2013年カンヌ国際映画祭批評家週間の観客賞を受賞、さらには全米で今年公開された外国映画トップの興行成績を打ち出したインド映画『めぐり逢わせのお弁当』が8月9日よりいよいよ公開。今後活躍が期待される、インド出身・アメリカで映画制作を学んだリテーシュ・バトラ監督が初来日を果たしました。そしてこの公開に先駆け、バトラ監督のティーチ・インつき試写会が行われました。

●日時:7月30日(水)20:00〜 
●場所:京橋テアトル試写室 
●登壇者:リテーシュ・バトラ監督(35)

<挨拶>
バトラ監督:今日はお越しいただきありがとうございます。この作品は、去年のカンヌ国際映画祭でワールドプレミア上映され、その後世界各地で公開されました。そしてこの度やっと日本公開となり、実は日本食が好きというのもあったので、今回来日できてよかったです。ありがとうございます。

<質疑応答>
観客A:印象深いセリフが多く、感動しました。これらのセリフは、全て監督が考えたことなのでしょうか?
バトラ監督:今回は自分で脚本を手掛けているので、もちろんセリフも自分で考えました。しかし、映画に感動したということは、決して私の力ではありません。観客の力です。映画というのは、観ている方々がそれぞれ自分の人生を投影させて観ることで、その人のものになると思っています。だから、この映画に感動したのであれば、それはあなたのおかげなのです。

観客B:主人公たちの手紙のやり取りなど、顔の見えないコミュニケーションには何か意図があるのか?
バトラ監督:なぜ姿を見せないかというと、イラとサージャンは“囚われている人間”だと考えていたからです。サージャンは“過去”、イラは“自分の家”という“檻”に囚われているのです。例えば独房にいる場合、隣の人の声は聞こえるけど姿は見えませんよね。このように“囚われている”ということを強調するために姿を見せないやり取りにしました。また、手紙という手法も自然に湧き出たものです。主人公たちは、物事がより簡単だった時代にノスタルジアを持っています。私なら、「電話番号を教えて下さい」とか「メールアドレスを教えて下さい」と言ってコミュニケーションをとるかもしれないですが、この2人は奥ゆかしい人物なので、そんなことは絶対にしない。となると、自然と手紙という手法に行きつきました。その過程で、自分の中で温めてきたキャラクターが活きてきました。

観客C:この作品は“生活の音”がとても効果的だったように思います。例えば、街の雑踏や子どもたちが遊んでいる声、料理中の音などが印象的でした。これらの“音”は、作品にとってどのような影響を与えていると考えますか?
バトラ監督:本作はインド・フランス・ドイツの合作となります。そのような経緯もあり、ドイツのベルリンでサウンドデザインを行いました。通常インド映画というと、やはり楽曲に重きがおかれます。しかし、キャラクターのことを考えると、この作品においては楽曲が観客の感情を導くということはないと考えました。2〜3ヵ月かけてサウンドデザインをじっくり行うことで、キャラクターの内なる風景を描いたつもりです。

観客D:影響を受けた、または好きな映画監督は?
バトラ監督:小津安二郎、ルイ・マル、イングマール・ベルイマン、アッバス・キアロスタミなどの監督たちの作品が好きですね。それぞれ素晴らしい才能を持っているにも関わらず、決してそれを見せびらかすような作り方をしない。キャラクターに耳を傾けて、自然な形で物語を紡いでいく。そのような作り方がとても好きで、私も彼らのように映画を作ろうと精進しております。18歳の時に進学のためアメリカへ渡ってからワールドシネマを観ることができたのですが、それ以前に、サタジット・レイやグル・ダットという大好きな監督の作品も見ていますし、黒澤明の『乱』や『七人の侍』からも影響を受けました。