ヴァイブレータ』からあまたの時を経て、今年トロントで本作品のワールドプレミアをさせていただけることをとても嬉しく、光栄に思います。」