韓国・富川市で7/17より7/27まで開催中のプチョン国際ファンタスティック映画祭2014。48カ国から約210本の作品が公開される真夏のジャンル映画の祭典だ。日本からは、ゴジラ特集7本や『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(行定勲監督)、『土竜の唄』(三池崇史監督)、『ライヴ』(井口昇監督)、『幕末高校生』(李闘士男監督)、『ちょっとかわいいアイアンメイデン』(吉田浩太監督)、『スイートプールサイド』(松井大悟監督)など計26本の作品が招待された。
7/19、CGV Bucheonにて日韓合作の『ある優しき殺人者の記録』(白石晃士監督)ワールドプレミア上映が行われた。

上映後の舞台挨拶には、白石監督、主演のキム・コッビさん、葵つかささんが登壇。

「今日はこの作品を見て頂きありがとうございます。前の方に座って居られた方は、酔ってしまったらすみません」

この作品は、『ブレアウィッチ・プロジェクト』以来『REC』『パラノーマル・アクティビティ』といったドキュメンタリー形式のホラー作品でメジャーになった主観映像(POV方式)で構成されており、白石晃士監督の人気シリーズ『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』や『ノロイ』『オカルト』『超・暴力人間』等の作品でもおなじみの手法だ。
20人以上を殺害した犯人パク・サンジュン(ヨン・ジェウク)の招待で韓国の廃屋になったアパートに踏み込むレポーター・ソヨン(キム・コッビ)と日本人カメラマン田代(白石晃士監督)。衝撃の映像を追う手持ちのカメラが、強引に観客を現場に立ち会わせる。インターネットの前売り、当日券ともに完売の劇場で、86分間カメラに伴走した観客を気遣う白石監督の言葉からトークがスタート。

司会者から、まずキム・コッビさんに「撮影で大変だったこと」について質問が挙がった。コッビさんは先月香港で撮影したDieu Hao Do監督(ドイツ)の作品で染めたヴィヴィッドなピンク色の髪というインパクトのあるスタイル。7/17の映画祭オープニングのレッドカーペットでも観客を湧かせたばかりだ。

「撮影時ソウルはとても寒かったです。撮影現場は埃が凄くて、カットがかかる度に外に出て新鮮な空気を吸うことになって大変でした」

レッドカーペットと同じくピンクのミニドレス姿で美脚を披露した葵つかささんへ
「思い出や印象に残っていること」の質問。清純派のAV女優として人気の葵さんは、米村亮太朗さんと野獣派純愛カップルを演じている。

「今回この作品で変わった役をやらせてもらいました。耳をかじるシーンがあって生まれて初めての経験だったので難しかったです」と今までにない役の苦労を語った。

「確かに衝撃を受けました(笑)。効果音も凄くよかったです」と司会者。

白石晃士監督には「作品の内容、スタイル」について質問が。

「スタイルは、全体がワンカットに見えるような作品を撮ってみたかったので、この機会にやらせて頂きました。
内容としては、非常に純粋な目的のために犯罪を犯してしまう人物の側に立った作品をよく撮っているんですが、今回もそういうものが撮りたかったんです」

観客の若い女性から「映画の中での神の設定」と「ラストシーンの展開」について質問が挙がった。

白石監督は「神様は人間の価値観は通じない相手。人間にとって蛆虫とコミュニケーションが取れないのと同じで、神様にとっては人間が蛆虫のような存在でないかと。それくらいの価値観の違いがあると思っております」と回答した。

ここで連続殺人犯パク・サンジュン役のヨン・ジェウクさんが遅れて登場、コッビさんはジェウクさんにマイクが渡るよう気遣いを見せた。ジェウクさんは、
「1人自費でやって来ました!」と観客を笑わせた後、
「もう一度謝ります。なんでもしますので」と到着が遅れたことを謝罪した。
コッビさんが、観客から「ラストシーンの展開」について質問が挙がったことを教えると、ジェウクさんも
「監督、どうしてですか?」と改めて質問が。
(※注:9月日本公開を控えているため、白石監督の回答は伏せます)
更にジェウクさんからキーパーソンになる女性とコッビさん演じるソヨンについて、
「監督のタイプはどちらですか?」と直球の質問が飛び、白石監督の
「私はキム・コッビさんが好きです」という回答にコッビさんと観客が爆笑する一幕も。

男性の観客から葵さんと白石監督に
「韓国語の作品になっていましたが、コミュニケーションはどのようにとりましたか?」
「監督が今回韓国を舞台に選んだ理由は?」とそれぞれ質問が挙がった。

葵さんは
「コッビさんが日本語が上手だったので心配することもなく、撮影の合間に最近はまっているアーティストEXOを教えてもらったりしてました(笑)」

すかさずジェウクさんが「僕はどうだった?(笑)」と聞くと、

「凄く合間に寒かったので気を使ってくださいました。私がずっと裸だったので服をかけてくださったり。凄く気配りをしてくださって優しい方なんだなぁと思いました」と、笑顔で答えた。

白石監督は
「韓国の会社から仕事の依頼を受けて韓国で撮るという流れになりました。低予算とはいえ、変わった内容なので日本では企画が成立しないですね。今回はこういった内容を韓国でやらせてもらえて良かったです。
韓国の役者さんやスタッフと作品を作ってみて、仕事に向き合う姿勢の気持ちよさを感じました。日本は殺伐とした現場になってしまうことが多いので(笑)。やりやすい現場でした」と撮影の様子を振り返った。

『ある優しき殺人者の記録』は、プチョン国際ファンタスティック映画祭2014では7/19、7/23、7/25と計3回上映。
悲鳴と絶叫に彩られた殺伐とした展開ながら、「愛する」とは、突き詰めるとこんなに真っ直ぐでいびつなものなのかもしれないと最後に思わせる感動作に仕上がっている。
日本では9/6から全国順次公開予定。

(Report:デューイ松田)