フランス映画祭2014、『バベルの学校』トークショー、Q&Aで撮影秘話を赤裸々告白!
6月28日、2014年秋公開予定のフランス映画『バベルの学校』が公開に先駆けてフランス映画祭で上映され、上映後にジュリー・ベルトゥチェリ監督と先生のブリジット・セルヴォーニさんをゲストに迎えトークショー及びQ&Aが開催されました。
ーー監督から一言お願いします。
この度初めて私のドキュメンタリー映画が日本で上映されることになり、ユニフランス、ユナイテッドピープルの方々にお礼したいと思います。この作品が日本で上映されるにあたっては多くの方々の協力をいただいているのでこの場を借りてお礼差し上げたいと思います。
ーーブリジットさんも一言お願いします。
私は映画関係者ではないのでよく分かりませんが、この度初めて日本に来日し、感激しています。やはり一番気になるのは、皆さんがこの映画を観てどのように感じてくださったかということです。是非聞かせていただきたいと思います。
ーー監督はどのようにブリジットさんと出会い、どのようにしてこの映画のプロジェクトが誕生したのについて教えてください。
監督:私は毎年フランスで行われているドキュメンタリーキングの フェスティバルで審査委員長を務めており、その場でブリジットさんと偶然出会いました。その時に先生が15人の祖国の違う生徒を連れてきており、作品に非常に感銘しました。その場所で私は20ヶ国以上の国籍の異なる子供達がひとつのクラスで一年間を過ごすという経験を私も撮ってみたいと思いました。そのような偶然がきっかけでこの作品を作ることになりました。
ーー『パパの木』と『優しい嘘』と『バベルの学校』で共通していることとして「命」がかかっているというような感じがありました。祖国に帰ることになったら命が危ないという子もいたと思います。監督は映画を作る時に、人間の命や死というものを考えているのでしょうか?
監督:私も常に生と死というものは意識していますが、作品を作る際には特にそのようなことを意識するわけではなく、今回の作品のように辛い経験をしてきた子供たちを見ているとその中に必然的に生死のようなものが反映されてくるというわけであり、試練を乗り越えている子供たちを見る中でそういったものを感じていただけたら良いと思います。
ーー外国にルーツを持つ小中高校生に学習支援をしているのですが、生徒たちの接し方や引き出し方について気をつけていること等を教えてください。
ブリジットさん:一番大事なことは子供の声に耳を傾けるということです。常に生徒を励まし続けること、生徒の心の中の意見を引き出してあげること、生徒自身の価値を引き出すことによって自信を持たせてあげることの3つが非常に大事になってくると思います。
監督:この先生の凄いところは、成績をあまり強要しないでもし点数が悪ければ「先生の方が説明が悪かったのね」ということで同じ問題を2〜3週間後にテストしてあげて、その結果がまた悪ければ3回目もテストをしてあげる。そして3回のうち一番点数の良いものを生徒の点数として記録してあげるというようなやり方を先生はしていました。その点に関して私は感銘を受け教育というものはこういうものなのではないかと思いました。
ーー生徒が宗教の違いで口論になってしまったときどのような心構えでいるのですか?
ブリジットさん:フランスでは宗教を教育の場に持ち込んではいけないという考えがありますが、無宗教の人の立場について討論するというようなことは、先生が上から目線で抗議をするというのでは生徒には伝わりません。そういう意味では、子供達の中から問題を引き出して、自分とは違う宗教を信じている子がいるんだということを理解するようにし、喧嘩ではなく議論することによって相手の立場を考えさせ、意見を交換することによって、一緒に暮らしていける、学んでいけるのだということを生徒たちに自ら理解させる、というようなやり方を選びました
ーー生徒のそのままの表情をどのようにして撮影したのかについて教えてください。
監督:ドキュメンタリーは時間をかけて作り、この映画も1年間かけて撮影をしました。その過程において自己紹介等も何度も生徒たちと行ったり、週に2、3回ほど撮影に行った際も、撮影者と音響の2人のみで訪問し、私自身がカメラをもって撮影していました。生徒たちに指示をすることは一切なく、カメラも一定の距離をとって撮影していました。これは生徒と監督間での信頼関係があったからこそできたのだと思います。
ーー撮影後の子供達のことについて教えてください。
監督:みんな楽しく過ごしているようです。特に中国の女の子は最初の頃に比べると社会に溶け込んで幸せな生活を送っています。落第しかけた女の子も進級することができ、全員が高校に進学することができました。
ーー先生は今も子供達とコンタクトがありますか?
ブリジットさん:適応クラスは先生と生徒の信頼関係が強いので卒業後も連絡をとっています。また、生徒同士も未だに連絡を取り合っているということで嬉しく思います。
【作品概要】
『バベルの学校』ジュリー・ベルトゥチェリ監督作品(『パパの木』『やさしい嘘』)ある教師の人生最後のクラスにそれぞれの事情をかかえて集まった国籍がバラバラの生徒たち…。出会い、そして別れ。国境を超えた友情に心温まる感動のドキュメンタリー。
〜SYNOPSYSアイルランド、セネガル、ブラジル、モロッコ、中国…。世界中から11歳から15歳の子どもたちがフランスにやって来た。これから1年間、パリ市内にある中学校の同じ適応クラスで一緒に過ごすことになる。24名の生徒、24の国籍…。この世界の縮図のような多文化学級で、フランスで新生活を始めたばかりの十代の彼らが見せてくれる無邪気さ、熱意、そして悩み。果たして宗教の違いや国籍の違いを乗り越えて友情を育むことは出来るのだろうか。そんな先入観をいい意味で裏切り、私たちに未来への希望を見せてくれる作品。
制作年:2013年製作国:フランス言語:フランス語尺:89分上映フォーマット:Blu-ray、HD-CAM、DV-CAM、DVD配給:ユナイテッドピープル原題: La Cour de Babel
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フランス映画祭2014
6月27日(金)〜30日(月)有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇(東京会場)にて開催
公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2014/
Twitter:@UnifranceTokyo/Facebook:http://www.facebook.com/unifrance.tokyo/
主催:ユニフランス・フィルムズ
共催:朝日新聞社
後援:フランス文化・コミュニケーション省・CNC/在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協賛:ラコステ/バリラックス/ELLE JAPON/LVT
運営:ユニフランス・フィルムズ/東京フィルメックス
(Report:金子春乃)