韓国のみならず、ヨーロッパでも絶大な人気を誇り、近年、特集上映をきっかけに日本でもファンが急増しているホン・サンス監督。加瀬亮主演『自由が丘8丁目』(12月公開予定)の本年度ヴェネチア国際映画祭への正式出品が決まるなど、その勢いは止まることを知りません。そのホン・サンスが昨年発表した恋愛映画の新作2本『ヘウォンの恋愛日記』、『ソニはご機嫌ななめ』がシネマート新宿にて公開中。連日満席が出るほど盛況の本作の公開を記念して『ソニはご機嫌ななめ』の上映後にイラストエッセイストの犬山紙子さんをお招きしてトークイベントを行いました。

最近、ご結婚されたばかりの犬山さんに、ホン・サンス映画から学んだ明日から使えるモテ・テクニックと、すぐ隣で誰かが恋話しているようなホン・サンス映画の、恋愛あるある話をたくさん語っていただきました。

【開催概要】
日程:8月23日(土)18:20−18:50 
場所:シネマート新宿 スクリーン2(新宿区新宿3丁目13番3号 新宿文化ビル7F) 
登壇者:犬山紙子さん(イラストエッセイスト)

【トーク内容】

———『ソニはご機嫌ななめ』をすごく気に入っていただいたとのことですが。

犬山さん:男性が描いた女の子っていうのは、神格化されてることが多くて、かわいくてちょっと変なんだけどピュアで一途みたいな女の子だったり、もしくは風俗とかで働いてるんだけどすごくピュアみたいな、そういう設定の女の子が多くて、ファンタジーだからいいんですけど、こんな都合のいい女の子はいないよねと思ってたので、『ソニはご機嫌ななめ』を見てすごいと思いました。神格化されずにヒロインが描き切れていると思って感動しました。

———神格化されていない、主人公ソニのキャラクターをどうご覧になりましたか。

犬山さん: 最近よくサークルクラッシャーと言う言葉をネットなんかではよく聞くんですが、そういうタイプかなと思いました。ひとつのサークル、集まりの中にいてみんなをメロメロにさせて、仲を悪くする女の子ですね。ファム・ファタール的な女性ですね。それで、クリエイターっぽい人が集まるサークルには、ソニのような人が存在しがちで、みんなでマンガ書こうよっていうコミュニティの中には実際いましたね、こういう人。そういう人が巻き髪に白ワンピとかだと、モテを狙ってるとわかってみんな警戒するんですよ。ただソニくらいの絶妙なファッションでみんな警戒しなくなるんですよ。肌の露出もないし、デニム履いて洋服に無頓着な女の子のイメージなんですよ。スッピン、黒髪、マフモコ……マフラー巻いて髪の毛の後ろがクシャってなるんですよ(笑)、それにリュックとかも男性みんな好きじゃないですか。そういうので警戒心を解きつつ、実は計算されていて、でも実は選ばれし女子にのみ出来ることだと思うんですよ。

———そんなソニを好きになってしまう男性3人はどうですか

犬山さん:メッチャかわいくて、バカだなーと思いながらもホントかわいいと思って(笑) 男性3人はクリエイターなのでソニのことをめちゃくちゃ神格化してるんですよね。「あいつはかわいいけど、ちょっと変わってるんだよ」とか。そこにホン・サンス監督の3人の男性についての“愛のある皮肉”をすごく感じて、その皮肉を交えて見ると、すっごくかわいく見えますね。バカだなーとは思いますけども。

———実際、ソニは幸せなんですかね。

犬山さん:どうですかね。 本人の幸せをどこに置くかだと思うんですけど、彼女って夢を叶える女性だと思うんですよ。周りの男の子がドンドンドンドン押し上げてくれるというか、これもクリエイター女子あるあるだと思うんですけども。クリエイター志望で、かわいくって、ちょっと素朴な感じのする子っていうのは、才能のある男性が、ちょっとでもいいところすごく褒めて、上に上げて伸ばしてくれるいい環境に来ることが多い。女からは嫉妬を買うと思うんですけど、最終的に夢を叶えるっていうのは案外できるんじゃないかなと思うんです。ただ奔放さが事件を呼ぶことがおおいので、私生活はハラハラするものになるんじゃないと思いますね。

———ソニに学ぶ、明日から使えるモテ・テクニックを教えてください。

犬山さん:冒頭で言ったファッションとか、ただあれは選ばれし者のみのもので。ただ、やっぱり地味になり過ぎちゃったりもするので、一見無頓着に見せるっていうのはすごい強いかなと思います。「男の目線を意識してませんよ」っていうのはすごく使えると思います。ソニは「オレだけにしかわからない、あいつの良さ」みたいなのを演出するのがすごくうまくて(笑)いつもソニは1対1で全部勝負をしかけてる、誰かいる時に勝負をしかけるんじゃなくて。ちゃんと1対1で女の一面を見せたりする、っていうのはやっぱりうまいですね。頬っぺさわるとか、お母さんが子どもを触るような仕草でもあり、やっぱりちょっとドッキリさせるみたいなほんとにいいあんばいのスキンシップですよね。

———犬山さんの「モテ」の分類だと、ソニはどう位置づけされますかね?

犬山さん:王道モテと邪道モテ。ソニはまさしく邪道モテタイプじゃないですかね、サークルクラッシャータイプ。ソニは、またその中で分類するとニッチモテというところにあるのかなと思います。女の子があまりいないところに入っていって、いまで言うとオタサーの姫、オタクのサークルにひとりいる女の子、それが姫って呼ばれるんです。ソニがもし女子アナみたいな中に入ったら、うまくいかないんですよ。ちゃんとウブなクリエイター男子の所にいってるっていうのはすごいと思います(笑)

———ほかにも、ソニの恋愛テクニックはありますか。

犬山さん:ソニはもう、はぐらかす能力がピカイチだなと思いました。男の子が核心をついた話をしようとするじゃないですか、その時に「また今度ね」っていうんですよね。そこをスパッと断るんじゃなくて、まだ何かあると匂わせつつ今は言わないみたいな、今は私も辛いのよ、みたいなことを言いながら、期待しか煽らないみたいな。演歌の女みたいなすごいテクニックを使いますね。“はぐらかす”っていうのは昔からある恋愛のテクニックのひとつだなと見ながら思いましたね。