夏休みに合わせて、シネ・ヌーヴォXにてシネアストオーガニゼーション大阪(CO2)のワークショップで制作した『映画列車〜1分映画を作ろう〜』が8月16日から8月29日までの日程で公開されている。作品は『こども映画ワークショップ』(2013)、『映画列車』(2014)の2本。それぞれ参加者が制作した1分間映画とメイキング映像で構成され、慣れない映画制作に悩みながらも様々な発見を得ていく子供と大人達の姿をユーモラスに捉えている。

 CO2は今年で11回目になる大阪市の文化事業のひとつ。全国の映画を撮りたい人々から長編映画の企画を募集し、助成金と制作支援で長編映画制作をバックアップしてきた。
助成作品の制作と並行して様々なワークショップを行っており、その1つが3年前から実施している“1分間映画”。リュミエールに習って、「1分」「フィックス(固定カメラ)」「サイレント」で物語を見せるという試みだ。

 8月23日、『映画列車』のメイキング構成を担当した板倉善之監督とCO2事務局・金井塚悠香さんのミニトークが行われた。

●カメラで頭の中は写らない
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 今回公開中の『こども映画ワークショップ』は小3〜中3までの子供たちだけで映画を制作したが、翌年の『映画列車』は子供達に加え大人も参加できることになった。
 事務局の金井塚さんは
「大人と子どもがルールがある中で映画を作ったらどんな違いがあるか。あるいはあまり違いが出ないのか?というところで大人から子供まで参加できるワークショップを開催しました」

 『映画列車』メイキングのカメラで撮影に同行した板倉監督は
「実際メイキングを撮ってみると、事務局長の富岡さんがよく大人は観念的に考え過ぎると言っていて。
誰かが好きとか、何かが辛いといった気持ちのお話を書きますが、カメラを向けた時に何を考えているかは写らないんですね。
気持ちを何かに媒介しないと。それを子供・大人関係なく、つかめる人・つかめない人がいましたね」

 
 このワークショップでは参加者それぞれが監督となって、1本の作品を作る。自分の考えたお話や画面のイメージを他の参加者に伝えてカメラや俳優として手伝ってもらう。『映画列車』のメイキングには『誰かと一緒に何かをやること』というタイトルがついている。
「“こういう映画を撮りたい”と人に伝える時も“こういう映画”は頭の中にあって傑作が出来てるんですけど、何かを媒介して伝えないといけない。例えば言葉だったり。完成したい表現の前に無数の表現があるんです」
 板倉監督も金井塚さんも、映画制作だけでなく実際の生活における“人とコミュニケーションを取る”ことと同じだと実感したという。
 金井塚さんはコミュニケーションの難しさについて、
「自分がやりたいイメージはあるし、イメージがあることも周りから見たら分かるけど、それが一体具体としては何なのか?どう出して行けばいいのかというところで皆さん悩みますね。苦労していたのは大人の方が多かったかも。観ていただいたら分かるんですが、子供だけでやった『こども映画ワークショップ』の時は見えなかったものが、大人が参加した『映画列車』ではこうなるか?という(笑)」

●1分間映画で見えてきた大人と子供の違い
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 板倉監督は現場で大人と子供の違いを感じたという。
「言葉の違いははっきり出てましたね。子供は“こうしたいねん!”と言うけど、大人は“こうしたいんですけど、どう思いますかね。無理やったらいいんですけどね”どっち?みたいな(笑)」

 その原因について金井塚さんはこう語る。
「失敗するのはなるべく避けたい。映画って、考えてることをさらけ出すことにもなるんで、恥ずかしくないようにってなるのかもしれません」
 普段仕事や人との付き合いの中で、誰でも恥はかきたくないし、失敗はしたくない。しかしこういった場で、大人バリアを取り払って自分をさらけ出したところに人の感情を動かす表現が見つかるのかもしれない。

 最後に板倉監督から
「話を聞いて、大変なワークショップなんじゃないかって印象持たれたかもしれないけど(笑)。
参加すると、“ちょっとした動きも考えて演出つけてるんや”とか。“何故ここにカメラを置いてるのか”とか。映画の見方が変わるきっかけになるかも。主催者のように宣伝してしまいました(笑)」

 金井塚さんも
「成功するのがゴールではなく、形にするのがゴールなので」
と参加を呼びかけた。

●今年もワークショップ『映画列車〜1分間映画を作ろう〜』開催決定!
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11月23日、24日、30日の3日間、今回は大阪大学の豊中キャンパスと港区の繁栄商店街が舞台だ。大人も子供も参加できる。定員は各回子供5名、大人5名。参加費も2000円とリーズナブルな設定だ。

毎年参加している小6女子は1分間映画のことをこう評した。
“たかが1分、されど1分”
人生の縮図が透けて見える1分の映画制作。気付きを得ることでものの見方が変わるかも!?

(Report:デューイ松田)